♯158「空(そら)で口ずさむ企業理念」

今週は!

この年度末、コロナ禍で進行していた大手企業2社の企業理念の言語化が、ほぼ同じタイミングで完了した。2社のアプローチが対照的で興味深かった。

1社は、「ビジョン」「ミッション」「バリュー」「スピリッツ」で構成される、いわゆるブランドプラットフォームに添ってまとめあげていくスタイル。もう1社は、シンプルに1つの使命だけを掲げるスタイル。(個人的にこのまとめ方をGoogleスタイルと呼んでいる)

前者のアプローチはこれまでも数多く経験してきたが、後者のスタイルは初めてでとても新鮮だった。企業理念として掲げるのが使命だけなので、クライアントが物足りなさ(こんなにお金を払っているのにたったこれだけ?)を感じるのではないかと危惧したが、プロセスを丁寧に進めることで、それも解決できることがわかった。同社では、今後ステップ2として、Googleの「10の事実」に相当する価値観や行動指針を定めていく。

Googleスタイルの良さは、プラットフォームスタイルに比較して情報量が圧倒的に少ないこと。つまり、覚えやすいことだ。せっかく時間と人数をかけて定めた企業理念も記憶に残らなければ意味がない。ましてや浸透など夢のまた夢である。余談になるが、従業員の何%が自社の企業理念を空(そら)で言えるか、「企業理念浸透度調査」なるものを作成してみたらどうだろう。

もちろん国際基準(じつはそんなものはないのであるが)や横並びが好きな企業もあるので、どちらのスタイルが良いかを一概に決めつけることはできないが、日本の企業がなぜGoogleスタイルをもっと採用しないのか、不思議でならない。

少なくとも中小企業が理念を作成する場合は、Googleスタイルで十分だろうと思う。中小企業は、こういうところこそ中途半端な国内大手企業ではなく、超巨大企業に学ぶべきなのだ。

Googleのフィロソフィー:https://about.google/intl/ALL_jp/
Googleの10の事実:https://www.google.com/about/philosophy.html?hl=ja

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