「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。
第42回「今ある呪縛をリセットする」
前回、第41回は「必要悪の終焉」
最近、フリーランスの人の相談によくのるんですけど。みなさん「どうやったら稼げるんですか?」って聞いてきます。
稼げなくて悩んでると。
はい。「時給仕事と下請けはやめたほうがいい」ってアドバイスするんですけど。「じゃあ、どうやって稼ぐんだ?」って。
それ以外で稼いだことがないんでしょうね。だからイメージできない。
はい。まさにそんな感じです。
安田さんは時給を仕事したことあるんですか?
学生時代に喫茶店でバイトしたり、酒屋でビール運びやったりしました。あとは会社員を2年間やりました。
その時から自分で稼げると思ってましたか?
いや、思ってなかったです。あの環境にいたら、自分でお金を稼げるイメージなんて全く湧かないですね。
そうですよね。
今から考えたら不思議ですけどね。「なんで10万や15万程度、自分で稼がなかったんだろう」って。泉さんも時給仕事は経験あるんでしょ?
ありますけど。やっぱり一貫してやってないからでしょうね。一部だけ切り取ってやってるから。
だから自分で稼げるようにならないと?
自分で仕事のコンセプトをつくって、人脈もつくって、自分で仕事を取って、ということをやってない。
まあそうですよね。言われたことをやってるだけですからね。
一部だけしかやらない。だから時給仕事や月給仕事をやり続けても、自分で稼げる力は高まらないと思います。
「自分で商品つくって、自分で集客もやったら、簡単に稼げるのに」っていうのは、今でこそわかるんですけど。喫茶店でバイトしてるときには想像すらしなかったです。
それは私も同じですよ。
「月収100万円になる」みたいな目標があれば、「どうやったら100万円稼げるんだろう」って考えるんでしょうけどね。
普通の学生はそんなこと考えないですもんね。
最初から「そんなの無理だ」って思ってますよね。というか無理とすら考えない。
一種の洗脳ですよね。
確かに。二十歳になる頃には「どこかでバイトしてお金稼ごう」っていう感覚しかなかったです。
私もまったく同じでしたよ。自分で会社つくるまではそんな感じでした。
そうですよね。
はい。地道に「給料をちょっとずつ上げていくしか方法はない」と思ってました。
20万の給料が、頑張って25万とかになるイメージは湧くんですよ。でも100万とかって天文学的な数字に思える。いまの自分だったら「10億円」みたいな感覚。
分かります。感覚的に繋がってないというか。
「20〜30万なんて何やっても稼げるよ」って今は言うんですけど、繋がってない人からしたらものすごく遠いんでしょうね。
繋がるべき思考が、どこかに閉じ込められてるんでしょうね。
どうやったら、そこから出してあげられるんですか。「集客がどうこう」とか教えても頭に入らない。
それは入らないでしょうね。学校のテストって100点以上は点数取れないじゃないですか。
はい。満点が100ですから。
その枠の中でしか思考できないんですよ。70点を80点にするのはイメージ湧くけど、120点って言われた瞬間に「そんなの無理ですやん」ってなる。
不可能だと。
というか思考停止するんでしょうね。
何て言ってあげたら思考が動き出すんですか?
アドバイスではなく思考のトレーニングが必要だと思います。前提を一度、全部破壊するトレーニング。
前提を破壊するトレーニング?
「100点満点」というのは先生がつくった前提なので。
どうやって破壊するんですか?
「なんでこのテストがあると思う?」「そもそもテストって必要なの?」「なんで子どもたちは学校に行くの?」という大前提を全部疑う。
まず前提となっていることに疑問を持つと。
「それ、そもそも何やねん」ということを1回解きほぐしてからじゃないと、そういう思考って始まらないような気がするんですよ。
確かにそうかもしれないです。稼げないフリーランスって、会社を辞めても根本的な思考が変わってない人が多いですから。
どんな所が?
「会社員だったら、どんなに給料が安くてもゼロはない。でもフリーランスになったら0円ということもある。会社員がいかにありがたかったか」みたいな。
なるほど。「何かをやったら必ずお金がもらえるはずだ」という感覚ですね。
そうなんですよ。お金に縛られすぎてるというか。
「商売とはお金のやり取りだ」って、思ってしまってるんじゃないですか。
会社員の場合は完全にそうですもんね。自分の時間と給料との交換。
フリーランスで苦しんでる人たちって、ホントお金に直結することしかやらないんですよ。
分かります。
たとえば私が「この前こういうことやったんやけど」って言うと「それって泉さんいくらになったん?」って。
(笑)
「いや、べつにお金なかったで」って言ったら、「何のためにやってるの?」ってめちゃ聞かれるんですよ。
聞かれます、聞かれます(笑)
私にとっては「何のために」っていうのは、仕事が面白くなって広がっていくためにやっているだけであって、何の質問かがよくわからないんですよね。
「お金にならないのに、よくやってるね」みたいな感覚だと思いますよ。
基本的に8割ぐらいは種まきじゃないですか。8割種まきやって、最後2割刈り取りみたいな感じ。
その感覚よく分かります。
みんな、全部刈り取りしようと思ってるので、おかしくなるんじゃないですか。
30万の仕事って、30万の木があって、種植えて育ててる間は1円にもならないですけど、木になって実がなったらいきなり0が30万になるわけですよ。
その感覚が分からないんでしょうね。学校の勉強の弊害だと思いますけど。
学校教育に繋がってますか?
そこに組み込まれてる感覚と同じ。テストの点数が上がらないことに関しては「なんでそんな本読んでんの?おまえ」みたいな。
確かにそうですね。昆虫図鑑見てたら「勉強しろ」って怒られますもんね。「いや、勉強してんねんけど」みたいな。
すぐ、みんな「マネタイズ」とかって言って、そういう短期的視点でものを考えすぎるんで。
ですよね。
そういう思考パターンにはまってるんですよ。
多くの人にとって「お金を稼ぐ」のは、テストで点取ることの延長なんですかね。
かなり近い感覚だと思います。
「これやったら何円もらえる」「これ覚えたら何点取れる」みたいな。
はい。そのルールを1回捨てない限りは、いまの呪縛から逃れられないです。