変と不変の取説 第94回「手詰まりなのは誰?」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第94回「手詰まりなのは誰?」

前回、第93回は「誰が殺してしまったのか」

安田

トランプさんが「韓国から米軍を引きあげる」と言ってます。「お金払ってくれないんだったら守りません」みたいな。

はい(笑)。言ってますね。

安田

日本に対してもそんな感じですよね。

「出て行く」とまではいってませんけど。「もっと金を払え」と言ってますね。

安田

韓国人は強気ですよね。「だったら出ていけ」って人も大勢いて。日本人の場合は「いやいや、出ていかれたら困る」って人が大半でしょう。

そんな感じですね。

安田

じっさい米軍が撤退する日って来ると思いますか?

いや、来ないんじゃないですか。

安田

未来永劫?

もし撤退するんだったら、「日本は核を持つ」って話になるので。核を持ってもらうとアメリカは困るので。

安田

米軍が撤退したら日本は核を持つしかないんですか?

核攻撃から守るものがないので。自分たちも核を持つことになるでしょうね、必然的に。

安田

それでいったら、米軍に守られてない国はぜんぶ「核を持たないとだめ」ってことになりますけど。

そうですよ。米軍とは限りませんけど。

安田

核を持ってる国の傘下に入るか、自分で核を持つしかないってことですか?

そうです。自前で核を持つか、誰か守ってもらう人を探しにいくか。

安田

核を持ってないと核爆弾を撃ち込まれるからですか?

いや、核爆弾は撃ち込んでこないんですけど。交渉力がガタ落ちします。

安田

ロシアもクリミア半島を分捕っちゃいましたもんね。

そういうことも起こります。

安田

じゃあ仮に米軍が撤退したら、中国が沖縄を取りにくるとか。ロシアが北海道を取りにくるとか。そういう可能性もあるんですか?

国際世論が黙ってないので、多分そこまではしないと思います。ただ、国どうしの交渉や外交レベルでいくと、かなり立場が弱くなるのは確か。

安田

立場が弱くなったらどうなるんですか?

立場が弱くなると、交渉するときに有利な条件をぜんぶ持っていかれるってことです。

安田

たとえばどんな条件ですか?

足元を見られて「関税めっちゃ上げるで」とか。

安田

「日本は関税を低くしろ。うちは上げるぞ」みたいな。

そうそう。

安田

それを突っぱねたところで、攻め込んできたりはしないでしょ?

たぶんしないと思います。

安田

そんなことしたら、世界の世論が大変なことになるわけで。

中国は「ジワジワ作戦」を考えてると思うんですよ。

安田

じわじわ作戦?

まず無人島から攻めていく。

安田

なるほど。今でも「尖閣諸島から日本は出ていけ」って言ってますもんね。

ちょこちょこ取っていって、日本人のマインドコントロールを始める。

安田

マインドコントロールですか。

はい。日本人の中に「アメリカの属国になってたけど、こんどは中国の属国になったほうが得やで」と言う人が出てくる。「台湾や香港みたいになったほうがええで」みたいな。

安田

ちなみにフランスやイギリスも核を持ってるじゃないですか。

はい。

安田

フランスやイギリスの傘では守ってもらえないんでしょうか?

NATOに入るとか。

安田

入れてくれないですかね(笑)。もうアメリカの下は嫌なんですけど。

NATOの方がいいと。

安田

ヨーロッパのほうが好きですね。

でも、それはありじゃないですか。

安田

ヨーロッパから見たら、日本は遠すぎて守る気がしないんですかね。

昔やった三国同盟みたいに組むってのはありですね。そのかわり「日本も核を持ってくれよ」って言われるかもしれませんけど。

安田

なるほど。まあ普通に考えれば、アメリカから離れたら中国かロシアですよね。どこかの属国になるか、もしくは自分で核持つか。これしか選択肢はないと。

そうです。アメリカがいなくなると、やっぱりそうなってしまう。

安田

でも結局はアメリカの属国じゃないですか。

そうですね。

安田

アメリカの武器は買わされるわ、肉や車も買わされるわ。「言われたことは何でも聞かなきゃいけない」って感じ。

それが現実ですね。安倍さんはトランプと仲がいいですから。

安田

あれだけ何でも言うこと聞けば「そりゃ可愛がられるだろ」って感じですよ。

日本は、そういう意味では「自主自立ができない国」になってしまったんです。

安田

だったらもう割り切って「アメリカなのか、中国なのか、ロシアなのか」で有利な条件を引き出していけばいい。アメリカ一辺倒じゃなく。

そうですね。

安田

中国なんかとくっついたら「えらいことになる」ってみんな言いますけど。歴史的にはずっと中国の傘下で生きてきたわけだし。やっぱりアメリカがいいんですかね。

アメリカに戦争で負けたので。「占領された」ってのはでかいですよ。

安田

もう70年以上も前の話ですよ。あっという間に100年経っちゃいますよ(笑)

そうですね(笑)

安田

「いつまで言ってんの?」って気がするんですけど。

ただそうなると、明治時代のように国づくりを一から自分たちでやらなくちゃいけない。政治体制から憲法から、土台のOSからつくっていく必要があります。

安田

今の改良じゃダメだと。

今のシステムをバージョンアップしようと思ったら、みなさんグジャグジャ言い始めるので。1回破壊してつくるしかない。

安田

そんなことやってるうちに、どこかに分捕られてしまいそう。

明治維新と同じじゃないですか。中で内乱してたら外からやられちゃうので、大政奉還という秘策を考え出すわけです。

安田

あの頃みたいに国を動かす人間がいるのか?ってことになります。実際どうなんですか。「アメリカの傘下にいたら安心」って言われてますけど。

アメリカもだんだん余裕がなくなってますから。

安田

そのうちアメリカ本国の軍事費まで払わされるんじゃないかっていう。もう経済的な奴隷みたいなもんですよ、これ。

まあ、ヤクザの傘下の組ですよね。

安田

だったら米軍が撤退して、またどこかの傘下に入ったとしても変わらないんじゃないの?って気もします。

下部組織にいる限りは変わらないですね。下請けなので。

安田

「アメリカやめて中国に鞍替えしよう」って政治家はいないんですか?

田中角栄がそっち側にいったわけです。それでアメリカにロッキードで潰された。

安田

なるほど。アメリカが許してくれないと。

はい。外交も完全に手詰まりですね。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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