「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。
第25回 チケット制度が成功するカギは、価値を伝えるコミュニケーション力
うーん、どうなんでしょうね。「カラーチケット」のように、単一メニューのチケット制を取り入れている美容室さんは多いですよ。定期的に白髪染めをされる方にとってはお得感がありますし。
確かに、白髪染めだと月に1回くらい美容室に行きますもんね。
そうなんです。そしてチケットを使い切るまでは基本的にずっと通ってくださる。ビジネス的に見ても、最初の段階でまとまった金額をお支払いいただくことになるので、一見するとキャッシュフローがよく見えますし。
ああ、なるほど。最初に全額分のお金をもらっちゃうから、ドンッと売上計上されると。
そういうことです。もっともこれは、裏を返せばチケットを使い終えるまで新たなお支払いはない、ということでもあります。そのあたりはしっかり考えて運用する必要がありますけどね。
確かにそうですね。しかも使用期間が長いから、余計に気をつけないと。コーヒーチケットとかお風呂屋さんの回数券なら毎日使ってもらえるかもしれないけど、毎日白髪染めはしませんから(笑)。
そうそう(笑)。だから僕は、1度のご来店で複数枚を使っていただけるような仕組みを作ったんです。
ああ、そうか! 岩上さんのところのチケットは、単一メニュー用じゃないですもんね。いろんなメニューに対応させて、なるべく早くチケットを使い切ってもらえるようになっていると。……でもむしろ不思議です。他の美容室も岩上さんのお店のような仕組みにすればいいのに、なぜしないんです?
そうですねぇ。ズバリ言ってしまうと、「価格設定がチケット制にマッチしていないから」です。
ほう、と言いますと?
例えばウチのチケットは12枚綴で6万円なので、1枚あたり5000円になります。例えば6000円のカットをチケット1枚にすると1000円安くなる。これは許容範囲だと思うんです。でも9000円のメニューをチケット一枚にしたらどうなります?
お店側が4000円も損しちゃいますね。
そうなんです。かといって、じゃあチケット2枚分にしよう、となると?
今度はお客さんが1000円損しちゃう。せっかくチケットを買ったのに。
そういうことなんです。ここのバランスを取らなきゃいけないんですが、先に値段が決まっていると限度がある。つまりある意味、「チケット制度ありき」でメニューの値段を決めなくてはいけないんですよ。でも普通の美容室ってそもそもそういう発想がありませんから。
ははぁ、なるほどなぁ。逆に言えば、そのあたりのコントロールをするために単一メニュー用のチケットにしているわけですね。
そうなんです。ウチはそのあたりをしっかり考えて値段設定も行っています。その上で「なぜこの金額なのか」「この技術の価値は何なのか」をお客様にしっかりお伝えする。金額とメニューの価値、両方に納得感があれば、お客様は気持ちよくチケットを消費してくれるんです。
ははぁ…なるほど。でもそれは、お客さんとしっかりコミュニケーションを取れる岩上さんだからこそできること、という感じもするんです。やはりすべての根っこにあるのは「お客さんとのコミュニケーション」で、美容師さんたちはまずこれを身につけるべきなんでしょうね。
そうですねぇ。多くの人が「コミュニケーション」を「雑談」だと捉えているのか、そこから「提案」まで転換できないんですよ。それこそ商品説明をし始めた瞬間に声のトーンまで変わっちゃって「営業姿勢」になってしまう(笑)。
「雑談」か「営業トーク」しかできないんですね(笑)。
そうそう(笑)。もっとも、声のトーンがどうのというより、「お客様の価値をどうやって高めて、よりよい未来をどう実現するのか」を真剣に考えることが重要だと思いますけどね。
なるほどなぁ。勉強になります。岩上さんの提案の技術やコミュニケーション方法を教わりたいという方は、こちらにお問い合わせください!
対談している二人
岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表
美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。