第26回 コミュニケーションの真髄とは?

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

第26回 コミュニケーションの真髄とは?

安田

岩上さんは美容師の方向けに『提案技術アカデミー』を開催されていますよね。これは「ハウオリ」を導入された美容院の経営相談に乗っている中で思いついたものだとか。


岩上

そうなんです。ハウオリを導入したものの、なかなか思うように売上に繋げられない美容院さんがいまして。なぜだろうと話を聞いてみたところ、「ああ、お客様への提案力が欠けているんだな」と。そういうケースが複数あったので、じゃあそこを教えてあげるサービスを始めようかなと思って。

安田

ははぁ、なるほど。この対談でも多々出てきている「お客さんとのコミュニケーション方法」を伝授するということですね。


岩上

仰るとおりです。もっとも雑談で終わっては意味がないので、「ハウオリがお客様のお悩みをどう解消してくれるか」をきちんとアピールするためのコミュニケーション術を教えています。

安田

ふむふむ。実際、岩上さんのサロンで「ハウオリ」はものすごく支持されてるわけで、技術自体が素晴らしいのは間違いない。ただそこに「提案力」や「コミュニケーション力」が加わらないと、なかなか思うようには売れないってことなんですね。


岩上

そうなんですが、いわゆる「売るための話術」という感覚ではないんです。そもそも僕がコミュニケーションを重視しているのって、お客様に「意識変化」を起こしていただきたいからで。お客様ご自身の「美容室に来る目的」を根底から変化させていきたいとでも言いますか…。

安田

ほう、もう少し具体的に教えていただけますか?


岩上

そうですね。例えば、安田さんの中で美容室とエステってどちらが高いイメージですか?

安田

エステの方がたくさんお金を使いそうなイメージがありますね。


岩上

ですよね。でも美容室もエステも、利用する目的は「キレイになりたい」という気持ちで、基本的には同じなんです。それなのになぜ、美容室よりもエステの方がお金をたくさん使うイメージなんでしょう。

安田

そう言われてみると、確かにちょっと不思議です。


岩上

そうでしょう? 僕なりに出した結論は、美容室を利用されるお客様には「困っていることを解消したい」という意識があるから、というものなんです。

安田

あぁ、確かに美容室には、「髪の毛が伸びてきて鬱陶しい」とか「白髪が目立ってきたから染めたい」といった、「悩みを解消」したくて行きますね。


岩上

そうそう。一方のエステはというと、「今よりもっとキレイになりたい」という気持ちが強い。キレイになりたいという目的は同じなんだけど、アプローチの方向がちょっと違うんです。

安田

マイナスを解消するために行くのが美容室なら、プラスを求めて行くのがエステというわけですね。


岩上

そういうことです。だから僕は、美容室もエステのような感覚で利用してもらいたいと考えた。つまり、日常の悩みを解決して終わり、じゃなくて、もっとキレイになるために行く場所にしたかったわけです。

安田

ははぁ、「美容室に来る目的を根底から変化させていきたい」というのはそういうことなんですね。


岩上

ええ。ハウオリという技術はもちろん、それを紹介するためのコミュニケーションも、大元はそこに目的があるわけです。

安田

なるほどなるほど。そういえば私はよく「必需品は安くなる」という話をするんです。例えばお昼ご飯は「必需品」だからなるべく安く、ワンコインで済ませようとする。でも同じ人がカフェでは美味しいコーヒーやらケーキやらに結構お金を使ったりするわけです。つまり「お昼ご飯」と「ケーキ」は別の財布になっている。


岩上

あぁ、その例え話、すごく腑に落ちます! つまり単に「髪を切りたい」というニーズに応えているうちは、「美容室=必需品の財布」でしかないんですよ。

安田

うんうん。そして「キレイでい続けたい」というニーズを引き出すことで、美容室で使う財布も「エステと同じ財布」にしようと。それが岩上さんが目指すところなわけですね。


岩上

そういうことです。さらに面白いことに、そこの意識変化が起きると、美容室の滞在時間も延びていくんですよ。例えばカット・カラーだけが目的のお客様は、最初から「2時間で終わらせたい」という意識でご来店されるわけです。

安田

ははぁ…やってもらいたいことは決まっているんだから、さっさと終わらせてね、というわけですね(笑)。


岩上

そうそう(笑)。ところが僕のお客様の多くは「今日はどんな髪型にしてもらおうかな」「どうやってキレイにしてもらおうかな」という気持ちでご来店いただけるので、そもそも来店した時点で「長く滞在する」意識ができているんです。

安田

なるほどなぁ。マハロコに来られるお客さんたちは、そもそも来店する時から感覚が違うと。


岩上

そうなんです。要するにエステなんですよ。カフェタイム同様、エステに行くならゆっくりじっくり楽しみたいじゃないですか。

安田

そうですね。むしろ「えっ、もう終わり?」となったら印象が悪い(笑)。


岩上

そうそう(笑)。でも現実的には、「お客様が困っていることを解消する」という感覚で仕事にあたっている美容師がほとんどなんです。僕のところに経営相談に来られる方も皆そうで。

安田

お客さんに求められていることだけをやっているから、ずっと「エステ感覚」にはならない。だから売上も上がらないし、リピーターも増えないわけですね。


岩上

仰るとおりです。お客様の顕在化されたニーズは「カットしたい」なのかもしれないけれど、コミュニケーションを取っていく中で、潜在的にあるお悩みやご希望を引き出して、「それならこういうメニューはいかがですか?」とご提案するべきなんです。

安田

なるほどなるほど。『提案技術アカデミー』ではまさにそのあたりのコミュニケーション術を教えてもらえるわけですね! 興味のある美容師さんはぜひお問い合わせしてみてください。


対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

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美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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