第27回 お客様に「驚き」を与えられるコミュニケーション方法

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

第27回 お客様に「驚き」を与えられるコミュニケーション方法

安田

私はよくフリーランスのコピーライターさんとかデザイナーさんから「なかなかギャラが上がらない」という相談を受けるんです。その理由って、まさに前回の対談で話したことと似ていて、「顕在化されたニーズに応えているだけだから」なんですよ。


岩上

そうでしょうね。言った通りやってくれるだけなら他の人でもいいわけで。そうなったら「価格競争」で勝つしかない。結果ギャラは高まるどころか下がっていくわけで。悪循環ですよ。

安田

ええ。例えばライターさんなら「私がこういうコピーを書いたら、御社にはこういうメリットがありますよ」という具体的な提案ができれば、「ぜひお願いしたい」となる。そういう立場になれば、ギャラだって上げられそうじゃないですか。


岩上

その通りだと思います。つまり「お客様自身が見つけきれていないお悩みを見つけ、その解決策を提案できるか」がカギですよね。実はサロンに来るお客様も、実際は別のところに課題があるのに、「自分の悩みはこれだ」と思い込んでいらっしゃる方が多くて。

安田

そうなんですか? 自分の髪の悩みは、長年付き合ってきた自分自身が一番よくわかっている気もしますけど(笑)。


岩上

ネットが発達したことで、その感覚はさらに強まりましたよね。言ってみれば皆さん、ネットで調べた「にわか知識」で判断されているんです。しかもたちの悪いことに、多くの美容師がその「にわか知識」に翻弄されている。

安田

素人がネットから得た「もっともらしい意見」に、プロが振り回されているということですか?


岩上

振り回される、という被害者的なことじゃなく、迎合しちゃうんですよ。お客様の間違った知識を正す知識もないというか。ちょっとウンチクがあるお客様に突っ込まれたら、「わかりましたわかりました、言う通りにします」と受け入れちゃう(笑)。

安田

なるほど(笑)。売れない営業マンがよくやるパターンですね。知っているふりをして適当に相槌を打っちゃうやつ(笑)。


岩上

そうそう(笑)。せっかく知識を持ったお客様がいらっしゃったんだから、ひるむんじゃなくて、知識がさらに増えるような情報を提供してあげるべきなんですよね。あるいは情報が間違っていたら、それをしっかり正してあげる。キレイになる知識が増えたら、お客様だって嬉しいじゃないですか。

安田

本当ですね。ちなみに美容師さんって、普段からそういう知識のインプットってされているんですか?


岩上

技術練習はしているでしょうし、新しい薬剤なんかの知識はメーカーさんの研修で学んでいると思います。ただ「お客様と向き合うためのコミュニケーション力」といったことを学ぶ場は、僕の知っている限りではないですね。

安田

つまり、お客さんをキレイにするための「手段」は持っているのに、「この手段を使ってお客さんをキレイにできます」と伝えるコミュニケーション力が足りていないと。


岩上

仰るとおりです。そもそも皆さん「施術時間」にこだわるあまり、コミュニケーションを取る時間がほぼゼロ、なんてことがザラですから。

安田

え、そうなんですか!


岩上

ええ。お客様の滞在時間が60分だとして、シャンプーに10分、最後の仕上げに10分、残り40分はカット…という風に考える美容師さんが本当に多いので。

安田

確かにその時間配分だと、お客さんとコミュニケーション取る時間は取れそうにないですね。岩上さんの場合はどうされているんですか?


岩上

僕は施術の前後に「プレカウンセリング」と「アフターカウンセリング」という「お客様とコミュニケーションを取る時間」を、あらかじめ確保しています。新規のお客様のプレカウンセリングだと、30〜40分くらいお喋りだけしてるケースもありますよ(笑)。

安田

すごい(笑)。「髪を切るまでにそんなに時間かけないでよ!」なんて、怒られちゃったりしないんですか?(笑)


岩上

もちろんどうでもいい雑談をダラダラしているわけじゃないですよ?(笑) まずは「どんな髪型にしたいか決まっているのか」、それとも「お悩みを解消したいのか」をお聞きして…。

安田

なるほど。お客さんが何を求めているのかヒアリングすることから始まるわけですね。


岩上

そうですそうです。そこで「髪のこんな悩みを解消したいんです」とか「もっと似合う髪型を探したいんです」と返事が返ってくるので、そこをさらに深堀りしていく。

安田

ふーむ。ちなみに「やりたい髪型がハッキリ決まっている」というお客さんの場合はどうするんですか? もう決まっているんだから、特に聞き出す内容もないと思うんですが…。


岩上

「なぜその髪型にしたいのか」「他にはどんな髪型が候補に上がったのか」「前の美容室ではなぜこの髪型にしてもらわなかったのか」といったことをお聞きするようにしています。

安田

ははぁ…お客さんの「この髪型にしたい」という気持ちに至るまでの経緯を掘り下げていくわけですか。その返答から「潜在的な悩み」を引き出していくと。


岩上

仰るとおりです。その上で、「僕はお客様に本当に似合う髪型を作りたいんです。だからできることなら3回くらい続けて通っていただけると嬉しいです」ってお伝えするようにしています。

安田

いやぁ、素晴らしい提案力ですね。ここまでお話を聞いていると、普通の美容師さんがやっているのは「販売」なんだという気がしてきました。欲しいものが決まっているお客さんに対して「何円のお支払いです」と言うやりとりをするだけ。ファストフードの店員さんと一緒なんですよ。


岩上

あぁ、わかりやすい(笑)。

安田

でも岩上さんはそこを「営業」に切り替えている。お客さんは買うかどうかはまだ決めていないけど、コミュニケーションを取る中で「欲しくなってきたから、買います」となるわけです。


岩上

うんうん、そうですね。実際、マハロコにいらっしゃるお客様って、僕とのやり取りを楽しみにしてくださっている方が多いんだろうなというのは感じていて。僕の提案に驚きとか喜びを感じていただけるから、「次もまた行こう」と思っていただけるのかなと。

安田

なるほどなぁ。岩上さんのコミュニケーションの素晴らしいところは、お客さん自身が気づいていない潜在意識まで掘り起こし、それを解消するための提案をしてくれるところなんでしょうね。だからお客さんは常に「期待以上の結果」を得られて満足できると。いやぁ、素晴らしい!


対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

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美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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