第3回 オーナーと大喧嘩した理由

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

第3回 オーナーと大喧嘩した理由

安田

今回も前回に引き続き、岩上さんが吉祥寺の美容室で店長をしていた頃の話をお伺いしたいと思います。「もうすぐクビになる店長」の話ですけど(笑)。


岩上

とりあえず前回は、まだ順調だった時代の話でしたね(笑)。

安田

そうでした。新しいメニューを提案したりして、少しずつ客数や単価をアップさせていったんでしたね。ちなみに集客はどうされていたんです? 当時だとチラシとかですか?


岩上

いや、井の頭公園の入口っていう好立地にあったので、チラシなどを打たなくてもある程度お客さんは来てくれてましたね。ともあれ最初の頃は既存顧客からの紹介が多かったですけど。

安田

へぇ。ちなみに美容室と言っても様々ですが、メインの顧客層はどのあたりだったんですか?


岩上

最初は高齢の女性が多かったですね。前回も話していた「ベル・ジュバンス」というパーマ液目当てのご婦人たちで。

安田

なるほど。でもその方々が紹介してくれるのって、やっぱりパーマ目当てのご婦人なんじゃないですか?


岩上

そうですね。なので最初はご高齢のお客さんばかりが増えていきました(笑)。でもコミュニケーションに力を入れ始めたことで、ご婦人の娘さんやお孫さん、そのご友人などが来てくれるようになって。

安田

ああ、なるほど、おもしろい。単に技術を売っているだけだと、同じスタイルをしたい同年代の方しか集まらない。でもコミュニケーション自体が価値の一つになると、もっと広いターゲットの方が集まるようになると。


岩上

まさに仰るとおりです。そんな感じでどんどんお客さんの数も増え、幅も広がり、僕が入って1年後には月200万円の黒字が出るお店になりました。

安田

ははぁ、すごいですね。ちなみにスタッフも増やしたんですか?


岩上

ええ、増やしました。ただあまり広い店ではなかったので、どんどん手狭になっていって。そんな折、近所のビルオーナーから「ウチの物件で美容室をやらないか」と誘われて。それでもう1店舗出すことになったんです。

安田

ということは、もともとのお店では別の店長を立てたんですか?


岩上

あ、いえ、2店舗とも僕が店長をやりましたね。距離的にもそんなに遠くなかったですし。

安田

すごいなぁ。でもここまでの話だと、クビになる要因は皆無なんですけど(笑)。むしろ私がオーナーなら絶対に手元に置いておきたい店長ですよ。


岩上

まぁ、僕自身はやりがいを感じながら働かせてもらってたんですけど。ただその2店舗目を出した頃ですかね、オーナーの娘さんが店舗経営に関わるようになって。

安田

おっと……つまり、その娘さんと折り合いが悪かったんですね。いよいよ事件が起こりそうな雰囲気になってきました(笑)。


岩上

事件(笑)。まぁでも、結果から言うと確かに、オーナー及び娘さんと僕の価値観が合わなかったんですよね。それでいろいろあって、僕が信頼している部下が彼らに難癖をつけられて、クビにされちゃうようなことが続いて。

安田

なんと……それは酷いですね。オーナーやその娘さんは、優秀な岩上さんに嫉妬したのかもしれない。ちなみにその頃の売上はどのくらいだったんですか?


岩上

入社4年目くらいの頃で、月に600万円はありましたね。

安田

すごい! 私がオーナーだったら、そんな嫌がらせをするどころか、VIP扱いしますけどね(笑)。あ、そういえばその時の岩上さんの給料はどのくらいだったんですか? さすがに18万円のままじゃないですよね。


岩上

18万円ではないですけど、それでも30万円も貰ってなかったですね(笑)。

安田

ええ!? 月600万円も売り上げて、30万円も貰っていないんですか? さすがにどうかと思いますよ。


岩上

そうですねぇ、当時は相当搾取されていましたね(笑)。

安田

なるほど。そういうことも含め、岩上さんもオーナーさん側に不満を募らせていった。


岩上

仰るとおりです。僕自身に対する嫌がらせは我慢できても、スタッフの人格を否定することや、難癖をつけてクビにするといったことは許せなくて。

安田

そりゃそうですよ。普通のまともな企業でそんなことが通るわけもない。


岩上

まぁでも、実はこの手の話は業界的には珍しくなかったんですよね。お店を築いたオーナーが稼ぎ頭で、その他のスタッフはやがて独立するのが当たり前の世界なんで。

安田

なるほど。それで岩上さんもついに堪忍袋の尾が切れて、辞めることになったと。


岩上

まぁそういうことですね(笑)。ともあれ一番の後押しになったのは、妻の言葉でした。「あなたは大事にされていない。もっと大事にしてもらえるところに行こう」って言ってくれて。

安田

ははぁ……さすがのお言葉ですね。でも実際、別のところにいった方がハッピーに働けて、かつ給料もよくなりそうです(笑)。


岩上

そうですね(笑)。妻があの時「辞めていいよ」って言ってくれなかったら、今でも搾取され続けていたかもしれない(笑)。

安田

いい奥さんですね。ちなみに岩上さんがついに辞める決心をしたとき、オーナーさんはどんな反応だったんですか? 結局惜しくなって「やっぱりウチにいてくれ」ってなりませんでした?


岩上

いやいや、最後に「地獄へ落ちろ!」って言われてクビになりましたから(笑)

安田

恐ろしいですね(笑)。本当に筋が通ってない。月600万円も稼ぐ優秀な店長に掛ける言葉じゃないですよ。


対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

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美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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