第164回「デジタル・ネイティブ世代が日本を救う」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第163回「その時がワタミの命取り」

 第164回「デジタル・ネイティブ世代が日本を救う」 


安田

石塚さん、色んなところで言ってますよね。「日本の若者は素晴らしい。未来は明るい」みたいなことを。

石塚

はい。若者にちゃんと道を譲っていけば、日本の未来は明るいです。

安田

そうおっしゃいますけど実感がなくて。どこを見てそんなふうに思うんですか?

石塚

実感が薄いのはメディアが取り上げていないからだと思います。

安田

ほう。メディアは取り上げないけど、若者はすごいと。

石塚

まず高校を卒業して、大学行くぐらいの年齢で起業する人が、ものすごく増えました。

安田

そうなんですか。

石塚

すごく増えてます。

安田

へぇ~。

石塚

安田さんの息子さんも、あと10年しないうちに、10歳ぐらいでたぶん起業すると思う。

安田

え!10歳で事業を興すってことですか?

石塚

そうです。

安田

ちょっと早過ぎませんか(笑)でもなぜ起業する人が増えてるんですか?

石塚

昔と違って、起業がもっとポピュラーというか、日常的っていうか。

安田

ポピュラーですか。

石塚

だってお金もそんなにかからないし。YouTubeを中心とした、ありとあらゆる情報が見れるじゃないですか。

安田

確かに。

石塚

デジタル・ネイティブの彼らって、つかんでる情報が量も質も違うんですよ。

安田

いろんな情報が溢れてますからね。

石塚

相対的にレベルが高いと感じます。

安田

起業する若者ってどの程度増えてるんですか。10人に1人は起業するとか?

石塚

いわゆる新卒採用における上位レベル。その5人に1人はビジネスをやってますね。

安田

そんなに。

石塚

それぐらいの感覚です。

安田

上位校の優秀層はリクナビ、マイナビに登録しないという話を聞いたんですけど。合説にも行かないとか。実際そうなんですか?

石塚

そういう傾向はありますね。ただ起業する人も2パターンありまして。学生時代に起業してそのまま始めてしまう人と、1〜2年大手企業を経験してから起業する人。

安田

後者は普通に就職活動もする?

石塚

はい。ただし3年もしない内に自分で始めてしまいます。土日に仲間が集まって、将来の起業ネタを持ち寄って、2年もしたら「よし!やろう!」みたいな。

安田

すごいですね。

石塚

資金の調達もすごく早いです。

安田

どこから資金を調達してるんですか。

石塚

ベンチャーキャピタルと、あとはエンジェル投資家もすごく増えました。

安田

へぇ~。昔はエンジェル投資家なんていなかったですけど。

石塚

安田さんだってリーマンがなかったら、今ごろはインキュベータになって投資してると思います。

安田

どうでしょう(笑)私はさておき、お金を持っている経営者がどんどん出資してるってことですか。

石塚

ベンチャー企業で大成功して、キャッシュを何百億と持ってるような人がパッと出します。

安田

ということは上場会社の経営者ですね。数百億動かせるってなると。

石塚

個人資産で少なくとも3〜40億以上持ってる人。この数年でもベンチャー企業で成功した方がいっぱいいるじゃないですか。ああいう経営者は個人でエンジェルです。

安田

いっぱいいるんですか。

石塚

いっぱいいますね。

安田

それでも起業する若者全員に資金が集まるとは思えないですけど。

石塚

もちろん全員が資金調達までいけるわけじゃない。ただ少なくとも事業を軌道に乗せて、いずれ上場を目指したいという人には、億単位の資金調達をする場が増えてる。

安田

そうなんですね。

石塚

毎週、毎週、どこかで、いわゆるピッチといわれる、企業の出資を集める説明会みたいなのが開催されてます。

安田

起業する人には「この国をなんとかしなきゃ」みたいな気持ちもあるんですか。

石塚

「社会を変えたい」という若手が増えてるのはたしかです。けど、「起業することが日常的になった」っていうのがいちばん大きいと思う。

安田

就職するのと同じような感覚で、お金を稼ぐひとつの手段として「自分でやるか」みたいな。

石塚

その通りです。

安田

それは親世代を見て「会社に入っても未来はないぞ」と思ってるからですか。

石塚

子どものときからYouTubeやSNSネイティブだからじゃないですか。

安田

親よりそっちを見てると。

石塚

そういうことですね。自分で始めるための素材が山ほどある。安田さんの話だって、いまはYouTubeで浴びるほど聞けるわけじゃないですか。

安田

まあそうですね。

石塚

ネットで調べれば「安田佳生という人がどういう人なのか」すぐわかる。

安田

そう言えば、知らない学生さんから連絡が来たりします。

石塚

でしょ。高校生が情報を手に入れるのにコストもかからないし、すごくスピーディーに収集できる。これは大きいと思う。

安田

親はどう思ってるんでしょう。ちょっと前まで「親の影響」ってすごく大きかったじゃないですか。「とりあえず大企業に行っとけ」とか。

石塚

それは今でも同じです。

安田

やっぱりそうですか。学費も親が出してるわけですからね。

石塚

だから一応は大手企業に行って2・3年経験するわけですよ。

安田

その後はどうなんですか?会社をやめると言ったらすごく反対しそうですけど。

石塚

いやぁ。いい大学出て、いい企業に就職してくれれば、「あとはもうおまえの人生だから」って親もなるんですよ。

安田

なるんですか。

石塚

割とそういう親が多いですよ。起業する子たちの親って。

安田

会社に居続けるってことに、親も自信がなくなってきたんですかね。

石塚

「絶対サラリーマンやれ」とか「大手企業は安泰だ」とか、そういうことはあんまり聞かないですね。

安田

時代が変わりましたね。

石塚

中学、高校からデジタル・ネイティブだから、いろんなものを知ってる。いろんな人とつながってるし、いろんな物事を考えてるし。

安田

ある意味、親よりちゃんと考えてると。

石塚

そう感じますね。世界観もあるし、もう恐ろしい。メジャーの大谷翔平とか将棋の藤井聡太みたいな感じの人が起業家で増えてる。

安田

へぇ~。

石塚

バランスがよくて、ナイスで、ルックスもよかったりして。彼らみたいな若者が当たり前のように学生やりながら起業するっていう、この日常はすごいなと思います。

安田

やっぱりYouTubeの影響が大きいんですかね。

石塚

僕はすごく大きいと思ってます。子どもがなりたい職業でユーチューバーがトップですからね。親はスイミング習わせたいけど、子どもは動画編集を習いたいっていう(笑)

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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