「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。
第35回 ハウオリは、次世代の「美容業界ビジネスモデル」
美容室って大半が個人オーナーの経営だと思いますが、「しっかり稼ぐ」のであれば多店舗経営すべきなのかなと思うんです。そのあたり岩上さんはどうお考えですか?
うーん、僕自身は店舗を増やす予定はないですね。過去に考えたことはあったんですけど、多店舗を経営するとなると、大事にしているポリシーなんかも妥協しなきゃいけなくなるなと。
確かに店舗数が増えれば、岩上さん個人の「ブランド力」や「付加価値」は薄まっていくでしょうね。
そうなんですよ。他にも近隣の店に合わせて料金を下げたり、マニュアルを作って一律管理しなきゃいけなくなったりする。まるで「金太郎飴」のように「どこを切っても同じような店舗」をたくさん作るのは、僕がしたいビジネスではないな、と。
なるほどなるほど。確かに岩上さんって、一緒に働くスタッフさんやお客さんとの関係性づくりをすごく大切にされていますもんね。それは「マニュアル」で統一できるようなものではないと思います。
仰るとおりです。そもそもウチで働くスタッフって「いつかは自分のお店を持ちたい」という人が多いんです。僕としては、自分らしく働きたいと考えている「仲間」を増やしていきたいだけで、マニュアルに沿って「従わせる」ようなことはしたくないんですよ。
なるほどなぁ。ちなみに業界最大手と言われるような100店舗近くを抱える美容室グループって、今後もどんどん成長していくんでしょうかね?
いや、むしろ縮小傾向にありますね。というのもやはり、今の社会の仕組みで組織化しようとしたら、せいぜい10~15店舗程度が限界だと思うんですよ。
ほう。それはどうしてですか?
そもそも美容師って、ある程度お客さんがついて売上が上がってくると、もっと稼ぐためには「独立する」か「フリーランスになる」しかないわけです。
うんうん。確かに30歳くらいで「お店を辞めて独立するんです」っていう美容師さんが多い気がします。
ええ。ただ今までは、「独立する時に既存客のカルテを持っていくこと」はタブー中のタブーだった。独立したらまたイチから自分でお客さんを開拓しなきゃいけないわけで、つまり簡単には独立できない事情があったわけです。…でも今ってSNSがあるでしょう?
ああそうか、カルテを持ち出したりしなくても、お客さんと美容師さんが個々に繋がれちゃうわけですね。
ええ、まさに。つまり「自分のお客様」を連れて独立することを止められないんです。つまり良くも悪くも昔よりずっと独立しやすくなった。それを前提に考えると、いくら多店舗展開しても美容師がどんどん流出していってしまうだろうなと。
ははぁ、なるほど。SNSの発達も影響して、「グループ化」「組織化」が難しくなってきているというわけですね。
ええ。もっともSNS関係なく、美容師を一人雇用すること自体が簡単じゃないですからね。給与だけじゃなく社会保険料も払って…というのはすごく体力がいることなので。だから何十店舗も経営しているグループも、おそらくフリーランスや業務提携の活用をしていると思いますよ。
なるほどなぁ。…とは言え、もし岩上さんが今より何十倍も稼ごうと思ったら多店舗展開するのが一番近道な気がするんです。言い方は悪いですけど、「自分は現場に立たずに大金持ち」みたいな(笑)。そういうことにはあんまり興味ないですか?(笑)
いや〜、正直なところ憧れはありますよ(笑)。そういう働き方もしてみたかったなとは思います。ただね、視点を変えると『ハウオリ』がその想いを実現してくれるのかなと。
ああ、そうか。ハウオリがどんどん広がっていくことで、新しい収益が生まれていると。
そうですそうです。しかも、収益が生まれるだけじゃなく、ハウオリ導入店のオーナーさんには僕の仕事観や経営ノウハウも伝えられる。
なるほどなるほど。つまり店舗を増やすのではなく技術やノウハウを広げているわけですね。それが結果的に大きなグループを形成していくと。
仰るとおりです。目に見えた組織化ではないけれど、アメーバのように美容業界の中にぶわ~っと広がっていくイメージです。もちろんそれは僕だけがお金持ちになることが目的じゃなく、若手のフックアップというか、ハウオリ術や僕のノウハウを使ってしっかり収益を出せる人を増やしたいからですけど。
対談している二人
岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表
美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。