第5回 美容師に求められるコミュニケーション術

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

第5回 美容師に求められるコミュニケーション術

安田

今回は、「美容師さんのコミュニケーション術」について、岩上さんにお伺いしたいと思います。美容師さんって、ただ髪を切るだけじゃなく、お客さんとのコミュニケーションも大事ですよね。


岩上

そうですね。「マハロコ」の若いスタッフにも「どんなコミュニケーションを取ればいいんでしょうか」ってよく相談されるんですよ。

安田

へぇ、やっぱり若い美容師さんも悩んでいるんですね。「今日はいい天気ですね」なんて話じゃ味気ないし、かといって、「人生相談」みたいな感じも重たいですし。


岩上

そうそう。だから本来は、その時その時で話題や話し方を考えながらやるべきもので。ただそれって大変なので、毎回同じような話をする美容師さんも多いですね。

安田

ああ、確かに。自分なりの「会話の型」を作ってしまっていると言うか。


岩上

ええ。気持ちはわかるんですけど、本当にお客さんの満足を高めたいなら、毎回しっかり向き合った方がいいと思います。それに、これはお客さん側だとわからないかもしれませんが、美容師がお客さんから引き出すべき情報というのもあって。

安田

ん? といいますと?


岩上

端的に言えば、髪に関する情報ですよね。どんなスタイルにしたいのか、どういう悩みがあるのか、どんな色味が好きなのか。

安田

ああ、なるほど。単に場をもたせればいいわけじゃなくて、カットやカラーをするための情報を把握しなければならないわけだ。


岩上

そうですそうです。かといって、お客さんが始めた世間話を遮るわけにもいかないでしょう? だからその世間話からスムーズにヘアスタイルやカラーの話に持っていく。そういうトーク技術も必要になってくるんです。

安田

ははぁ、なるほど。不自然じゃないやり方で、ちょっとずつ話題を変えていく。例え話をはさんだり、相槌の打ち方で方向を変えたり。


岩上

まさにそういうことです。ただ最近は少し状況が変わってきてまして。安田さん、ホットペッパービューティーはご存知ですか?

安田

使ったことはないですが、知ってはいます。美容室を検索したり、予約できたりするサイトですよね。


岩上

そうですそうです。でもそれだけじゃなく、ヘアスタイルの参考画像もたくさん載っているんです。お客さんは「こうなりたい」という画像を選んで、それを施術した美容院を予約する、と。

安田

ははぁ、なるほど。カタログから好きな髪型を選んで、「これにする!」とできちゃうわけですね。まるで自動販売機でボタンを押すみたいな感じで、髪型が買えてしまうと。


岩上

まさに仰るとおりで、「完成した髪型を買う」という時代になりつつあるんです。

安田

へえ〜、すごいですね。でもそれって、お客さんと話しながら髪型を決めていく岩上さんのスタイルとは真逆な気が…


岩上

そうですねぇ。時代の変化ですから、「髪型を物として売る」というビジネスモデル自体は否定しません。でも、個人的にはそういうスタンスではやってないですね。

安田

ですよね。とはいえ、「完成した髪型を買おう」ていうお客さんが来ちゃったらどうするんです? 写真を見せられて「これの通りにしてください」なんて言われたら。


岩上

もちろんそのご要望はしっかりお聞きした上で、「なぜその髪型を欲しいと思ったの?」「他にやりたい髪型はなかったの?」なんてあれこれ聞いてしまうと思いますね。

安田

なるほど。とはいえですよ、本人が「この髪型にしてくれ」と言うなら、それでいいような気もするんです。敢えてそれ以上深堀りする必要もないようにも思うんですが。


岩上

そういう見方もありますけど、お客さんが「この髪型にしたい」と決めていても、モデルと骨格や髪質が違っていたりして、同じ雰囲気にならないケースも多々ありますので。

安田

ああ、確かにそうか。


岩上

その髪型にしたいと思った理由やプロセスを聞くことで、もしかしたらその人に本当に合う別の髪型を提案できるかもしれない。そんな風に考えるわけです。それにね、自分の個性や魅力って、意外と本人はわからなかったりするんですよ。

安田

ははぁ、なるほど。本人すら気付いていない魅力を引き出すための会話だと。それも岩上さんが考える「美容師のコミュニケーション術」のひとつなんですね。


岩上

そうですそうです。実際、美容院に来られるお客さんって「気になる芸能人やSNSなどで見つけた髪型にしたい」っていうリクエストって多いんです。もちろんそれが悪いわけではないんですけど、みんながみんな同じ髪型にしていたらもったいないというか。

安田

ああ、松田聖子さんの「聖子ちゃんカット」とかってことですよね。古い時代の例えですみませんが(笑)。あの時代は似合う似合わないは関係なしに、みんなこぞって聖子ちゃんカットにしていましたもんね。


岩上

まさにまさに(笑)。繰り返しますがそれが悪いと言っているわけじゃないんです。髪型なんて個人の自由ですからね。ただ、もっとパーソナルブランディングした方が魅力的になるのになぁと。

安田

でも考え方によっては、「全員聖子ちゃんカット」の方が美容師さんは楽なんじゃないですか? いろいろ考えなくていいし。


岩上

それがまた課題だなぁと思っていて。と言うのも安田さん仰るように、「完成された髪型」を買ってもらう方が楽だ、その方がお客さんも喜んでくれるしリピートもしてくれる、と考えている美容師さんはすごく多いんですよ。

安田

なるほど。岩上さんはそれだけじゃもったいないと思っているんですね。お客さんの気持ちや好みを知ることで、より魅力的なヘアスタイルが提案できると。


岩上

仰るとおりです。さらに言えば、ヘアスタイルはその人のごく一部に過ぎないわけで。もっと「その人全体」を知って、つまり服の好み、仕事内容、趣味、ライフスタイルなども考えながらパーソナルブランディングをしていけたらなと。

安田

ははぁ、そんなにも高い視点で臨まれているんですね。岩上さんが他の美容師さんと違うということがだいぶわかってきました。


対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

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美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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