第55回 広告費をかけなくても、勝手に集客できる秘密とは?

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

第55回 広告費をかけなくても、勝手に集客できる秘密とは?

安田

『マハロコ』さんって、そんなに広告を出しているイメージがないんですよ。それなのに新規のお客さんはコンスタントに来ていますよね。それはなぜなんですか?


岩上

新規の来店は、既存のお客様からのご紹介がほとんどですね。

安田

やっぱりそうでしたか。今の時代、口コミやリファラルが何より大事だって言われているわけですが、それで実際に成功されているわけですね。ちなみにどんどん紹介をもらえる理由はどこにあると思います?


岩上

もっとも重要なのはカウンセリングの質でしょうね。そこには非常に拘っています。普段『コミュニケーションアカデミー』でも教えているんですが、カウンセリング=ただお客さんの話を聞くことじゃないんです。お客様のお悩みをお聞きした上で、提案をして解決まで導くことがカウンセリングなんですよ。

安田

なるほど。「はいはい」って聞いているだけでは意味がないと。


岩上

そうです。単に聞かれているだけだったら、お客様にとっては「言った損」になっちゃうじゃないですか。求められているのは、課題を解決するための提案。美容師側は「こういうやり方がベストです」という解決策を提示しなければならないわけです。

安田

ははぁ、それってまさに「営業」ですね。


岩上

そうですね。ただ前回もお話したように、そこに至るまでの関係性の構築が大事だとも思っていまして。例えばお客様は「こういう髪型にしたい」とある程度明確なイメージを持ってご来店されることが多いわけです。

安田

やりたいことは決まっているから、お店はその髪型になる施術を実行してくれればいいと。


岩上

そうそう。そこで、「お客さんがそう言っているんだからその通りにしよう」で終わってしまってはダメなんです。「なぜそれを求めているのか」「本音ではどうなりたいと思っているのか」ということまで話してもらえるようにならないと、カウンセリング(提案)なんてできっこないわけで。

安田

ふむふむ。いいカウンセリング(提案)をするには、その下地となる信頼関係が必要だと。


岩上

そういうことです。つまり信頼関係を築くコミュニケーションと、提案のためのカウンセリングをうまく切り替えながらやっていくわけです。ただ、この塩梅がなかなか難しいわけです。コミュニケーションばかりでは売上に繋がらないし、コミュニケーションなしの状態で急に提案したって納得いただけない。

安田

ああ、そこも営業と同じですね。ずっと雑談していたのに、急にセールスモードになって売り込みに来る人とかいますもんね(笑)。天気の話をしてたのに、突然「この商品いいんですよ」なんて変わるから、「いやいや、いきなりすぎるだろ」みたいな(笑)。


岩上

わかりやすい例えをありがとうございます(笑)。雑談をしていたところから急にスイッチが入ってしまって、声のトーンなんかもガラッと変わったりしてね。だから僕は、カウンセリングとコミュニケーション、いかにチャンネルを変えずにモードを変えられるかが大事だと考えていまして。

安田

は〜、なるほど。飛行機の離陸みたいなもんですね。気づいたら空の上だった、みたいな。それぐらい違和感なくモードを変えるのが重要だと。


岩上

仰るとおりです。美容師って接客時間が長いじゃないですか。その分、「この人に売り込まれる」って思われた時点でアウトなんですよね。だからこそ、相手の考えを整理してあげながら、適切なタイミングと温度感で提案しなければならない。

安田

なるほどなぁ。確かに簡単な技術ではないですね。


岩上

そうなんですよ。だからまずはコミュニケーションによって、「相手が何でも言いやすい状況」を作れるようになる必要があります。ここで重要なのは、相手の気持ちに共感することと、相手の課題を整理してあげるということで。

安田

ああ、すごくよくわかります。私も仕事柄いろんな経営者さんとお話しますけど、同じようなことを意識していますから。経営者さんと対話をしながら、情報を整理してあげつつ、「安田にならいろいろ話しても大丈夫そうだぞ」という安心感も持ってもらいつつ。それができて初めてこちらの提案を受け入れてくれる姿勢になるんですよね。


岩上

まさにそうです。僕はずっと「コミュニケーションが大事」と言っていますけど、それってつまり「お客様が提案を受け入れてくれるような気分に持っていく」技術のことを言っているんですよね。

安田

なるほどなぁ。そもそも最近は「提案される」という機会が激減してますからね。何か買う時もネットで選んでポチッとすれば事足りるから、わざわざお店まで足を運んで店員さんと話すこともない。ともあれ、「ちゃんと提案してもらいたいな」と思っている人もたくさんいそうですけどね。


岩上

そうなんですよ。例えばうちの店は初来店されたお客様のカウンセリングシートに「予算はいくら?」という項目があるんですが、「キレイになるならいくらでも」にチェックを入れる方が一定数いらっしゃるんです。

安田

へぇ〜、つまり「キレイになる方法を提案して欲しい」ってことですよね。なるほどなぁ。…それにしても初来店でそれってすごくないですか? それこそまだ信頼関係ができていない状態なわけでしょう?


岩上

それが冒頭の「新規は紹介がほとんど」という話に繋がるんですよ。つまり初来店ではあるけれど、ウチのことはちゃんと知っている。

安田

あ〜なるほどなるほど。すでに『マハロコ』に通っている知人の話を聞いたり、お店のサイトやInstagramなんかの情報を見たりして、「このお店なら、私の抱えている課題を解決できるようなアイディアをくれるかも」って来店していると。


岩上

そういうことです。それこそこの対談を見てご来店された方もいらっしゃいますし。

安田
お〜それは嬉しいですね(笑)。売ろうとしていないのに、相手は最初から「買いたい」という状態で来店してくれるなんて、まさに理想的な商売ですね!

対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

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美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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