第56回 顧客満足度をアップさせたければ、週休3日にすべし?

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

第56回 顧客満足度をアップさせたければ、週休3日にすべし?

安田

岩上さんの美容室『マハロコ』は、聞くところによると週休3日に挑戦しているとか?


岩上

そうですね。今は完全週休2日ですが、もう1日増やそうかなと。

安田

その理由って、やっぱりスタッフの働き方改革をしたいからですか?


岩上

もちろんそれもあります。でも一番大きいのは、「休みの使い方」をもっと考えていかないとなと思うからなんです。美容師にとってそこはすごく重要で。

安田

ほう。休みの使い方、ですか。


岩上

ええ。ここ最近って、「人間によるおもてなし」の希少価値がどんどん上がってきていると思いませんか? コンビニにしろファミレスにしろ、セルフレジや配膳ロボットなどがどんどん導入されて、人とリアルに対面することがどんどん減っている。

安田

まぁ、それも仕方ないですよね。今はなかなか人が雇えないんで。


岩上

そうそう。一方で僕らのように「手業を提供する仕事」は、必ず現場で人と接するわけです。つまり貴重な「人間によるおもてなし」の場になるわけですが、貴重であるがゆえに、求められるレベルもどんどん高まっているなと感じていて。接客する側にある程度の「場をデザインする力」が求められるようになったというか。

安田

場をデザインする力…わかる気がします。ある意味、機械化の対局にあるようなものですよね。


岩上

まさにそうです。効率とはまた別の、ひと手間ふた手間かけられたサービスや、手厚いもてなしこそを価値とする世界です。で、話は戻りますが、そういうおもてなしを提供するには、自分自身がそういう体験をできるだけたくさんするべきだと考えていて。

安田

なるほどなるほど。そういう体験を多くするためにも、お休みを増やしたいということですね。接客上手な飲食店でご飯を食べたり、個人店の洋服屋さんで一緒に服を選んでもらったりすることで、自身の「おもてなしレベル」も上がっていくと。


岩上

仰るとおりで。僕自身は音楽のライブにもよく行きますよ。観客をどうやってフォローしながら場を回しているのか、すごく参考になるので。そういう体験をうちの美容師にもっともっとしてもらいたいということで、週休3日を目指しているんです。

安田

なるほど、素晴らしいですね。紺屋の白袴じゃないですけど、他の店に行く暇がなくて困っている、みたいな人いますもんね。


岩上

そうなんですよ。それだけ売れているんだ、忙しいのは売れっ子の証拠だ、という考え方もできますけど、長い目で見ればそれだと成長が止まってしまう気がして。

安田

そういう状況を避けるには、週休2日では足りないと?


岩上

足りないと思いますね。美容師は体力商売なので、完全に休養する日を削るわけにもいきませんから。

安田

あ〜そうか。つまり「勉強するための休日をプラスする」ということなんですね。すごく理にかなってますけど、それができる経営者はなかなかいないですよ。スタッフさんからしたら、至れり尽くせりなんでしょうけど(笑)。


岩上

笑。でもね、自分がいろんな体験をすることで、実際にお客様との会話の質が上がるんですよ。僕も先日、東京ドームのライブに行ったんですけど、お客様にも事前に「このライブに行くんです」って告知してたんです。そうすると次にお客様がサロンに来た時に「ライブどうだった?」みたいな話になる。そこで新しい情報を提供できると、さらに信頼感が増していくんです。

安田

なるほどなるほど。確かに「休日=疲れを癒やす日」って生活だと、代わり映えのない会話しかできなくなりますもんね。とはいえ、やっぱり経営者側としてはなかなか難しい判断ですよ。勤務時間はそれだけ減っちゃうわけだから。


岩上

もちろんそうなんですけど、スタッフ皆の「おもてなし力」が上がることで、むしろ売上は高めていけると思っています。

安田

ふ〜む。日本人って昔は「エコノミック・アニマル」と言われるほど働きまくりで、そのおかげで日本経済は伸びたんだと言われてますけど、実は今、日本は先進国の中でも1番働かない民族になっているそうなんです。


岩上

なるほど。確かに昔と比べると、確実に労働時間は減っているでしょうね。

安田

ええ。だから「昔にみたいにもっと働くべきだ」って言う人も多いんですが、岩上さんのお話を聞いていると、労働時間を減らすことが必ずしも悪いわけではないと思えます。労働していない時間をただ家で寝て過ごすんじゃなく、先ほどのようないろんな体験をしていけば、結果ビジネスの価値も上げていけるんですね。


岩上

そう思います。「場のデザイン力」は、お客様が喜んでくれてまた来店したいと思ってくれる空気を作り出すこと。そしてそれは、自分の体験を増やすことでしか高められない。だから休みを増やす。これが僕の考える「週休3日」の考え方なんです。

安田

なるほどなぁ。従業員の休みを増やすことが、付加価値の高いサービスが提供でき、結果として顧客満足度のアップにつながるというわけですね。いやぁ〜週休3日、良いことばかりですね!


対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

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美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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