その113「表記のゆれを考えていたら、言葉と国民性の関係に気付いた(ような気がする)」

このコンテンツについて

なぜこんなツマラナイものにこだわるのだろう。そういう「ちょっと変わった人」っていますよね。市川さんはまさにそういう人。でもそういう人が今の時代にはとても大事。なぜなら一見ビジネスになんの関係もなさそうな、絶対にお金にならなそうなものが、価値を生み出す時代だから。凝り固まった自分の頭をほぐすために、ぜひ一度(騙されたと思って)市川ワールドへ足を踏み入れてみてください。

「表記のゆれを考えていたら、言葉と国民性の関係に気付いた(ような気がする)」

ブランディングの仕事をしていると、Webサイトやらパンフレットなど、文字にふれる仕事が多いんです。
ライターさんの原稿を確認したり、ちょっとしたものなら僕が書いたりもします。
そこで、いつも僕を悩ませるのが「表記のゆれ」です。「ゆらぎ」とも言われますね。
表記が統一されていないってことなんですが、例えば、平仮名の「いただく」と漢字の「頂く」が混在して使われているとか。
そうすると、「どっちかに統一すべき」って話になるんです。
ところが、「いただく」「頂く」の場合、「動詞なら漢字」、「補助動詞なら平仮名」という基本ルールがあるんです。
つまり・・・

そうさせていただく
[補助動詞]→平仮名

贈り物を頂く
[動詞]→漢字

といった具合です。
知ってました?

ところが、

そうさせて頂く
贈り物をいただく

のように基本ルールに則っていない表記も普通に見かけるわけです。
そして、これらを見ても、僕ら日本人は、意味を正しく理解できます。
「そうさせて頂くって、何を頂く(giveされる/getする)の?」だって、「漢字だからこの場合は動詞でしょ?」なんて思いませんよね。
使っても誤解も生まないので、たとえ誤用や非推奨の使い方だとしても、一般的に使われていくのです。
「ください」「下さい」も同様に補助動詞か動詞で使い分けます。
また、「きわめて」「極めて」のような副詞は、“ひらく”ことが推奨されていて、実は平仮名が推奨されています。

そんなことを社内で話していたら、「これはある種のビジネスマナーの類なんだと思う。しっかりしている企業はそういった規則に則った運用をしているだろうから、そうした企業と取引するにあたって知っておいて損はないものなんだと思う。」とスタッフが言ってたんですよね。
「なるほど!そうだな」って思ったんです。
実は同じ理由から、弊社も10名に満たない規模のときに、接遇研修の講師を招いて、ビジネスマナーを学びました。
大手企業だと新入社員研修などが行われて、一定のビジネスマナーを学びます。そういう人たちと商談するには、僕らも最低限のビジネスマナーは知っておかないといけない!って考えたんですよね。
で、実際、表記のゆれについて、気になって大手企業のWebサイトを調べてみたんです。
・・・めちゃめちゃゆれてましたw

日本語には、平仮名、漢字、カタカナとありますよね。
「ねこ」「猫」「ネコ」のように。
それぞれ同じ意味ですが、僕らは不思議とそれぞれの表記から、微妙な差異、情緒のようなものを感じる感性があるように思うんです。
それは使われる状況(前後の文脈やデザインなど)にもよるでしょうが。
例えば、「車にはねられた猫」「車にはねられたネコ」と2つの表記があったとき、不思議なことに前者の方がシリアスに感じませんか?
同じ様に「いただく/頂く」「きわめて/極めて」にも感じるものはあるでしょう。

一応ルールはあって、細かく設定されている。
でも、すべてを正確に運用できるわけじゃない。
当然、曖昧な運用状況が生まれていく。
そういう状況を割とすんなり受け入れていく。

「表記のゆれ」運用を見ていると、その国の言葉がその国民の性質を創るんじゃないか!?って思えてきます。
優柔不断でしょう?日本人って。(僕なんて年々優柔不断になってきて・・・)
誰かが決めたことを何の疑いもなく、受け取る、受け入れることができる私たち。
どっちつかずで、どっちに転んでもそれなりに許容できちゃうんです。
従順、思考停止と言えるのかもしれませんが、案外何事にも執着が無いのかもしれませんね。
実は色んなことを受け入れて成長できるのかも。

 

著者の他の記事を見る

著者/市川 厚(いちかわ あつし)

株式会社ライオンハート 代表取締役会長
https://www.lionheart.co.jp/

LH&creatives Inc.(フィリピン法人) CEO
https://lionheart.asia/

<経歴>
三重県の陶芸家の家に生まれる。
(僕が継がなかったので、父の代で終焉を迎えることになる…)
大学時代、遅めの中二病を発症。経済学部に入ったのに、何を思ったか「ファッションデザイナーになるんや!」と思い立ち、大学を中退。アパレル企業に就職。
ところが、現実は甘くなく、全く使えない僕に業を煮やした社長から、「Webサイト作れないとクビだからな!」と言われ、泣く(T_T)パソコンの電源の付け方も知らなかったけど、気合でWebサイト制作を習得。しかし、実際のところは、言い訳ばかりで全く成長できず・・・怒られて、毎日泣く(T_T)そんな頃、「デザインにも色々ある」と改めて気づいて、広告業界へ転職、広告制作会社のデザイナーとしてのキャリアをスタート。
「今度は言い訳をしない!」と決めて仕事に没頭し、四六時中仕事していたら、黒目がめくれ上がってきて、眼科医から「失明するよ」と言われ、ビビる。2004年勤務先で出会った同僚や友人を誘って起業、有限会社ライオンハートを設立(現 株式会社ライオンハート)。ところが、創業メンバーとあっさり分裂、人間不信に。残ったメンバーと再スタート。
2014年、設立10周年を機に、創業メンバーで唯一残っていた人間を日本法人の社長にし、自身は会長になり動きやすい状態を創る。この頃からブランディングエージェンシーを名乗り始める。
2016年、フィリピン(マニラ)にITアウトソーシング企業(LH&creatives Inc.)を設立。設立準備期間から家族とともに移り住み、フィリピンで3年半を過ごす。
フィリピン人マネジメントを通して、猜疑心の塊になり、性悪説に変わる。
2019年6月、日本に帰国し、日本法人のマネジメントに復帰。社内コミュニケーションを充実させるために席替えしたり、誰も掃除しない椅子をきれいにしたり、「眠いときはしゃべった方が良いよねッ」ってスタッフに話しかけながら仕事をするなど、独自のインナー・ブランディングの理論を実験していたところ、会社の調子が上がった。そもそもブランディングってなんだ?と思っていたところに、BFIの安田さんと出会い、勝手にご縁を感じてコンサルを受けてみる。そしたら安田さんに誘われ、2020年、anote konoteに参加することに。

感想・著者への質問はこちらから