第54回「イスラム教はお酒は基本ダメだと思いますが、実は隠れて飲める場所があったりするのでしょうか? 見つかったらヤバいのですか?」

日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。

  質問  
「イスラム教はお酒は基本ダメだと思いますが、実は隠れて飲める場所があったりするのでしょうか? 見つかったらヤバいのですか?」

   回答   

対応は国それぞれです。
イスラム教圏であるアラブの国々においても、隠れずとも飲める場所は結構あります。
例えばヒルトンやハイアットといった外資系ホテルには、だいたいお酒を飲めるバーが館内にありますし、ルームサービスでも頼むことができます。
また、ホテルの外でも場所によって飲めるエリアがあります。
とはいえ、基本的に外国人や観光客向けで、現地のムスリムの人は飲まない人が多数派ではあります。

一方、クウェートやサウジアラビアなどの国では飲むこと自体が違法です。
闇酒の存在についてはノーとは言えませんが、考えないほうがいいでしょう。質問にもある通り「ヤバい」と思います。
これは国の方針によるところが大きく、お酒が飲めるドバイでもサウジ資本のホテルはお酒の提供をしていません。


(↑カタールのスポーツバーでサッカーの試合を見ながら。おもに外国人で賑わう)

私は今では飲む機会が減りましたが、以前、毎日のようにお酒を飲んでいた時期があります。
そんな時にサウジへ出張に行くことになり、「当分お酒ナシだから辛くなるかも」と心配しました。出国前の空港とドバイ向けのエミレーツ機内でビールを飲み、そしてドバイ空港ではジンを飲みました。サウジへ行くルートの場合、お酒が飲めるのはここまで。
サウジ行きの機内では酒類の提供はありません。そして、ついに現地入り。
2日が過ぎ、3日が過ぎ……ても全然大丈夫です。
渡航前の心配は杞憂に終わりました。
周りが飲んでいないので思ったほど気になりません。
そもそも手に入りませんし、ないと思えばマインドも切り替わります。
それに友人と夜に外出して遊んだりすると、お酒がなくても結構楽しいのです。
サウジアラビアは、ビジネスだけでなく断酒を考える人にもいい場所だと思います。

ただ現在、観光やエンタメに尋常ならざる注力を見せているサウジです。
短期間にタブーを次々と解禁してきたその勢いを見ていると、第一回記事でも書いたように今後観光客向けにお酒を提供し始める可能性もゼロとは言えないかもしれません。

ちなみに、お酒と並んでイスラム教でダメとされている「豚」についてですが、私の肌感ではこちらの方がお酒よりも断然タブー度が高い気がします。
日本に来てお酒を飲むイスラム教徒はいますが、豚肉を進んで食べる人には会ったことがありません。もちろんゼロではないかもしれませんが、いるとすれば相当レアだと思います。

今回は現地のアルコール事情について書きましたが、いかがだったでしょうか。
そういえば、前々回の記事にコメントでアラブのペット事情について質問をいただきました。
次回は、その件について書いてみようと思います。シュクラン、マッサラーマ。

 

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 この記事を書いた人  

大西 啓介(おおにし けいすけ) 

大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながら中東ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。

海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。

写真はサウジアラビアのカフェにて。

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