リフィル処方箋の導入で収益がさらに落ち込む?〜お医者さんは、なやんでる。 第113回〜

第113回 「リフィル処方箋の導入で収益がさらに落ち込む?」

お医者さん
お医者さん
今年の診療報酬改定では、ついにリフィル処方箋が導入された。ただでさえ患者の数が減っているのに、この制度のせいでさらに経営が悪化する気がする。
お医者さん
お医者さん
まったく……政府の医療費削減の方針は強まるばかりだ。私たちのような零細クリニックがいくら潰れてもいいと思っているんだろうか。
リフィル処方箋制度については、お医者さんの中でも話題になっていますよね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そりゃそうだよ。毎回診察を受けなくても調剤薬局で薬がもらえるなら、患者さんは当然そちらを選ぶさ。誰も好き好んで病院に来ているわけじゃないんだから。……って、君は一体?
はじめまして。ドクターアバターの絹川といいます。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ふむ、そうかね。とはいえ、これは相談に乗ってもらった所でどうにかなる問題じゃない。まさか患者さんの首に紐をつけて病院に引っ張ってくるわけにもいかないんだからな。
そうですね。実際問題、リフィル処方箋の認知が進めば、薬をもらうためだけに病院に来ていた患者さんは当然そちらを選ぶでしょう。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ああ。患者は便利になるだろうが、経営側としてはたまらないよ。通院回数が減ることはそのまま収益低下に繋がるんだから。これで喜ぶのは事務作業のコストを減らしたい総合病院くらいなもんだろう。
先生も仰っていましたが、政府は明確に「医療費削減」の方針で動いていますからね。かかりつけ医制度がなかなか浸透しないので、薬局に診察の一部を担わせる方法を取り始めたんでしょう。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ふん。これでますます病院の存在価値は薄まり、一方で薬局の重要度は増していくわけだ。もっとも、今後はオンラインの服薬指導なんかも進むだろうし、そうなったら薬は全部郵送で受け取るようになるだろう。病院にしろ薬局にしろ、対面のやりとりはどんどん少なくなっていく。
そうですね。ともあれ、「診察を受けて、その結果として薬をもらう」というのが正しいはずが、最近は「薬をもらうために診察を受ける」という感覚になっている事自体が問題だとも言えます。患者さんは診察を受ける価値を感じていないということで、逆に言えば「この先生に診察してもらいたい!」と思う強い動機があれば、状況は変わってくる。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
いや、簡単に言うけどね、そんなのは無理だよ。私たちの商品は医療行為で、その内容は法律で細かく指定されているんだからさ。
でも先生、それは保険診療内で考えた場合、ですよね。自由診療になれば制約はほとんどなくなる。自由な発想で、独自の価値を作り出すことも可能じゃないでしょうか。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
自由診療? ……まあ、それは確かにそうだが。しかし、長年保険一本でやってきた身からすると、簡単に舵を切れる話じゃない。
でも先生、政府は今後も一層「医療費削減」を進めますし、今回のリフィル処方箋しかり、コロコロと変わる状況に対応し続けなければならないんです。仰るように自由診療の導入は簡単なことではないでしょうが、「自分たちならどんな価値を提供できるだろう」と、保険診療という柵を取っ払って考えてみるのもいいように思います。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
確かに……このまま何もしなければ状況は苦しくなるばかりだしな。
ええ。そしていろいろ検討した上で、「自由診療で独自のサービスを提供するクリニック」で行くのか、「これまで通り保険診療を行うクリニック」で行くのかを決めていけばいいのではないかと。
絹川
絹川
仮に後者を選ぶにしろ、「制度の変化に柔軟に対応し、患者さんの利便性を徹底追及するクリニック」というような、独自のスタンスを打ち出すことは可能だと思いますし。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ふむ、なるほど。確かにそうだ。知恵を絞ればいろいろできる気がするな。
はい。とにかく一番マズいのは「今のまま何もしない」ということだと思いますね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そうだな。うん、最終的にどういう方向性で行くにしろ、一度じっくり考えてみよう。

 

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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