第141回 「システムトラブルがうまく説明できない!」
お医者さん
(電話しながら……)いや、だからそうじゃなくて、いつもの画面を表示させたらよくわからないエラー表示が出て、何をやっても動かなくなっちゃったんだよ。
お医者さん
どんなエラーかって……よくわからない英文がズラーッと並んでて……え? 画面を撮影して送ってくれ? いいけど、スマホで撮影した写真をどうやって送信すれば……
お医者さん
あー、もう、面倒だからちょっと来てくれよ。え? 週明け? うーん、わかったよ、じゃあまたその時に電話して。うん、はい、よろしく。
こんにちは先生、お困りのようですが、どうされたんですか?
絹川
お医者さん
ん? ああ、君は確か……
ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
お医者さん
ああ、そうだそうだ。ドクターアバターの絹川くんだ。……いやね、ウチのシステムが壊れちゃってさ。業者に電話したんだけど、あれこれ専門的なことを聞いてくるばかりで、全然直し方を教えてくれないんだよ。
ああ、なるほど。
絹川
お医者さん
私もシステムに詳しいわけじゃないからさ、困っちゃって。サッと現場に来て直してくれればいいのに、スケジュールが詰まってるとかで週明けになるってさ。まったく、嫌になっちゃうよ。
そうですねえ。でも、業者さんの気持ちも正直わかります。直し方を教えるにも、やっぱりまずは状況を正しく把握しないと難しいので……
絹川
お医者さん
え〜そういうもの? でも状況って言われても、私みたいな素人にはうまく説明できないんだよ。
確かにそういうお医者さんは多いですね。システム業者にトラブル説明をするのが苦手という。
絹川
お医者さん
そうなんだよ。かといって私以外に詳しいスタッフがいるわけでもないし。
なるほど。そういう場合に私がオススメしているのは、「システムの問診票」のようなものを導入する方法ですね。
絹川
お医者さん
「システムの問診票」?なにそれ。
先生のクリニックでも、診察前に患者さんに問診票を書いてもらっているでしょう? どんな症状があるのかとか、その症状はいつから始まったのかとか、飲んでる薬の種類とか。
絹川
お医者さん
うん、もちろん。あれを診察でいちいち聞いてたら日が暮れちゃうからね。
ですよね。でもそれはシステム業者さんも同じなんです。電話でひとつひとつ状況を確かめていくのは手間ですし、すれ違いも起きやすい。だから「システムの問診票」なんです。
絹川
お医者さん
ふむ……つまり私が記入して、システム業者に渡すということかね。
そういうことです。項目は、どのようなトラブルが起きているのか、どの端末で起きているのか、どの画面の時にエラーが起こるのか、いつから起きているのか、といったものになるでしょうか。
絹川
お医者さん
なるほどね。それを業者に送った上で電話すれば、コミュニケーションがスムーズになるというわけか。
そういうことです。問診票のテンプレートは、システム業者さん側に用意してもらってもいいかもしれません。トラブル対応にどんな情報が必要なのかは、彼らの方がよく知ってるわけですから。
絹川
お医者さん
確かにそうだ。
一方で、そういったシートを運用することで、先生側の理解もきっと深まっていくと思いますよ。問診票を書くには、ある程度状況を理解しておく必要がありますからね。
絹川
お医者さん
なるほどねえ。確かに患者さんも、問診票を書くことで自分の状況を客観的に捉えられたりするもんな。
ええ。そうやって少しずつ慣れていくことで、システム業者さんとのやり取りもスムーズになっていくはずです。簡単なものなら、先生自身でエラー対応ができるようになるかもしれない。
絹川
お医者さん
へえ、そういうものかね。でも、そうなったらいろいろと楽になりそうだ。
はい。それに最近はリモート会議アプリがありますから、画面共有をするのもワンクリックで済みます。電話で説明するよりずっと簡単ですよ。
絹川
お医者さん
ああ、そうか。そういう使い方もできるんだな。
そうなんです。ITに苦手意識がある方は多いですが、使ってみると意外と簡単で、思った以上に便利だとわかるはずです。この機会にぜひ挑戦してみては。
絹川
お医者さん
そうだな、うん、ちょっと頑張ってみるよ!
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。