第159回 「医者の働き方改革」にどう対応する?
お医者さん
まったく、最近は「医者の働き方改革」なんてことまで言われるようになった。そう簡単に言われても困る。急患が来たらどうすると言うんだ。
お医者さん
いやしかし「本当に労働時間の規制が始まるらしい」って知り合いの医者が言っていたな。なにか対策を取ったほうがいいんだろうか。
こんにちは先生。どうしたんです難しい顔して。
絹川
お医者さん
ん? ああ、君は確かドクター何とかの絹川くんじゃないか!
ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
お医者さん
ああ、そうそう、ドクターアバター!いやそれよりいいところに来てくれた。「医者の働き方改革」についてちょっと教えてくれよ。
ああ、2024年4月から適用される労働時間規制の話ですね。
絹川
お医者さん
あ、やっぱり本当に規制が始まるの?
ええ。時間外労働の時間について、「年960時間/ 月100時間未満」などのルールが作られるようです。数字は条件によって変わってきますけど。
絹川
お医者さん
ふうむ。なるほど。いやでも絹川くん、うちは古い病院だし、このあたりは田舎だろう? 近所の人が具合が悪くなって駆け込んでくることもあるんだよ。そういう人に「働き方改革なので診れません」なんて言えとでも?
さすがです。先生のそういう責任感の強さが、患者さんの信頼を得ているんですね。でも大丈夫ですよ。今回の規制、経営者は対象外ですから。
絹川
お医者さん
あ……ああ、そうか。経営者には関係ない話なのか。
そうなんですが、まったく関係ないとも言えません。というのも今回の件、勤務医さんの働き方には当然影響が出てきます。彼らの勤務時間を減らそうと考えると、結局経営者が代わりにたくさん働くしかない……なんてこともあるわけですよ。
絹川
お医者さん
いや、だって、他にやる人がいないんだから仕方ないじゃいか。幸い私は診察が大好きだし。
それはよくわかるんですが、やっぱり先生はお医者さんであると同時に経営者ですから、戦略を考える暇がないほど忙しくなっちゃうのはよくないと思いますよ。
絹川
お医者さん
ふうむ、まあ、それもそうだけど。でもよく考えたらうちの勤務医って、週1回非常勤で来てもらってる人だけじゃないか。週1回の勤務で時間オーバーなんてこともないだろう。
いえ、実はそこが落とし穴なんです、先生。ここでの勤務が週1回ってことは、その方は別の場所でも勤務されてるってことですよね。
絹川
お医者さん
ん? そりゃそうだよ。うちだけで食っていけるはずがないから、いつくかの別の病院でも働いてるよ。
ですよね。そうなるとその方の勤務時間は、すべての病院でのトータルになります。それが上限を超えていたらNGってことです。
絹川
お医者さん
なんと!
そうなったら、場合によってはその方の派遣がストップする可能性もあります。なので、週1回の非常勤だとしても、意識しておく必要があるんですよ。
絹川
お医者さん
うーむ、なんだか面倒なことになってきたな。まあでも、彼がいなくなったら困るし、仕方がないか。
まあ、時代の流れですからね。それに、これを好機にして、私が以前からお伝えしているDXやタスクシフティングにチャレンジするのもいいかと思いますよ。
絹川
お医者さん
確かになぁ。後手後手で対応していてもつまらんし、どうせなら最先端のことをしてみるのも面白いかもしれん。
いいですね!先生は患者さんの信頼も厚いですし、他の病院よりずっとスムーズにいくように思います。
絹川
お医者さん
そうだな。今度患者さんに「導入してほしいDXは?」なんてアンケートでも取ってみるか(笑)。
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。