第174回 価格転嫁できない保険診療でどう賃上げする?
お医者さん
企業の賃上げのニュースが最近は多いなぁ。恐らくそうしないと離職されてしまったり、優秀な人材を採用できないからだろう。
お医者さん
ウチもスタッフからその手の希望が聞こえるようになってきたけど……そんな簡単な話じゃない。私からすれば一般企業はまだ賃上げしやすい状況なんだ。
保険診療だと価格転嫁できませんもんね。
絹川
お医者さん
!! そう! まさにそうなんだよ! 普通の企業なら自分のところの商品を値上げして、増えた分の利益で賃上げすればいい。でも保険診療は価格の変更ができないわけだから、賃上げ=利益を削ることでしかないんだ! ……って、あなたは一体?
はじめまして。ドクターアバターの絹川と申します。お医者さんの様々な相談に乗りながら「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
お医者さん
ドクターアバター? あ! 知り合いの医師から聞いた事があるぞ! 妙に明るくて話し好きの医療コンサルがいるって。
あ、恐らくそれ、私です(笑)。本業は電カルの導入なんですけど、もともと接客業を長くやっていたこともあって、ついあれこれお喋りしたくなっちゃうんですよね。
絹川
お医者さん
確かになんだか医療コンサルっぽくないものね。……それはさておき、さっきの話だよ。私たちみたいに価格転嫁できない事業の場合、どうやって賃上げなんてすればいいんだよ。
そうなんですよね。診療報酬が上がっているならまだしも、むしろ国はどんどん下げているわけで。
絹川
お医者さん
その通り!診療報酬改定の基本方針でも、「人材確保に向けた賃上げを!」なんて書いているそうじゃないか。自分たちで報酬を下げておいて、どの口がそんなことを言うんだか。
国が根拠としているのは、経常利益率なんですよね。クリニックの経常利益率は20年度に3.0%、21年度に7.4%、22年度に8.8%と改善が目立ちました。これは一般の中小企業全体の3.4%、サービス産業の3.1%と比べて高水準です。
絹川
お医者さん
だから賃上げできるだろって話? それぞれ事情も違うのに、随分と雑な意見だと思うけど。
ええ。実際に賃上げできるほど儲かっている病院はそこまで多くないように感じます。先生が仰るように価格転嫁もできないので、現実的には組織をスリム化して経費削減を行っていくほかないと思います。
絹川
お医者さん
組織をスリム化? それって人を減らせってことだろ? それこそ無理だよ。むしろずっと人手不足でなんとか回してる状態なんだから。
そういう意味でも、DX化はもう不可避なんです。診察以外のオペレーションを自動化(セルフ化)したり、管理システムを導入してより少ない人数で業務を回せるようにしたりしないと、なかなか厳しいでしょうね。
絹川
お医者さん
DX化か……確かに今のまま指をくわえて待っていても、状況はよくなることはないよね。むしろ悪くなっていく一方だ。
ええ。どこかで本腰を入れてDX化しないと、本当に厳しい状況に陥ってしまうと思います。逆に言えば、まだそこに踏み切れていないクリニックが多い中、今始めれば勝てる可能性は高い。
絹川
お医者さん
うーん、とはいえ、人を減らすっていうのはなかなか勇気がいることだよ。
そのあたりも考え方です。DX化でオペレーションが効率化されれば、今までよりスタッフの手が空くようになります。つまりより多くの患者さんを診察することも可能になる。
絹川
お医者さん
! なるほど! つまり売上が上がるということか。
そういうことです! 保険診療だから単価をコントロールすることは難しい。であるなら患者数を増やすことで売上UPを実現すればいいわけです。それができればスタッフさんを切る必要もなく、そして賃上げも可能になるかもしれない。
絹川
お医者さん
なるほど……確かに。しかし、そうなると「どういうDX化を行うか」が非常に重要になってくる気がするな。
まさに仰るとおりです。DX化で勝つためには、そういったことに詳しいパートナーが不可欠だと思います。
絹川
お医者さん
パートナー……たとえばあなたのような?
ええ。メーカーなどの業者さんだと、当然自社の商品を売りたがります。そういう意味で私はどこにも属していないフリーランスなので、フラットな視点でご提案できると思いますよ。
絹川
お医者さん
なるほど。ここで出会えたのも何かの縁かもしれない。一度ちゃんと相談させてもらえないかな。
もちろん喜んで!
絹川
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。