お医者さんは、なやんでる。 第42回 「売上を増やすなら、休診日を増やそう」

第42回 「売上を増やすなら、休診日を増やそう」

お医者さん
お医者さん
ああ……なんということだ……ついに赤字になってしまった。何年も前から売上は下がる一方だったが、まさか医者をやっていて赤字を経験するとは思わなかった。
お医者さん
お医者さん
……ともあれ、そんなことを考えている暇はない。とにかく今までよりも多くの患者を受け入れて、少しでも売上を稼ぐしかない。そのためには、そうだな、まずは休診日をやめて毎日病院を開けて……
先生、ちょっと落ち着いてください。その考え方はいただけません。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
む……誰だ君は。
初めまして。ドクターアバターの絹川と申します。お医者さんの様々な相談に乗りながら「アバター(分身)」としてお手伝いをしています。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……なんだっていい。とにかく帰ってくれ。自分の病院が赤字になったんだ。こんなふうにのんびりお喋りしている時間はない。
休日返上で働けば、それだけ売上があがるとお考えなんですか?
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そりゃそうだろう。我々の仕事は患者単価×人数でしかないんだ。簡単に単価が上げられない以上、人数を増やすしかない。そして人数を増やすためには、診察時間を増やすしかない。明白じゃないか。
確かに短期的に、多少売上はあがるかもしれません。ですが、中長期で見ればそのやり方は逆効果でしかありません。必ずどこかで破綻し、むしろより大きな赤字を抱えることになってしまう。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
じゃあ他にどんな対策があるというんだ?
そうですね、まずは休診日を増やすことです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……は? あんた、頭がおかしいのか? 休診日を増やしてどうするんだ。それこそ逆効果だろうが。
いいえ、私は真剣ですよ。赤字の対策を立てるなら、まずは休診日を増やすこと。よりシンプルに言えば、「立ち止まって考える時間を作ること」が先決なんです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……考える時間、だと? さっきも言っただろう、私にそんな暇はないんだよ。立ち止まっている時間があるなら少しでも診察をしなければ。
その発言自体が、先生が近視眼的になっていることの証拠です。もし先生の言うように、休診日をやめて毎日診察をしたとしましょう。微々たる売上アップと引き換えに、先生はさらなる激務をこなさねばならぬようになり、対策を考える余裕もなくなって、下手をしたら心や体を壊すことになるかもしれない。
絹川
絹川
そうなったら赤字どころの話じゃありません。そもそも仕事ができなくなってしまいます。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……だからって、休診日を増やしてどうする。休んだだけ売上は減っていくんだぞ。
逆なんです。これまで先生は忙しく働きすぎていて、自分の事業について俯瞰的に考えたり、軌道修正する時間がなかったんです。だからこそ売上が減っていった。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……確かに、毎日忙しくて、診察を終えるとクタクタだった。経営のことを考える余裕はなかったな。
そういうお医者さんは多いのです。「医師としての自分」が大きすぎて、「経営者としての自分」を見失ってしまうんです。だからこそ、たとえ週1日でもいい、「経営者」として事業の戦略を考える時間を確保する必要があります。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
! そうか、休診日を増やすというのは、そういうことか。
ええ、そういうことなんです。何も私は、休診日を増やしてプライベートな旅行にでも行けと言いたいわけじゃないんです。その日を「経営戦略」を考える日に充てようと言っているのです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほど……じっくり戦略を練り、それを診察や治療に反映していくことで、売上改善を図ると。
仰るとおりです! もちろん、どんな戦略をどう反映していくのかというのはしっかり検討する必要がありますが、そもそも時間が確保できていなければ、考えることすらできません。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……それが今までの私、ということだな。確かに思い返してみれば、私はもう何年も同じことを繰り返していた。売上が減っていくのを嘆きつつ、何も変えようとしてこなかった。
「同じことをやりながら、違う結果を望むのは、狂気である」そんな言葉もあります。結果を変えるためにはやり方を変えなければならない。そして、変えるためにはまず立ち止まり、じっくり考える必要があるのです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
……そう言われてみれば、しごく当然のことだな。私は知らないうちに、”狂い”はじめていたのかもしれない。
でも、先生のようなお医者さんってものすごく多いんです。基本的に1人で舵取りをしているので、なかなか客観的な意見が持ちづらい。私のような人間が重宝されるのも、第三者的な視点があったほうが、冷静な判断ができるからなんです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ドクターアバター、医者の分身、か。言い得て妙だな。せっかくの縁だ、もう少し私の”分身”をやってくれるかい?
もちろん、喜んで!
絹川
絹川

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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