第17回 口は体の第一関門

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第17回 口は体の第一関門

安田
今日は「口(くち)」の役割についてお聞きしていこうと思います。久保さん以前「体の入り口は、口ではなく腸である」と仰ってましたよね?

久保
ええ。食べ物は腸から体内に吸収されるので、体の入り口は実は腸なんですよ、とお伝えしました。
安田
すごく印象的な話だったので、あれからずっと考えていて。その中で、人間の体って「1本の管」みたいなものだって言われていることを思い出したんですよ。

久保
口から肛門までを1本の管と見立てるわけですね。
安田
そうですそうです。で、その管をたとえば「ちくわ」だとすると(笑)、じゃあちくわの穴の中はちくわだと言えるのか? と思いまして。

久保
難しい話になってきましたね(笑)。
安田
笑。でもやっぱりちくわの穴の中は、ちくわの外側なんだろうなと。そうすると、口・胃・腸の中は、ちくわの穴の中=外側になるんですよ。

久保
確かにそうなりますね。
安田
ということはですよ? 口から食べても、実はまだ「体の中」には入っていないということになりますよね?

久保
確かにそうだ(笑)。
安田
じゃあ、ちくわの内部に入る=体の中に入るのはどこかというと、ああ、やっぱり腸じゃないかと。そう考えたらすごくわかりやすかったんです。

久保
面白いですね。確かにそう考えれば、「体の入り口は口ではなく腸である」という説明がすんなりできます。すごいですよ!(笑)
安田
ありがとうございます(笑)。でも一方で、じゃあ「口」は何なのかって話になるわけですよ。私、口ってわりと大雑把な器官だと思うんです。

久保
ほぉ。大雑把ですか?
安田
胃とか腸って、ストレスで穴が空いたり、お腹を壊したり…と、繊細なイメージがあるんですよ。でも口ってもっと強いイメージがあって。なんでもポンポン入って、片っ端から噛み砕いていくじゃないですか。

久保
確かに口の役割の1つは、歯で噛むことで食べ物を物理的に小さくすることです。前にもお話ししましたけど、体にとって食べ物は「異物」ですからね。それを消化できるサイズにする最初の段階を担うのが、口です。
安田
食べ物を小さくする以外に、なにか役割があるんですか?

久保
ええ。噛み砕いていく過程で、食べ物が唾液と混ざりますよね? なので厳密に言えば、実はそのとき既に「消化」が始まっているんです。
安田
え? 口の中でも消化しているんですか?

久保
そうなんです。唾液に含まれる「アミラーゼ」という酵素が、食べ物の中の「糖」を分解、つまり消化しているんですよ。
安田
ああ、だから「良く噛みなさい」って言われるんですね。

久保
おっしゃる通りです。良く噛むということは、食べ物を細かくするだけでなく、唾液をしっかり混ぜることで糖の分解を促す意味があるんです。安田さんも、ご飯をず〜っと噛んでいると甘く感じてきた経験、ありませんか?
安田
あります! あれは口の中で糖が分解されている状態なわけですか?

久保
はい。唾液の中のアミラーゼが、食べ物の分解を進めることで、糖を感じやすくなるんです。
安田
へ〜、そういうことだったんですね!

久保
そうやって口の中で良く噛むことで、口の中でも消化し、胃や腸での消化を助ける意味もあるんです。
安田
なるほど、連携プレーなわけですね。

久保
そうそう。だからよく「胃の調子が悪い」とか「便秘や下痢に悩んでいる」と相談されるんですが、そういう時には「まずは1口ごとに、歳の数だけ噛んでみましょう」とお伝えしています。それだけで改善する場合が多いので。
安田
あぁ、それは私も覚えがあります。もともとあまり噛まずに飲み込むタイプなんですが、歳をとってからはよくお腹が痛くなるようになってしまって…。だからなるべくよく噛むようにしています。

久保
うん、それはすごくいい心がけだと思いますよ。
安田
ありがとうございます。ちなみに口には他にも役割があるんでしょうか?

久保
そうですね。口と言っていいのかわかりませんが、舌には大きな役割があると思っています。
安田
舌といえば、「味覚」を感じるところですけれど。

久保
そうです。もちろん「美味しさ」を感じて心地よくなることも重要なんですが、一番大事なのは「苦味」や「痛み」を感じることなんです。
安田
ほぉ、なるほど。

久保
苦味や痛みをを感じるということは、もしかすると体に良くない食べ物なのかもしれないよ、という「信号」なんですね。
安田
確かに、腐ったものって酸っぱかったり苦かったりして、舌が痛くなることもありますね。体に入れたらダメだぞ、と口や舌が警告してくれているわけですね。

久保
仰る通りです。
安田
じゃあやっぱり、口って一番強い場所だって言えそうですね。だって、腐ったものが口に入っても、ペッと吐き出せばたいしたことないじゃないですか。でもそれが胃や腸に到達してしまったら、体の調子は悪くなってしまうわけで。

久保
確かにそうですね。口の機能自体は繊細だと思いますが、他の器官に比べて頑丈にできているのかも(笑)。
安田
そう考えると、口って限りなく「体の外」に近い場所なのかもしれないですね。体の中ではあるけれど、ほぼ外に触れていますし。

久保
大きな食べ物を噛み砕いて体内に入りやすい大きさにする。そして、体にとって有害なものは外に吐き出す。そういった意味でも、口には「関門」という大きな役割が課せられているんじゃないかなあと、私は思いますね。

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

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仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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