第7回 「美味しさ」のために食べるのは人間だけ?

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第7回 「美味しさ」のために食べるのは人間だけ?

安田
今回は最近よく聞くようになった「ファスティング」についてお聞きしていこうかと思います。久保さんもやられたことありますか?

久保
はい、もちろんやっています。ファスティングをやると味覚も変わるので、前回安田さんが悩まれていた、「体に悪い味に脳が麻痺している状態」からも抜け出しやすくなると思いますよ。
安田
へえ。ちょっと私は知識がないので教えてほしいんですが、ファスティングって、つまり断食ですよね。食べないことが健康に良いって、その理屈が私にはちょっとよくわからないんですけれど。

久保
断食、という部分で言えば、そもそも生命が誕生してからこれまでの長い歴史の中で、人類を含む動物はほぼ飢餓状態だったんです。つまり「食べていない状態」の方が自然だった。
安田
確かにそう言われればそうですよね。でもそれといま流行っている「ファスティング」はどう関係するんですか?

久保
食べ物を手に入れるのが難しかった時代の名残で、食べていなくても生きていけるよう、お腹が空いた時に入る「スイッチ」がいくつかあるそうなんです。代表的なもので言うと、空腹のまま12〜16時間過ごすと、体内のタンパク質を一度壊して再生産する「オートファジー」というスイッチが入るんです。
安田
ほう。自分の体を使って、また自らエネルギーを作り出すわけですか。

久保
そうなんです。ある程度の時間を空腹状態で過ごし、オートファジーの機能を活用することで、古い細胞を壊し、体を活性化、デトックス(毒出し)する。それが「ファスティング」を行う目的ですね。
安田
なるほど。確かに野生動物って、お腹が空いている状態でもすごいスピードで獲物を追いかけますもんね。でも、その話を聞くとなお、「食べること」と「美味しいこと」は関係ないんじゃないかって思っちゃいます。

久保
どういうことですか?
安田
たとえば牛は草を食べますけど、あれ、絶対美味しくないですよね?(笑) でも生きるためには仕方がないから食べてるんだと思うんです。

久保
なるほど。美味しい美味しくないに関係なく、必要だから食べているだけ、ということですね。
安田
そうそう。それに比べて人間は、「食べる」となれば必ず「美味しい」を求めてしまう。実際、「美味しいもの」を食べすぎている気がするんです。

久保
動物と違って、人間は焼いたり加工したりして美味しく食べられる技術も持っていますからね。まあ、「美味しい」を追求する中でそういった技術が生まれてきたんですけど。
安田
久保さん、ぶっちゃけて言って欲しいんですが。ずばり、美味しいものって、基本的には体に悪いんですか?

久保
これまたストレートな質問ですね(笑)。そうですね、「美味しいもの」を紐解いていくと「不自然なもの」が多いのは事実です。そして不自然なものを食べることは、やっぱり体に無理がかかると私は考えていますね。
安田
うーん。でも、なぜそれを自分は「不自然なもの」だと感じないんでしょう。普通に考えれば、体にいいものを食べれば美味しいと思うようにできてるはずじゃないですか。でも実際はそうでもないどころか、逆の結果になっている。それって、体じゃなくて「舌」で食べているからなんですかね。

久保
ああ、そうかもしれません。あるいはそれがまさに「脳が麻痺している」状態なのかもしれない。
安田
ですよね。体にいい食べ物を美味しく感じられなかったら、人間は生物としてここまで生き延びてこれなかったと思うんです。

久保
それは間違いなくそうでしょうね。体に悪いものばかり食べていたらその種はきっと滅んでしまう。
安田
そうそう。だからきっと人類は、歴史上のどこかで「食べること」=「美味しい」という定義にしてしまったんです。動物は変わらず、必要だから食べているだけなのに。

久保
動物は味付けしたり盛り付けしたりしませんもんね(笑)。
安田
ええ(笑)。動物は「美味しさ」のために食べているわけじゃない。

久保
たとえば甘いものを食べると、脳の中でドーパミンが出ます。いわゆる脳内麻薬と呼ばれるもので、これが出ると人は気持ちよくなる。つまり満足感を得られたりストレス発散できたりするわけで、そういう意味で甘いものもの、つまり「美味しいもの」にも良いところはあるんです。一方で危険性も確かにある。
安田
危険性と言うと?

久保
ドーパミンの快楽に慣れすぎると、自然とそれに依存するようになってしまうんです。実際砂糖自体には、麻薬とかなり近しい効果があると言われているんですよね。
安田
えっ、そうなんですか? 確かに甘いものって食べないと落ち着かなくなりますよね。しばらく食べていなければ平気なのに。ということは砂糖は意識的に減らしたほうがいいってことになりそうですね。

久保
はい。砂糖は食べなくても生命維持に問題はありません。エネルギーとして必要な「糖質」という部分では、白米や小麦で十分まかなえているので。
安田
つまり砂糖はもうドーパミンを出すために食べているようなものというわけですか。

久保
ええ、科学的にもそういった側面が指摘されつつあります。とはいえ、砂糖にも「食糧保存」などのメリットはあるんですけど。
安田
ああ、塩と同じですね。

久保
そうです。果物をそのまま保存することはできないけれど、砂糖を使ってジャムにすることで長期保存ができ、いつでも食べることができるようになった。そういう意味で砂糖の貢献度は非常に高いとも言えます。
安田
なるほどなあ。ともあれ、ここまで話をお聞きしてもなお、「生命維持のために食べている人」と「楽しむために食べている人」だったら、後者のほうが人生豊かな気がしちゃうんです(笑)。次回はそのあたりについて、久保さんのご意見もお聞きしたいです。

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

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仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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