「知的付加価値ビジネスの変貌」さよなら採用ビジネス 第127回

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第126回「ぬるい会社の境目」

 第127回「知的付加価値ビジネスの変貌」 


安田

地方の弁護士さんの仕事が、都市部の同業者に奪われてるそうです。

石塚

そうなりますよね。

安田

「起こって当たり前」って事ですか。リモートワークの影響で。

石塚

まさにそうだと思います。僕は新潟出身なんですけど「裁判でやり合うんだったら、東京から弁護士呼べ」って言われますから。

安田

有能な人は都心部に集まってると?

石塚

地方では“法曹三者”といわれる、弁護士・検察官・裁判官が、しょっちゅう顔を合わせるわけですよ。裁判所で。

安田

狭い社会ですもんね。

石塚

メンバーが固定しちゃう。そうすると、やっぱり「このへんで」みたいな感じになるわけです。

安田

お互いに忖度しちゃうと。

石塚

それは当然あると思う。だから本気でやり合う場合は「東京から関係ない人を呼んでガリガリやれ」って話になる。

安田

じゃあ今までも東京の弁護士は地方に来てたわけですね。

石塚

そういう特殊なケースだけです。東京から呼べば日当も出さなきゃいけないし、交通費もかかる。コストがかさむわけですよ。

安田

そりゃそうですね。

石塚

打ち合わせのたびに、新潟に来てもらわなきゃいけないから。

安田

はい。

石塚

でもリモートで打ち合わせが済むのであれば、そんなに費用はかからない。

安田

それは大きいですね。

石塚

だから顧問弁護士の仕事がどんどん都心に流れていく。

安田

裁判以外でもニーズがあるんですか?

石塚

そりゃありますよ。そもそも優秀な人って打ち合わせの時間が短いじゃないですか。

安田

間違いないです。料理人と同じで手際がいいというか。

石塚

リモートで30分話すだけで問題が解決したり。

安田

都心には専門性の高い弁護士もいますからね。

石塚

そうなんですよ。それに優秀な人ならいろんなアイデアもくれるし。

安田

一度相談したら、もう元には戻せないかもしれませんね。地元の弁護士さんでは物足りなくて。

石塚

「いままでの弁護士は何だったんだ?」ってことになりますよ。

安田

ですよね。

石塚

もちろん優秀な方もいらっしゃるんですけど。多くの弁護士はこれまで殿様商売でやってきたはずだから。

安田

これって都心の弁護士さんが積極的に攻めてるんですか?

石塚

うーん。「攻め込んでる」ってほどには感じませんね。

安田

じゃあ自発的に。

石塚

ネットで調べれば、いくらでも優秀な弁護士さんは見つかるから。

安田

そうですよね。

石塚

YouTubeでノウハウを提供してる弁護士さんもいますし。

安田

YouTubeなんて見ますか?地方の経営者さん。

石塚

地方ほどSNSの影響は強いと思います。

安田

そうなんですか。

石塚

地元以外の人と知り合う機会はどんどん増えてます。

安田

じゃあ、今の弁護士さんに不満があるわけではない?

石塚

不満があるというより、悩みごとがあるんですよ。解決の糸口を知りたくて、いろいろ相談してるうちに繋がっていく。

安田

「呼んだらすぐ来てくれる」みたいな地の利では、もうダメだと。

石塚

だってそもそもコロナで会えないじゃないですか。

安田

確かに。近くにいてもリモートですからね。

石塚

だったら「別にこの人じゃなくていいんじゃないの?」ってなりませんか。

安田

なりますね。

石塚

コロナで一気に経営者の感覚が変わっちゃったんですよ。

安田

これは弁護士さんに限らず、あらゆるところで起きる現象ですか?

石塚

じっさい起こってます。たとえば経営コンサルの世界で。

安田

コンサルって、足繁く通ってる人が多いですからね。

石塚

多かったんですけど。今はもう行けないじゃないですか。

安田

来るなって言われちゃいます。

石塚

リモートになったら選択肢が一気に広がるわけですよ。

安田

ちなみに求人の世界ではどうですか?

石塚

同じですね。私のところにも地方の方から相談が入ってきます。

安田

へえ。採用なんて地の利が大きい気がするんですけど。「地元のメディアをよく知ってる」とか。

石塚

「もはや媒体の問題じゃない」って考え始めてる経営者が増えてます。

安田

なるほど。

石塚

いままでの延長線じゃない答えを求めたときに、地元にはなかなか答えてくれる人がいない。選択肢がそもそも乏しいんですよ。地元って。

安田

「リモートでいいや」となったら、選択肢は一気に増えますもんね。

石塚

新しい選択肢を「試しやすくなった」ってことじゃないでしょうか。

安田

リモートは試しやすいですよね。わざわざ行かなくていいし、ダメならすぐ断ればいい。

石塚

そうなんですよ。ハードルがめちゃくちゃ低い。

安田

地方の弁護士さんは大変ですね。

石塚

知的付加価値の提供型ビジネスは、もう距離の差がなくなってます。

安田

情報やノウハウに距離は関係ないですもんね。

石塚

これからもっと激しくなりますよ。

安田

まだまだ、これからだと。

石塚

今はリモートでやってみたら「解決できちゃった」って人が出てきてる段階。今後は爆発的に増える。

安田

地方の仕事がなくなっていくと。

石塚

もちろん全部がそっちに行くわけではないです。自然は真空を嫌うから。

安田

そのフレーズ好きですね。

石塚

そういう法則なんですよ。どんな分野でも必ず一定のマーケットは残ります。

安田

地方は地方で生き残る人はいると。

石塚

でも「自分は生き残れる」とは思わないほうがいいです。

安田

そんなに甘くないぞってことですか。

石塚

マーケットが半分になるってことは、それだけの競争が生まれるってことですから。

安田

地方は地方で取り合いになるわけですね。

石塚

間違いなく。早く動いた人が勝ち残っていきます。

個人で出来る、採用支援。
\ 石塚本人がスキルを伝える /
石塚求人大学開講 受講生募集中
詳しくはClick

石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

感想・著者への質問はこちらから