さよなら採用ビジネス 第126回「ぬるい会社の境目」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第125回「使える人材の境目」

 第126回「ぬるい会社の境目」 


安田

“ぬるい会社”も悪くないって、言ってましたよね。

石塚

ああ、はいはい。やりがいと待遇の話ですね。

安田

「べつに両方なくていい」っていうお考えですか?

石塚

そうですね。まず「働きがい」と「働きやすさ」っていう2軸で考えたとき、働きやすさにバツがつくと短期間で辞める。

安田

働きやすさのほうが大事だってことですか?

石塚

逆に安田さんに聞きたいんですけど。「働きやすくない職場」ってどんな職場ですか。

安田

たとえば私にとってリクルート社は働きやすくはなかったですね。

石塚

それはなぜでしょう?具体的に教えてください。

安田

たとえば毎朝スローガンを唱和させられたり。“みんなで運動会を盛り上げなくちゃいけない”という社風とか。合わなかったです。

石塚

(爆笑)

安田

でも私に合わなかっただけで、他の人にはすごく合ってたみたいです。たぶん私がズレてたんでしょうね。

石塚

それはどこの会社でもそうで、合ってる人にはエクセレントカンパニーなんですよ。問題はスタイルに合ってない人にとっての働きやすさ。

安田

やっぱり「相性」が大きいと思いますけど。

石塚

相性は大きいですね。ただ働きやすさの中には「教える」ってことがあると思っていて。

安田

教える?

石塚

要するに社員の側からすると「仕事を覚える」ってこと。

安田

それが働きやすさに直結すると。

石塚

ここにある程度の時間をかけてくれる会社って、働きやすいはずなんですよ。

安田

でも仕事を教えるって普通じゃないですか。

石塚

言い方を換えるなら“すぐの結果を求めない”会社。

安田

なるほど。“ちゃんと育ててくれる”ってことですね。

石塚

そうです。時間をかけて育ててくれる。

安田

一方で石塚さんは「企業は人を育てなくなる」と言ってましたけど。矛盾しないんでしょうか。

石塚

ここは会社によって分かれるところです。

安田

育てる会社と育てない会社に分かれるってことですか?

石塚

たとえば業歴が長い「老舗」と言われる会社は、変えられる部分のほうが少ないわけですよ。

安田

まあ、そうでしょうね。

石塚

そういう会社には「急ピッチで変化を求める人材」って向かないわけです。割とゆったりした人が合う。

安田

「ゆっくり育てる環境」と「ゆっくり育てて欲しい人」がマッチすると。

石塚

おっしゃる通り。ちょっとぬるま湯なんだけどお互いにとってハッピー。

安田

なるほど。時間軸の相性がいいってことですね。

石塚

そういうことです。じっくり人を育てる余裕がある会社と、じっくり仕事を覚えてやっていきたい人と。

安田

そこの相性が合えば、ぬるま湯企業も悪くないと。

石塚

ぬるま湯でもやり続けられる強さがあるわけです。地域の中で独自のシェアを持ってて、ブランドもあって。来年すぐダメになるってこともない。

安田

日本にはそういう会社が多そうですよね。

石塚

日本は世界でもいちばん老舗企業が多いと言われてます。

安田

最近は老舗企業もつぶれたりしますけど。

石塚

もちろん100パーセント生き残れるわけじゃない。トップは常にメイン事業を定期的に入れ替えなきゃいけない。

安田

のんびり人材だけじゃダメですよね。

石塚

メイン事業にまだ優位性があって、マーケットも続いてる場合は、キャリア志向の強い社員はいらない。

安田

いらないですか?

石塚

必要ない。そういう会社にはのんびりした人がとてもマッチングする。

安田

でも長期的に見たら“一本足打法”ではしんどいわけですよね。他の事業も見つけ出さなくちゃいけない。

石塚

そうですね。

安田

そうなると“のんびり人材”だけでは難しい気もするんですけど。

石塚

100パーセント無理です。そもそも社内人材では無理なんです。

安田

社外の人材を使うってことですか?

石塚

あるいは創業家が別法人をつくって、まったく違うことをやる。

安田

別法人?

石塚

でないと、かえってメイン事業に悪影響をおよぼしてしまうので。

安田

なるほど。

石塚

継続していくのに必要な人。変革をするときに必要な人。これってまったく違うので。

安田

一緒にしたら危険だと。

石塚

メイン事業を守りながら、別法人で新しいことを仕掛けていく。それに成功してきたから老舗でいられるわけですよ。

安田

カルチャーをガラッと変えて「今日から変革企業になります」みたいなのはよくない?

石塚

全体を変えようとしても無理です。業歴が長い会社は。

安田

それをやるとかえって失敗しちゃうと。

石塚

間違いなく失敗します。

安田

今までやってきた事業に関しては、のんびり人材を入れて緩やかに育てていく。

石塚

そうそう。

安田

その間にまったく別の事業をやる。別の組織をつくるか、あるいは外部の人と組んで。

石塚

そう。安田さんみたいな人を呼ばないと。

安田

社内に「変革型の人材を増やしたい」っていう、経営者さんは多いですけど。

石塚

やめた方がいいです。

安田

うまくいってないケースが多いですよね。

石塚

うまくいったケースを聞いたことがないです。申し訳ないけど。

安田

なぜうまくいかないんですか?

石塚

切り替えられないから。業歴の長い会社が変革できる場面って3つしかない。1経営危機。2不祥事。3買収。それ以外の要因で意識を変えようなんて無理。

安田

へえ。

石塚

経営危機になると相当な無理・無茶を言っても、言うことを聞きます。「このままいったら倒産だ」ってときは、やっぱり危機バネが働くので。

安田

なるほど。

石塚

既存の社員の多くは船から下りるし、残る社員は覚悟する。

安田

背水の陣ですね。

石塚

だから、そこまでいく前に「もうひとつ事業の柱をつくりましょう」ってことです。

安田

それは「社内にいる人材だけではしんどい」ってことですね。

石塚

100パー無理です。新たな事業、あるいは事業開発だけをやる別法人をつくる。それしかないです。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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