第102回 5%の経営者だけが持つ、商売のセンスとは

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第102回 5%の経営者だけが持つ、商売のセンスとは

安田

商売における頭のよさというか、センスのよさってどういうところに出るんでしょう? 倉橋さんはどう思います?


倉橋

そうですねぇ。現実的な話をすれば、ターゲット設定のうまさ、じゃないですかね。結局ビジネスは「誰に売るか」がすべてで、それを最初にしっかり考えていないと、何をやってもズレてしまう。

安田

ふむふむ。つまり逆に言えば、「御社のターゲットは?」って聞かれて即答できないようじゃダメだと。


倉橋

そう思います。商売はまず「自分のお客さんは誰か」を一番最初に決めないと始まりませんから。ただ「安く仕入れられたから」と考えなしに始めても、誰に売るのかわかっていなければ売れない。逆にターゲットが明確なら、それに合う商品って自然と出てくるので。

安田

そういえば昔、独立した社員が海外で大量のネクタイを買い付けてきたんですよ。「たまたま激安だったから大量に買ってきた。これを日本で販売すれば大儲けだ」と。でも全く売れなかったそうです。


倉橋

僕も似たようなことやったことありますよ。格安でコーラみたいな飲料を仕入れたんですけど、全然売れずに終わっちゃいました(笑)。当時は理由がわからなかったんですが、今考えれば「ターゲットが明確じゃなかった」それに尽きますね。

安田

なるほどなぁ。言われてみればネクタイの失敗も同じ理由なんでしょう。


倉橋

そうですね。「それを欲しがる人は誰だ?」ということを真剣に考えなきゃいけない。飲食店でもカップル向けか家族向けかで雰囲気が全然違うでしょう?

安田

確かに確かに。店の立地から内装からメニュー構成から全部違ってきますもんね。ちなみに小売業でもそれは同じってことですか?


倉橋

ええ。小売でも同じことが言えます。「なんだかこの店イマイチだな」って思う店は、やっぱりターゲット設定ができてないか、甘いんですよ。「なんでこんなものがここに置いてあるの?」って思うスーパー、けっこうありますし。

安田

ああ、確かに違和感ある店、ありますもんね。そういえばワイキューブ時代に社員向けにネイルプリント機を導入したことがあるんです。1台300万円くらいしたんですけど、結局誰も使ってくれなくて(笑)。1回500円くらいかかる施術が無料になるというので、絶対喜ばれると思ったんですけど。


倉橋

それは悲しいですね(笑)。まあでも、実際女性社員がそれを望んでいなかった、つまり社内にターゲット層がいなかった、というシンプルな話だと思います。従業員も立派なターゲットですから、そこがズレてたら的外れな施策になってしまう。

安田

確かになぁ。「無料なら喜ぶだろう」と思いがちだけど、それは間違った先入観なんですよね。

倉橋

そうですね。無料でも欲しくないものとか、無料でも行きたくない場所って山ほどありますから(笑)。でもなぜか「安い=正義」みたいなバイアスがかかって、変な意思決定をしちゃうんですよね。

安田

耳が痛い経営者さんがいっぱいいそうですね(笑)。でもなぜそういう間違いをしてしまうんですかね。

倉橋

うーん、もちろんケースバイケースだと思いますけど、現実には案外「見栄」とか「お付き合い」とかそういう人間的な理由なのかもしれませんよ。例えばユニクロの店舗はゾーニングもレイアウトも、コンセプトに沿って完璧に設計されていますよね。そこには一切の「見栄」も「お付き合い」もない。

安田

は〜、確かに「コンセプト的には◯◯だけど、部長が言うからXXにしなきゃ」みたいなことはないでしょうね(笑)。まあでも、そういうことをキッチリ設計して実行している会社って、そこまで多くはないんじゃないですかね。実際私にも「激安で集客します!」なんてDMが毎日山のように届きますけど、開く気すらしないですもん。

倉橋

わかります。それこそセンスとしか言いようがないのかもしれません。でもあらためて考えると、センスがいいなと思う経営者さんってあまり多くないですよね。それこそ20人に1人くらいのような気がします。

安田

5%しかセンスはよくないと(笑)。残り95%の人は、どうやったらセンスを磨けるんでしょうね?

倉橋

どうでしょう…やっぱり「違和感に気づける感受性」が必要じゃないですかね。「なんかおかしい」と感じられるかどうか。

安田

確かにそういうセンサーって大事ですよね。「なんでこの店にこの商品が?」っていう違和感とか、「この金額なのに大人気って、他と何が違うの?」とか。でもそこに興味を持つ人が5%ぐらいしかいないということなんですかね。

倉橋

そう思います。そういう観察力があるかないかで、商売の成否が変わるので、興味を持ってる5%の経営者が生き残っていくんじゃないでしょうか。

安田

確かに。興味を持てない95%の人たちは淘汰されてしまうのかもしれませんね。「仕入れて安く売れば儲かる」っていう時代は、もう終わりを迎えていますから。

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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