第168回 何を売るかより「誰に売るか」

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第168回 何を売るかより「誰に売るか」

安田

倉橋さんがよく仰っている「何を売るかより『誰に売るか』の方が大事」という話をじっくり聞きたいんです。Xにも、誰に売るかをあまり考えずに商品を作ってしまう人が多いと書かれていましたよね。


倉橋

そうですね。多いと思います。

安田

私も商品開発をしているんですが、いつもターゲットを想定しながら作るので、そこを考えずに商品を先に作ってしまうというのが不思議で。


倉橋

ビジネスがうまくいかない一番のパターンでもあると思います。商品が先にあると、いろんな人にアプローチできてしまいますから。

安田

なるほど。誰にもアプローチできないのではなく、幅広くアプローチできてしまうのがむしろよくないと。


倉橋

ええ。若者に寄せたと思ったらお年寄りにも寄せたり、女性にも男性にも合わせたりしているうちに、最終的にすごくぼやけた商品になってしまうんです。

安田

とりあえず皆が大好きな「唐揚げ屋」を作りました、みたいな(笑)。


倉橋

そうそう(笑)。「その唐揚げ、誰が欲しがるんですか?」という話になるわけで。商品からではなく、まずターゲットを決めて、その人たちに何のニーズがあるかを考えてから商品に入った方がずっと合致しやすいんです。

安田

そうですよね。ただ、ターゲットが先なのはわかるんですけど、一方で、「高齢者の富裕層を相手にしたい」みたいな安易な発想でもうまくいくイメージが湧かないんですよ。お金を持っている人がいるから儲かりそう、では商売にならない気がして。


倉橋

それは仰るとおりだと思いますよ。自分がその領域に強みがないなら、ターゲットにするべきじゃない。「どうしてもご高齢の富裕層の方に対してビジネスをやりたい」という人もいるでしょうから、そういう場合はそこにしっかりとターゲットを定めればいい。大事なのは順番なんです。

安田

なるほど。私の場合は、まず売る人の取材をして深掘りしていくんです。「何をやってきた人か」「何が得意か」「どういう仕事なら機嫌よく続けられるか」を聞いていくと、「この人はこういう人を相手に、こういう価値を提供できるな」というのが見えてくる。ターゲットと商品価値が同時に浮かんでくる感じなんですけど、やり方としてはどうですか?


倉橋

すごく正しいと思いますよ。同時でもいいんですが、商品だけが先に来てしまうのがよくないので。「自分の強み」と「相手のニーズ」がセットで見えている状態が理想ですね。

安田

ははぁ、確かに。ちなみにターゲットを絞り込むとき、「30代男性」と言っても今はいろんな人がいますよね。年齢や性別で区切ってもあまり意味がない気がするんですが、倉橋さんはどうやって絞っているんですか?

倉橋

仮想の人物を一人、徹底的に作り込みます。例えば30代後半の4人家族なら、名前も職業もマイカーも住んでいる場所も全部決める。お父さんが何のSNSを使っていて、趣味は何で、仙台なら楽天イーグルスの応援に行く人なのかとか。

安田

そこまで細かく設定するんですね。

倉橋

ええ。で、それをイラストレーターにちゃんとビジュアルにしてもらうんです。そうすると不思議なことに、本当にその通りの人たちが来るようになるんですよ。

安田

へぇ、それはすごい。ターゲットを絵にするというのが大事なんでしょうね。今ならAIで描いた方が早い気もしますけど、あえてイラストレーターの方に頼んでいるんですか?

倉橋

そうなんです。AIに描かせたらどうもうまくいかないんですよ。どこか掴みどころがない感じがして。AIの画像ってなんとなくわかるじゃないですか。

安田

確かに。欠点があるわけじゃないのに「何か違う」とわかりますよね。いろんな情報を混ぜ合わせて作るので、「いそうだけど、どこにもいない人」になってしまうんでしょうね。

倉橋

そうそう。AIだと一人に絞っているつもりが、逆にターゲットが広がってしまうのかもしれません。一方で人間のイラストレーターは、自分が知っている誰かを具体的にイメージしながら描くからリアリティが全然違うんです。本当は写真が一番よくて、モデルさんに4人家族をやってもらうのもいいですね。

安田

なるほどなぁ。「30代男性」みたいなゾーンで絞るんじゃなくて、具体的な一人にまで落とし込まないといけないと。そこまでやると、それに近い人たちが集まってくるわけですね。

倉橋

そうです。アウトドアブランドのパタゴニアなんかもそうだと思いますよ。あそこに来るお客さんって、皆大体同じような雰囲気じゃないですか。

安田

ああ、確かに(笑)。

倉橋

あれだけ大きい会社でも明確な一人に絞り込んでターゲティングしているからこそ、あれだけ似た人たちが集まってくるんだと思います。ゾーンじゃなくて一人。それが商品開発の出発点だと思います。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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