第50回 ビジネスにおけるトレンドリーダーの役割

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国18店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第50回 ビジネスにおけるトレンドリーダーの役割

安田

前回のお話では、「トレンド」は倉橋さん自身が一通り試してみるということでした。でも、年齢とともに“頑張って”取り入れないといけなくなったと。


倉橋

そうそう。若い頃は自然に入ってくるんですけど、おじさんになってくるとね(笑)、やっぱり意識しないと入ってこなくなりますよ。

安田

わかります(笑)。「20代後半に聴いていた音楽を、その後の人生でもずっと聴き続ける人が多い」って言っている人がいましたけど、本当にそうだなと。


倉橋
そうそう。どこかでパタッと懐かしい曲ばかり聴くようになるんですよね。
安田
特に今は変化の速い時代ですから、トレンドを追うだけで大変です。そしてその能力は、どうしたって若い子たちにはかないっこない。

倉橋

確かに。でもしょうがないですよね。若い頃って何でもかんでも欲しいし興味があるからいいんだけど、この年齢になると正直、買いたいものなんて何もなくなっちゃう(笑)。つまり基本的に、トレンドを追うこと自体にモチベーションが働かないんですよ。

安田

ですよね(笑)。たまに美味しいものが食べられれば充分、くらいで。


倉橋

そうそう! 食べ物に関する買い物はまだ積極的にしてるかもしれない。でも、「車が欲しい」とか「時計が欲しい」っていう気持ちは本当になくて。とはいえ購買を促す商売をやっている手前、「お客様の購買に対するエンジンをどうかけるのか」っていう部分は常に考えていないといけないんですけど。

安田
ははぁ、なるほど。その気持ちを身をもって理解するために、倉橋さん自身もいろいろと試しているんでしょうね。

倉橋

そうですね。まぁ、職業柄やらないとマズいなという感じです。

安田

ああ、確かに「マズい」って感覚ありますよね。私もコロナ以来、仕事はほとんどオンラインで完結するようになっているんですが、そうなったらなったで、Webカメラとかマイクとかの品質も重要になる。つまりそっち方面の情報を知らないのはマズいという感覚になるわけです。


倉橋
安田さんはポッドキャスト番組もやられてますし、機材が「仕事道具」なわけですもんね。そういった事情に精通していることが、店舗ビジネスで言う最低限の身だしなみというか、「清潔感があること」みたいなものなのかも。
安田
ああ、まさに「身だしなみ」という感じです。実際カメラやマイクを変えるだけで、相手に与える印象もかなり変わりますし。

倉橋
そうでしょうね。でもその辺の設備系ってけっこうな値段しませんか?
安田

そうなんですよ。マイクなんてちょっといいものを買おうとすると4万円くらいするんです。そこまでしなくても……と高を括ってたんですけど、若い人は他を削ってでもそういうところにお金をかけているんですよね。


倉橋
ははぁ、なるほど。それだけの投資をする価値があると。
安田

そうなんだと思います。だから私も倉橋さんのように、まずは試してみるということが重要なのかもしれません。いや、そうやって「トレンドを知る」ことで満足せず、「自分がトレンドを作る」くらいの気持ちが必要なんでしょうね。

倉橋
ああ、なるほど。ゼロイチで新しい価値を作り出すということですよね。それができる人は本当にすごいと思うんですが、僕自身はどちらかというと「何かと何かをくっつけて深掘りする」ようなやり方の方が好きなんです。
安田

いやいや、万代さんの「リユース×アミューズメント」という業態もゼロイチだと思いますよ。ちょっとターゲットをずらすとか、見せ方を変えるとかするだけで全く違う市場が生まれるわけで。

倉橋

なるほど。確かにそう言われると、ゼロイチの要素がないわけでもないかもしれません。

安田

そうですよ。倉橋さんの成功を見て、真似する人がたくさん出てくると思いますよ。

倉橋
そう言ってもらえるとすごく嬉しいです(笑)。でも僕は「自分がトレンド発信している」って感覚はあんまりないんですよね。店舗づくりにしても、ドン・キホーテやヴィレッジヴァンガードの売り場の作り方を真似したり、他を参考にしていることも多いですし。
安田

そういうものは順番に回ってきてるんじゃないですかね。ドン・キホーテやヴィレッジヴァンガードも、どこの真似もしていないかというと、きっとどこかを参考にしているわけで。

倉橋
ああ、なるほど。でももし、本当に誰かが万代の店作りを参考にしてくれて、それで成功してくれているなら、すごく嬉しいなぁ。
安田

既にそうなってると思いますけどね。倉橋さん自身はトレンドリーダーになろうと思ってやっているわけじゃないけど、実際フォロワーがいるということは、リーダー的な役割を自然と担っているとも言えるわけで。

倉橋
そうですかねぇ(笑)。でも僕からすれば、安田さんこそトレンドリーダーじゃないかと思いますよ。
安田

確かに私はそこに重きを置いているかもしれません。200年とか300年とか経ったときに、「昔こんなことを考えていた人がいたんだ」と驚かれたいというか。…変わってますかね?

倉橋
いや、すごいですね。まるでビジネス版のピカソやゴッホのような(笑)。
安田

ああ、確かに仰るように、生きてる間は全く評価されなくて、死後に理解されるようなものに憧れます。それでなおかつ今現在も評価されていたらベストなんでしょうけどね(笑)。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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