第56回 売れる商品は「商品力が3割で売り方が7割」

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第56回 売れる商品は「商品力が3割で売り方が7割」

安田

今回はこの対談のタイトルである「売れぬなら、売ってみせようその商品」に触れてみたいと思います。世の中って実は「売れないもの」ってないんじゃないかと最近思うんです。


倉橋

ほう。それはどんなものでも売り方次第で売れるということですか?

安田

極論を言えばそうですね。世界中で1人でも欲しい人がいればそれは商品になるわけですから。


倉橋
ああ、なるほど。確かに最近では、「メルカリでトイレットペーパーの芯が売れる」なんていう話もありますもんね(笑)。
安田
そうそう(笑)。ほとんどの人にとってはゴミでしかないんだけど、学校の工作なんかで「トイレットペーパーの芯10本持ってきて」と言われた人にとっては立派な商品になる。そう考えると世の中「売ろうと思えば売れるもの」だらけのような気もして。

倉橋

それは確かにそうかもしれませんね。ただ私の捉え方は少し違っていて、「売れたもの」か「売れてないもの」という分け方をしているんです。

安田

「これから売れるかどうか」ではなく、「既に売れたかどうか」で見ているってことですか?


倉橋

仰るとおりです。その観点でいうと、むしろ世の中は「売れてないもの」がほとんどなんじゃないかと感じます。世の中のほとんどのものが売れていなくて、売れたものだけがずっと売れ続けている。

安田
ははぁ、なるほど。リユース業を長くやっているからこその視点ですね。

倉橋

そうかもしれません。だからリユース商品ってマーケティング的にすごく優秀な商材と言えるんですよ。

安田

確かにリユースって「誰かが1回は買っているもの」ですもんね。最低でも過去1回は売れた実績があるわけで、次はその商品のリピーターを作ればいいと。


倉橋
仰るとおりです。だから商材として扱うなら、「売れてないもの」よりも「売れているもの」を選んだほうがいいというのは前提としてあると思います。
安田
倉橋さんがやっているビジネスがまさにそうですよね。でも売れてない商品が全部ダメかというと、売り方さえよければ売れるものもあるんじゃないかと思うんです。有名なところだと、新潟の燕三条で作られた刻み海苔用のハサミとか。

倉橋
ああ、「刻み海苔用ハサミ」としては全然売れなかったけど、「手動シュレッダー」として売りだしたら爆発的に売れたってやつですよね。
安田

そうですそうです。そんなふうに、売れない商品も工夫によっては売れる商品に変えることは可能なんじゃないのかなと。


倉橋
それはもちろん可能だと思います。顧客がその商品を欲しくなるような動線をしっかり作ればいいということなので。
安田

例えば実家の文房具店を継いだとして、今どきまちの文房具屋さんって集客するのもなかなか大変ですよね。でも仮に「これから10年はこの文房具屋で食べていく」という道しか選べないとなったら、どんなお店を作ります?

倉橋
それはなかなか難しいお題ですね。でも先日ちょうど文房具屋さんの友人と話したところなので、イメージしやすいです(笑)。
安田

へぇ、それはタイムリーですね(笑)。

倉橋

ええ。商品を販売する方法って、実店舗やイベント、ネット販売などいくつかあるんですけど、まずは販売方法を変えていくことが生き残るために必要なことかなと思います。

安田

ああ、確かに。アスクルなんてまさにネット販売で成功した例ですよね。カタログを置いて「電話1本で明日届けます」としただけで、あれだけ大きな文房具屋になった。そういう意味では文房具が売れないわけではなくて、売り方の工夫が足りないと言えますよね。

倉橋
そうですね。昨日までと同じ商品でお店を繁盛させようと思ったら、お店の前に立って声を張り上げてもダメで。やっぱり動線を新しく作ることが大事なんです。
安田

そうですよね。そういえば先日、ある化粧水をヒットさせた社長さんにお会いしたんです。その化粧水は元々あったものらしいんですけど、すごくいい商品なのに売れていなかった。それを自分たちで買い取ってコンセプトと名前を作り変えて、売り方を変えたら爆発的に売れたと。

倉橋
そういう可能性のある商品はたくさんあるでしょうね。すごくこだわって作られていて、商品としてはとてもいいものなのに売れていない、というような。
安田

売り方が下手な人が多いんですよね。例えばアーティストが自分の作品を売るとか、フリーランスの人が自分で書いた文章を売る場合も、売り方の工夫が足りてないなぁと。せっかく才能があっても、売れなければやっぱり埋もれていってしまうわけで。

倉橋
本当にそうですね。「売れる商品にするコツ」はずっと研究し続けたいテーマです。それこそiPhoneのように爆発的に売れるようにできたらいいですよね。
安田

そうですよね。もしかすると汎用性のある1つの答えがあるわけじゃないのかもしれませんね。商品やターゲットによってそれぞれ違うというか。

倉橋
そう思います。それがビジネスのおもしろいところでもありますよね。
安田

動線、つまり誰かの心に「欲しい」という火をつけられたかどうかということですよね。iPhoneもスティーブジョブズが売り方まで考えてプレゼンをして、大衆に欲しいと思わせたわけで。

倉橋
どういう商品としてプロモーションするかが大事ですよね。プロモーションが7割くらいでもいいかもしれない。
安田

うんうん。商品力が3で、売り方が7くらいですよね。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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