“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。
第58回 「ちょっとそこまで」の距離感に見る地域差
倉橋さんが「ちょっとそこまでの距離感が地域によって異なる」とXでポストされてましたよね。私自身はBtoCのビジネスってやったことがないし、実店舗を出すことも考えたことがないので、すごくおもしろいなと思いまして。
店舗ビジネスをやる上では、すごく重要な感覚だと思いますね。ターゲットとなるお客様から「気軽に行けるお店」だと感じてもらえるかが大事なので。
なるほど。車なのか徒歩なのか、自宅の近くなのか職場の近くなのか、いずれにせよ「ちょっと寄ってみよう」と思える距離感をつかむことが大事だと。
まさにその「ちょっと」の感覚がものすごく大事で。万代は病院のような「必ず行かなければいけない場所」ではないので、たくさんの候補がある中から選んでもらう必要があるんです。
そうか。まずはその候補に入らないといけないわけですね。
そうなんです。上位3位には必ず入るように意識しています。
なるほどなぁ。ちなみにポストには「地域によって異なる」とありましたけど、例えば東京の都心に住んでる人と北海道に住んでる人では、「ちょっとそこまで」の距離がだいぶ違うということですよね。
そもそも移動手段が違いますからね。東京は徒歩や電車が多いですけど、北海道の人は車移動がほとんどです。車の所持率も高くて、18歳以上なら1人1台持っているというくらい。
東京だと道も狭いし混んでるしで逆に不便だったりしますけど、北海道だと車がないと生活できないですもんね。
そうそう。そのぶん都心に比べて郊外型の店舗も受け入れられやすいんです。
車で郊外まで行くことに抵抗がないんでしょうね。北海道で「すぐ近くにおいしいレストランがあるから」と言われても、都内の感覚だと全然すぐじゃなかった、なんてこともありそうですよね(笑)。
あるあるですね(笑)。隣のちょっと大きな街に行くだけでも、平気で2時間くらいかかりますから。
そんなにかかるんですね。東京から横浜なんて30分で着いちゃいますよ。
同じ「ちょっと隣町まで行こう」という場合も、実際にはそれだけ距離が違うわけです。
なるほどなぁ。そういう意味では、会社に出勤して昼食を食べに行く場合と、プライベートで食事に行く場合も距離感が違いますよね。
違いますね。仕事の合間だったらさすがに北海道でも職場の近くになるので。ただそれもリモートワークが増えたことによって変化しています。以前は大きなオフィス街があって、その近くに飲食店や美容室があったりと発展していた。でもコロナ以降、そういう場所の商業ビルには空室が多くなってますからね。
変化に合わせて出店する地域を変えているっていうことなんですかね。
そうでしょうね。住宅街の近くに移動したりしているんじゃないかな。
まぁ確かに、家で仕事をしていたら、自宅の近くの店にしか行かなくなりますもんね。わざわざオフィス街まで出ていく理由がない。
そうそう。だから店舗ビジネスをやる時には、「お客様が普段どういう距離感で行動をしているのか」をイメージすることが大事なんです。これは「看板をどこに出すか」という話にも繋がってきます。
ははぁ、確かに道路を走っていると「マクドナルドまであと6㎞」という看板があったりします。
そうそう。それを見ると、あと15分か20分くらい行った先にマクドナルドがあるんだな、と認知できるわけです。
これが「マクドナルドまであと60㎞」みたいな看板を出しても意味がないっていうことですよね。そんな遠くのマクドナルドを案内されても……と(笑)。
都内だったらそうなんですけど、北海道だとそのくらいの看板があったりするんですよ。「イオンまであと100㎞」とかね。
へぇ! 北海道ではそんな遠くのイオンまで案内されるんですか。
北海道の人たちは普段から長い距離を走るので、そのくらいは移動範囲なんです。
そうか。逆に10㎞圏内だと行ける場所が限られてしまうわけですね。ということは、北海道の人にとっては「車で1時間かけてご飯食べに行く」というのも普通なんですか。
全然特別なことではないでしょうね。東北でも、仙台から1時間かけて山形までそばを食べに行く、というのもよくある話なので。
なるほどなぁ。万代さんのお店も、東北か北海道かでターゲットの範囲が変わってきますよね。北海道の方がより遠いところまで看板を出したりするわけですか。
そうですね。東北では半径7.5㎞の範囲で、北海道は20㎞くらいの範囲に出してます。
その範囲がその地域の人にとっての「すぐそこ」の距離っていうことですよね。そのくらいの距離感だったらお店に来てもらえると。
仰るとおりです。生活必需品を扱っているような「行かなければいけない」店ではないので、「ちょっと行きたいな」と思っていただけるようなお店にしていきたいですね。
対談している二人
倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表
株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。