第65回 「編集力」の高め方

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第65回 「編集力」の高め方

安田

ビジネスには「編集力」が重要だということですが、どうやったら高められるものなんでしょう。倉橋さんご自身は編集力を高めるために何か実践していることはありますか?


倉橋

特別なことをしているわけではなく、日々の仕事の中で自然に身に付いている感じですね。そもそも万代では売り場を作ることを「編集」と呼んでいるんです。商品をただ並べるだけではお客様には響かないので。

安田

編集とは「ちょうどいい塩梅で提供すること」ですもんね。売り場づくりはまさにそれが求められる仕事だと。


倉橋

そうですそうです。さらに言えば、一度作って終わりじゃない。お客様の反応を見ながら並べ方を変えたり、範囲を拡大したりする。こういった調整も編集の一部ですよね。

安田

確かにそうですね。そう考えると、例えば店舗を持たない税理士さんやコピーライターさんなどのフリーランスは、ネット上の商品ページが「売り場」です。その調整はずっと続けていくべきだと。


倉橋

ええ。もちろん全く反応がない場合は、調整レベルではなく根本的な作り変えが必要ですけどね。でもある程度の反応があるなら、編集が効果的だと思います。コンテンツを増やすとか、アピールを強くするとか、価格帯を変えるとか。

安田

お客さんの反応を見ながら少しずつアレンジしていくわけですね。ちなみに倉橋さんは、旅行中にも新しい商売のアイデアを思いつくって仰っていたじゃないですか。それも広義の「編集力」と言える気がするんですけど、どうですか?


倉橋

ああ、確かにそうですね。目に入ったものをそのまま受け取るんじゃなくて、「これをビジネスに活かすには?」という編集的視点で見てしまいます。まぁこれは職業病と言うか、単に私の癖でもあるんですけど(笑)。

安田

なるほどなぁ(笑)。でも実際、そういう視点はすごく大事ですよね。一見全く関係ない事柄を組み合わせることで、新しい価値を生み出せたりするわけで。でも、かといって全員がそういう視点を持てるわけじゃない。倉橋さんはどうやって身につけたんですか?


倉橋

うーん、どうなんでしょう。正直よくわからないです(笑)。常にアンテナを張っておくことで、少しずつ磨かれていくものだという気がしますね。

安田

確かにそうでしょうね。一朝一夕で身につくものではないんでしょう。でも一度そういう能力を身につけてしまえば、収入も増えるし、仕事の幅ももっと広がると思うんです。


倉橋

仰るとおりだと思いますね。近代に入ってからのビジネスって、ゼロから何かを生み出すというより、既存のものを編集して新しい形にすることがほとんどじゃないですか。例えばスーパーマーケットも、元々は八百屋や肉屋を合わせた業態なわけで。

安田

確かにそうですね。メルカリのようなビジネスモデルも、フリーマーケットとスマホアプリの融合ですし。


倉橋

そうそう。既存の要素を組み合わせることで新しいビジネスが生まれるわけです。そのためには常に好奇心旺盛でいることが大事だと思います。

安田

ははぁ、なるほど。確かに好奇心が強い人は、常に新しいものを探しているイメージです。もっともそれは、先ほど倉橋さんが言っていたように、「よし、新しいものを探すぞ」って考えてやってるわけじゃなさそうですけど(笑)。

倉橋

もとからそういうタイプなんでしょうね。僕自身、毎日が発見の連続でまったく飽きることがないです(笑)。

安田

いやぁ、楽しそうですねぇ(笑)。

倉橋

おかげさまで(笑)。でも実際、「誰も考えつかなかったビジネスを始めるぞ!」みたいに大きなことじゃなくても、「売上を伸ばしたい」とか「仕事の能力を上げたい」という身近な課題にもその感覚は活きると思いますよ。

安田

確かにそうですよね。じゃあ、倉橋さんほど好奇心旺盛じゃない人が編集力を身につけるには、どういうことをやればいいと思いますか。

倉橋

とにかく意識的に「観察する」ことでしょうね。周りの人がやっていることを注意深く見てみるんです。例えば回転寿司でお客さんが何皿くらい食べているのかとか(笑)。

安田

ああ、なるほど(笑)。よりビジネス的な話で言えば、コンビニとかも勉強になりますよね。レジ脇にさりげなく乾電池とかが置かれていて、「そうだ、そろそろ買おうと思っていたんだ」とついつい手を伸ばしてしまう。

倉橋

そうそう。レジ周りはその会社がマーケティングを駆使して選んだ商品が並んでますから、要チェックですよ。

安田

同業種の商売を参考にするのは多くの経営者がやっていると思うんです。でも自分の業界外からヒントを得ようと思う人は少ない。回転寿司にしてもスーパーマーケットにしても、万代さんにとっては異業種ですよね。そこにもアンテナを張っているのがすごいなと。

倉橋

僕はそれが趣味みたいなところがありますからね(笑)。

安田

そうでした(笑)。でも実際それだけ商売が好きってことなんでしょうね。だから自然とそういう視点が持てる。

倉橋

そうだと思います。もっとも、僕にとってはマーケティングのゲームを楽しんでるような感覚なので(笑)。「ビジネスそのものが楽しめる人」は編集力も自然と高まるのかもしれませんね。

安田

なるほどなぁ。倉橋さんにとっては、仕事とプライベートの垣根がないんでしょうね。

倉橋

そうかもしれません。僕自身は旅行に行っても、旅館の価格やサービス、PRの仕組みなどをつい考えてしまいますから。なかなか純粋にリラックスするというより、ビジネスの視点で楽しんでしまう。そこまでいくと少数派かもしれませんが(笑)。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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