“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。
第77回 万代史上最高額仕入れの舞台裏
万代さんの史上最高額の仕入れは8000万円のバッグだったそうですね。時期はいつごろだったんですか?
コロナの前くらいだったと思うので、5~6年前ですかね。業態も今のようなアミューズメントに舵を切る前で、リユース中心でやっていた時代です。
なるほど。それにしても8000万円ってすごい金額ですけど、バッグ1個でその値段だったんですか?
いえ、バッグ類と貴金属を合わせたトータルの金額です。たしか15点ほどのバッグに加えて、貴金属が数点あったと思います。
ああ、なるほど。「1回の買取金額で8000万円」だったということですね。それにしても高価なバッグをいっぺんに売りに出すなんて、相当なコレクターか、すごい資産家の方じゃないとできませんよね。
その方はまさに資産家でしたね。ご自身のコレクションを整理して、今どのくらいの価値になっているか知りたいという動機もあったようで。実はバッグだけでなく、骨董やワイン、絵画、そして高級な絨毯なども手放す意向だったとか。
ふ〜む。手持ちのコレクションを査定に出して、いい金額なら売却しつつ、そのお金で新たに欲しいものを手に入れる、ということなんですかね。よくある断捨離とは桁違いですけど(笑)。
そうですね(笑)。特に当時は、その方がお持ちのアイテムが相場的に高値で取引されている時期でしたから、売り時という判断もあったんだと思います。
なるほどなぁ。でも高値で仕入れたからといって、そのまますぐ売れるかはわかりませんよね。売れなければ大損しちゃうわけじゃないですか。
そこが難しいところで。だからこそ、リユース業では「出口を確保しておく」ことがとても大事なんです。高額なものほど買う人が限られますから、事前に「この商品なら欲しい」というお客様をつかんでおく必要があるわけです。
なるほど〜。高級バッグをどっさり仕入れてから「さて、買い手を探そう」では遅すぎると。…ということは最初から「あの人が買いそうだ」という目星がついているわけですか?
そういうことです。もちろん万代としては、仕入れた商品を店頭に並べたりSNSでPRしたりして集客することも大切なんですが、数百万円のバーキンのようなものはクローズドで紹介したりします。
ははぁ、なるほど。「このぐらいで買ってもらえそうだ」というのがわかっていれば、仕入れの段階でも価格提示もしやすそうです。
そうなんです。例えばその方が「500万円までなら買います」と言っているなら、極端な話、仕入れ価格は499万円まで頑張れるわけですよ。持ち主に売ってもらえれなければ利益はゼロなので、そういうギリギリの交渉もしたりしますね。
うーむ、なるほど。ちなみに8000万円で仕入れた分は、どんな方が買われたんですか?
4名くらいは直接個人の方にご購入いただきました。あとは万代で主催しているオークションがあるんですが、そこでも販売して。
へぇ、オークションで販売することもあるんですね。
ええ。全ての商品で買い手が決まっているわけではないので、その分はオークションにかけて販売します。進行役も社内スタッフなので、「この商品はこれくらいの金額で仕入れたから、それ以上で落札してほしい」といった要望をあらかじめ伝えておけるので、リスクを抑えることができるんです。
なるほど! ちなみにトータルではちゃんと黒字になったんですか?
黒字にはなりました。とはいえ、人気の高いアイテムばかりだった分、仕入れ価格もかなり高額でしたし、相場を熟知しているお客様も多いので、そこまで大きな利益にはなりませんでしたけどね。
ああ、そうか。高額で仕入れたからといって、必ず儲けも大きくなるわけじゃないんですね。
そうですね。実際、利益率でいうと1割程度が限界でした。高額な商品ほど売れ残るリスクも大きいですし、その分ドキドキする場面は多いですよね。
そうでしょうねぇ。ハイリスク・ハイリターンの世界であることは間違いなさそうです。とはいえ、そんな高額な買い取りはなかなかできないでしょうし、一度は挑戦してみたい気もします(笑)。
確かに、いい経験にはなりましたね(笑)。今でも仙台市内では出張買取を続けているんですが、長くやっていると本当にいろいろと面白い品物に出会えますよ。
それは楽しみですね。ぜひまたお話を聞かせてください。
対談している二人
倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表
株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。