こんにちは。円道一樹です。大久保圭太の財務アタマを鍛えるラジオ~マネトレ~。大久保先生、よろしくお願いしまーす。
お願いしまーす。
さあ、ということで、今週は前回のつづきということで……なんでしたっけ?
なんだっけ?
MAにおけるデューデリデン…ジッ、言えないんだよ。
(笑)
(笑)。デューデリジェンスのお話をしていきたいと思うんですが、簡単におさらいを。MAの大きな流れなんですけども、まず、どういう順番でいけばいいのかな、いわゆるFAがそれぞれ付くわけですよね、売り手・買い手に。
うんうん。
で、そこから条件整理が始まって、企業価値とかスキームの整理とかをしていったあとに、ここで基本合意、いわゆる結婚でいうお見合いに近いんですか?
トップ面談ね。
トップ面談?
トップ面談があって。
まさにお見合いですよね。
そうね、うん。
トップ面談があって、ある程度お互いが、条件も、なんとなく大枠がわかってるなかで、「じゃあ、あなたのとこに売ろう」「買おう」という話になると。そして、ここからかなり具体的に調査が入り、専門家も入るのがDD=デューデリジェンス。情報開示とか資金調達とか、いろんな話をぜんぶ整理していくというのが終わって、「じゃあ」ってなったら、こんどはここでデリバリーといわれる最終契約にいくということになっていく、この「お見合い」のあとの、がっつりと調査をしていくデューデリジェンスにおいて、200項目ぐらいの質問リストが売り手側のほうに来て、「こんなに俺の会社のこと説明しなきゃいけないの!?」と。中小からすると、「だいたいそんなの知らないし」っていうのもいっぱいあったりして、結構ごちゃごちゃと大変になっていくぞという話が前回だったんですが。
そうね、うん。
こんどは、買い手側の目線においてどういう実態があるのか、という話を今日は教えていただきたいなと思っております。
買い手側を疑ってるわけじゃないけど、やっぱ、専門家は専門家の観点で疑っていくわけですよ。
はいはい。
だから、買い手が疑ってるわけじゃなくて、僕らは疑っていきますよ。
なるほどね。そうか、トップが疑ってるというよりも、付いてるブレーンたちが?
そう。トップはなにもないほうがいいし、なんかあるなら価額下げようかなとか。逆に、普通はどうかわかんないけど、僕らがやるとしたら、買い手の目的というか、今回やることによってどういう効果があって、なにがいちばんビジネス上、気になっててとか、そこの背景を理解しないと、聞くポイントが定まらない。まあ、変わんないかもしれないけど、ただ、ちょっとした情報とかあんのよ。たとえば現場行ったときに、ぜんぜん財務には関係ないんだけど、めちゃめちゃ優秀なナンバー2がいたとして、「こいつ、社長いなくなったら辞めんじゃねーかな」みたいなのがちょっとあったりするじゃん。
ああ、なるほどなるほど。
そのときにさ、フラッと聞けるじゃん。「でも、社長いなくなったらさみしいよねえ」とか言って、「そうっすよねえ」みたいなのがちょっとさ、昔だったらタバコ吸いながらとかさ、そういうので結構ポロッて出てきたりとかするのは、まあ、報告書には載んないけど……
大事な定性情報です。
結構そうなんだよね。雰囲気とかのさ、「優秀な人材がいるのがいいんだよね」って言ってたら、そうじゃないかもしれないよね、みたいな。
なるほど。
それは確定情報じゃないから報告書には書かないし、わかんないけど。ただ、あくまで買い手の支援だから。そうすると、「買ったあとどうなんの?」っていうところの、PMIで業務フローを整理したりとか、会計を統合したりとか、そういうのは業務としてあるけど、それ以前に「その会社の成長戦略と合ってんのか」みたいなところは、やっぱり気になるところかなあと思うよね。
さらっとPMIが出ちゃいましたけど、PMIって略語を知らないのですが、買ったあとの話ですよね。
そうそうそう。
これ、なんの略?
買ったあとに整えるというか。
ポスト・マージャー・イン…テ…グレ…ション。
(笑)
あの……いま、編集してカットしたいなと思いましたが(笑)
いや、大丈夫です(笑)
そういう略ですね。
そうね。えーと、PMIは作業的な部分をいうことが多い、作業というか統合していくプロセスをいうことが多いけど、なにが欲しくて買うのか、それが本当にあんのかっていうのを見に行くのが、たぶん結構本質的な問題だと思うんだよね。
ああ。
それは先方には言わないけど、先方から見ると表面的に、とはいえ財務だったり法務は、ざらっと全体はもちろん確認していかなきゃいけないから、財務だと資産の実在性、決算書を粉飾してないかだね、まずいちばんは。
なかなかここの見極めって、仮に粉飾をされちゃってると……
でもね、粉飾って思うほど簡単じゃないのよ。だから、粉飾は割と見抜けちゃうよね。ないんだもん。ないか、負債を計上してないかだから。
実態がないか、計上してないか?
そう、計上してないか。実態があるかどうかは、たとえば売掛金だったら、結局、その時点の実態じゃなく、ちょっと前だったりするわけじゃん、基準日っていうのをつくるから。そうすると、たとえば、8末を基準にしたら、9月の末には入金があるわけじゃん。
うんうん。
で、なかったら「うそじゃん」っていうのは、あとからなら追えちゃうから、そういうのを確認したりとか。あとは、本当に物があるかないかとか。
うんうんうん。
現場行って……まあ、現場で資産確認するの結構大変だけど、まあ、どんな感じで置いてあるかとかによって、ちゃんと価値あるもんなのか、あと、遊休資産とか、工場で明らかに使ってねーやつとかあんな、みたいなのがあったりするのを見て、そのへんはちょっと減額したりとか。
なるほど。
あと、逆に負債は、計上されてないのに払ってるとかね。決算で載ってないのに大きい払いがあったら、「これ、なんか漏れてんじゃねーの」みたいなのは見抜くっていう、財務の実在性。それによってP/Lも、もちろん変わってくるんで、そこで収益性が修正されるというところかなあと。あと、在庫とかか。資産が大量にあったりとかね。
基本的に財務、会計のところは当然見ますが、それに付随する、粉飾的な疑いも当然かけながらの実態調査になると。で、もっと踏み込むと、PMIを想定すると、「人」の話みたいなのも。
そうね。えーと、人は、財務だと未払い残業とか、そっちにはなるんだけど、現場に行く理由として、やる人の話だからわかんないけど、俺らがやってんのは、やっぱ向こうの経営者を見たいよね。誠実に対応してくれてるかどうかとか、「どういう人だ」みたいな。
ほおほおほお。
やる側としたら……まあ、向こうは緊張してるわけですよ。調査されるから嫌じゃん、「なに見られんだ?」みたいな感じが。
あ~。
だから、ここ、営業力がすごいいると思ってて。
なるほど。
ただ行ってただ聞き出すと、なんか……
嫌な……
こないだも任せたら、うちのがさ、いきなり「去年とおととし売上さがってるんですけど、なんでですか?」って聞き出してさ、「おまえ、そんな嫌なこといま聞くなよ、はじめに。このクソガキ」と思って(笑)。それ、あとでそっと聞けよ。しかもコロナだろ、みたいなさ(笑)。叱ったんだけど。
なるほど。別の話ですね、コミュニケーションの話ですね、そこは。
はじめに心を開かせ……心を開くまでいかないけど、「ああ、こいつらに話しても大丈夫だな」みたいな雰囲気づくりとかっていうのは、結構なかなかね、大変なところで。
うん。
専門家はあんまやんないかもしれないけど、結構俺らは大事にしてて。そしたら社長の本音とか結構出てくるから。そうすると意外にさ、たとえば「人もとれねーし、ここから先やっても未来ないんだよね」みたいなことをポロッと言ったりする人も(笑)。そしたらさ、「買い手がそれ手当てできんの?」っていう話をこっちが持っていけるわけじゃん。
はいはいはい。
「うちは採用力があって」とか、「だから、そこができないのはできますよ」だったら買うべきだけど、そうじゃなくて、また「とらばーゆ」に載せてみたいな、同じことやったら絶対来ないわけだから。
うん。
給料上げれば来るっていうんなら「上げた試算できますか?」って話だし、収益の改善をどうするかみたいな話。だから、結構ビジネスモデル寄りの話をはじめの目的のとき……要は、シナジーがあるか、さらに伸ばせるかってところだから、そこのポイントは、財務のヒアリングの項目に入ってないところでも聞くよね。「うまくいっているポイントはなんですか?」みたいなところとか。
経営とか事業そのものの、ある程度、判断ですよね、そこって。
事業デューデリまで入れるコストがなかったり、特に事業デューデリやる専門家って、ほんとに個のパワーだよね。
ああ。
・・・後半へ続く・・・