【大手の作法/046】有給休暇の使い方

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法: 有給休暇の使い方

「若手の離職が増え続けているのです。。」と大手製造現場の管理部門から相談いただいたのは3年前。

夏でも冬でもどんな天候だろうが365日空の下での業務を担っている過酷な労働現場に足を運び、体感するところから始めました。

ベテラン、中堅、若手と様々な方に話を伺うと「なんとなくだけど、この仕事が嫌いじゃない」という方がほとんど。

ぶっきらぼうだが真剣に話す姿に、人間味を感じ、引き込まれていったことを思い出します。

働く環境や仕事の仕組みの改善、他部署との関わりを増やすなど、できることを積み上げていますが、幸いなことにプロジェクト開始以降、離職増を防げているのです。

とは言え。人の問題ですので「これをやり続ければ良い」などという正解があるワケでもなく「実践と見直し」を繰り返しています。

先日のこと。管理部門の方々との打合せに訪問すると、S課長が浮かない表情で「はぁー」と、深いため息をつきながら会議室に入って来たのです。

近況共有をいただくことが目的でしたので、「若手の退職が加速し出したのか、、」と一瞬不安がよぎりました。。

すると、Sさん。
「野球部が県大会の決勝で負けたんですよ」
「いやぁ、今年は日本一目指していたんですけど、これまで名前も聞かなかった相手に負けちゃいました。。」

と、また大きなため息。。

東京ドームでの都市対抗野球に出場できないことを嘆いていらっしゃったのです。

聞くと、離職防止プロジェクトで管理部門があの手この手と忙しく取り組んでいる中、有給休暇を取って応援に足を運んできたのだとか。

肩の力が抜けた高松は少しイジワルに「Sさん、この忙しい時期によく仕事抜けられましたね?」と投げましたが、

「サラリーマンっていうのは、急に自分がいなくなっても平気なようにしておかなければいけません。有給休暇なんて好きに取得すれば良いんですよ。」

とSさんはカッコよくお答えくださいました。

「でも、、みんなには野球のこと、言わないでくださいね」の言葉も添えられた、その直後。

会議室には「いやぁ、最近バタバタしすぎですよ」と口々に入室する方々が続き、Sさんはそそくさとホワイドボードやら資料やらを準備しておりました。

簡単に、当たり前に有給休暇がとれるような職場になれば、定着率も向上するのかもしれませんね。。笑

 


高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

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