第215回 上司からの手紙(表現の不自由)

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/上司からの手紙(表現の不自由)

企業研修に携わっていますと、「上司からの手紙」なる取組みを実践する企業や組織に出会うことが少なくありません。

「手紙」というと大袈裟ですが、

・日頃、感謝していること
・1年間で成長したこと
・今後、挑戦してほしいこと
・今後、期待していること

など、部下に対しての「エールや御礼」などを1枚のシートにまとめたりしたものを、部下たちが参加する研修中に、本人に共有するのですが、「サプライズ的」に配布する企業もありますので、

手に取った受講生が、

「え! ◯◯さん、こんなん書いてくれたんや」「△△さん、いつも頼りになるんですよね」「♢♢さん、意外と見てくれてたんやな」など照れくさそうにしながらも、書かれた内容をじっくりと黙読し、笑顔になったり、真顔になったり、時に受講生同士で見せあったりしながら、中には涙を流す姿に出会うこともあります。

そんな「上司からの手紙」ですが、人材育成部門から、現場の上司に連絡を入れ、「部下の研修」までに事前回収する流れを取っているのです。

ところで、先日。

某大手さん、「新入社員フォロー研修」に同席した時のこと。そこでも「上司からの手紙」が配布される機会に出会いました。

受講生の手元に渡った手紙を拝見しますと、ほとんどが「ギッシリ、ビッシリ」とシートの隅々までを活用して記載されているのです。

実は、この手紙の内容で、その「組織の状況」が掴めたりもします。

今後、どんなことを期待しているのかが「明確にわかる」だけでなく、「思いや人の温もり」が感じられる手紙、と「具体性や配慮」にも欠け、いかにも「書けといわれたから書いた」といわんばかりの内容であったり、複数の部下が参加する場合に、「ほとんど同じ文面」である手紙。。

それぞれの上司がマネジメントする組織・職場では、「異なるムードや成果」がもたらされるであろうことは、想像しやすいでしょう。

ところで、先の某大手さんですが、

「どうですか。みんなビッシリと書いてあるでしょ?」

「しょうもない内容書いている上司が多かったんで、半分以上、書き直しさせたったんですわ」

と、人事部長さんが、ニンマリと話します。

「『頑張ってプロ野球選手になってくれよ!』なんて書いてる上司もおったから、『会社辞めさせて、どうするねん!書き直せや!』って説教したったんですわ」

「ガハハー」と笑い飛ばしておりましたが、

手紙を手にした受講生たちの顔を見ておりますと、「何やらタスクのことばっかりやな、、」との声がそこかしこから上がっておりました。。

どうやら、受講生たちに「上司からの想い」は届かなかったように感じます。。

ちなみにこちらの会社さん、都市対抗野球などでも優勝し、プロ選手を何人も排出する「社会人野球の名門企業」

当然、「ドラフトされる日」を夢見て、野球にも業務にも懸命に励む日々を過ごす方々がたくさん在籍しています。

本来、「プロを目指して頑張ってな。応援してるで!」「夢を叶えてくれな!」と伝わるはずの上司の思いは、「表現の自由」を阻止しようとする何者かにより、制限されたのでありましたとさ。。

 

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高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

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