ネットの履歴書
第19回『正論は単なる燃料投下』

株式会社ソルナが開発した究極の履歴書。それがネットの履歴書』これまでの履歴書や職務経歴書とは何が違うのか。なぜ究極と言えるのか。その秘密に迫ります。

小さなブルーオーシャンを追え
〜ネットの履歴書〜

第19回『正論は単なる燃料投下』

 

安田

カネカの話って、覚えてます?

三澤

少し前ですよね。

安田

奥さんの出産のときに、カネカに勤めてたダンナさんが育休とったんですよ。

三澤

奥さんもカネカでしたっけ?

安田

奥さんは違います。ダンナさんだけ。

三澤

いま男性の育休って、ちょっとずつ増えてますもんね。

安田

カネカさんも「積極的に応援してます」という姿勢を打ち出してたんですよ。なのに職場に戻ったらすぐ「すぐ転勤だ」って言われて。

三澤

揉めたと。

安田

まだ子どもが小さいし奥さんは動けないし「ちょっと猶予をもらえませんか」って言ったら「ダメだ」って言われて。結局会社を辞めざるを得なくなったんです。

三澤

なるほど。

安田

で、奥さんがツイッターに書いちゃったんですね。「うちはこういうので辞めざるを得なくなりました」って。

三澤

それは炎上しそうですね。

安田

はい。ものすごい同情が奥さんに集まって「カネカはなんてひどい会社なんだ!」みたいに炎上しました。

三澤

そうなったらもう止められないんですよ。

安田

もう本当に、回線がパンク状態になるぐらいクレームが来たそうです。

三澤

でしょうね。初期の対応がとにかく大事なんですよ。

安田

カネカさんとしては「育休とったから左遷したわけじゃない」「ウチは一切、悪くありません」みたいなことを言っちゃったんです。

三澤

それは正論ですけど、さらに火に油を注いじゃってます。

安田

ですよね。

三澤

実際には「育休を取ったから左遷した」ってわけじゃないと思うんですよ。

安田

それは、もちろんそうだと思いますよ。そんなことしたら大問題になりますから。

三澤

まあ、それでやっちゃってる企業もあると思いますけど。「あいつ気に入らないから飛ばせ」とか。

安田

結果的にそういうふうに見えちゃったってことですね。「そうじゃありません」って言ってたにも関わらず。どういう手があったんでしょう。

三澤

「社内規定でこういう規定があって」というのをちゃんと説明するとか。

安田

ちゃんと説明したんですよ。「転勤は決まってたんだけど、育休が終わるまで待っててあげたんだ。会社としたらすごい温情なんだ」って。でもさらに炎上しちゃった。

三澤

正直、僕も会社経営してるので、カネカさんの立場もわかるというか。

安田

いや、わかりますよね。でも、世間的には「一切そういうことに協力的じゃない会社」っていうレッテルを完全に貼られちゃったわけですよ。

三澤

そうですね。

安田

たぶん対応した広報の人は出世街道から外れますよ。「おまえのせいだ」ってことで。

三澤

可哀想ですね。でもそうなるでしょうね。

安田

今後こういう案件はいっぱい出てくると思うんです。間違ったことは言ってないのにブランドイメージが失墜してしまうという。

三澤

はい。どんなに正論をふりかざしても、株価が下がったりブランド下がれば、勝ち負けで言うと負けですから。

安田

こういう場合って、どうすりゃいいんですか?ツイッターに書かれた瞬間に消すべきだったんでしょうか?ソルナさんに頼んで(笑)

三澤

書いたものは簡単に消せないですからね。事実ですし。

安田

たぶん、奥さんがちょっと書いたぐらいまでは大したことなくて、そこから広がっていったから大変なことになったんですよ。

三澤

よくある炎上のパターンですね。

安田

奥さんは社名も出してなかったんですよ。それをまわりの人が「どこの会社なんだ?」って勝手に調べ上げて。

三澤

広がりそうなネタですからね。何しろ広げたがる暇人がたくさんいますので。

安田

そうなんですよ。どうしたらいいんですか?こういう場合。

三澤

まず、感情的になってる人に正論で反論しない。ややこしくなるだけなので。

安田

奥さんも社名出してないってことは、会社に対して恨みを晴らそうとか思ってなかったと思うんですけど。

三澤

初期の段階で「法的に問題ありません」みたいなコメントがありましたけど、ああいうのは感情を逆なでします。「そういうことを言ってるんじゃないの!」って。

安田

奥さんの感情というよりは、そこに乗っかった多くの人たちの感情を逆なでしちゃった感じですね。

三澤

そこに火をつけちゃいけないんですよ。あの一言は爆弾だったなという感じですね。

安田

具体的にはどう言えばよかったんですか?

三澤

「規定でいくと間違ってないんだけども、配慮が足らなかったことは事実です。そこは早急にカネカとしても変えていきます」みたいな。

安田

ある意味これってチャンスでもあるわけじゃないですか。うまく対応すれば「すごくいい会社だね」ってなる可能性もあるわけで。

三澤

ええ。そうだと思います。

安田

なぜ「一切悪くありません」なんて言っちゃったんですかね。ちょっと頭がカタいのかリテラシーが低いのか。

三澤

感情的になってたんじゃないですか。カネカさんも。「俺たち間違ってないよ」って。

安田

夫婦げんかでもあるじゃないですか。「俺は悪くないよな」ってときでも、ちょっと謝っておかねばならないときが。

三澤

丸く収めるためにはそうですね。

安田

そこで正論を言うと、とんでもなく泥沼化して行く。

三澤

そうですね。あのタイミングであのセリフはすごい愚策というか。

安田

あれだったら何も言わないほうがマシですよね。

三澤

そうですね。「折り合いがつかなくて辞めてしまわれたことは、会社としてもとても残念です」というスタンスを貫いていたら、勝手に鎮まったと思います。

安田

「我々としても非常に不本意だったけど、もうちょっと出来ることがあったかもしれません」的な?

三澤

そうです。「うちはサービス残業がひどい」「みなし残業で払ってるじゃないか」みたいな水掛け論をネット上でやると、ただただ燃料投下にしかならない。

安田

正論かどうかは、もはや関係ないってことですね。

三澤

はい。もうぜんぜん関係ないです。

安田

ソルナさんのeラーニングでは、そういう対応も教えてるんですか?

三澤

研修としてはありますね。たとえば「自分の会社の悪口が書かれてるのを見つけたらどうしますか?」みたいな。

安田

どうしたらいいんですか?模範解答は。

三澤

ネットで解決しようとしないこと。

安田

ネットで解決しようとしたらダメなんですか?

三澤

絶対ダメですね。ネットで反応したりすると、ひどくなる一方なので。

安田

へぇ。なるほど。

三澤

少なくとも公式発表を出す前に、第三者のプロの意見を聞くことが絶対に必要です。

安田

カネカさんの場合は、炎上を鎮めるというより「自分たちは正しい」ってことを世の中に伝えることが目的だった気がします。

三澤

それだったら、放っておいたほうがよかったですね。

安田

さらに悪者になっちゃいましたもんね。

三澤

基本的にネットで炎上させてる人って、弱いほうを応援しちゃうんですよ。

安田

「大きい会社は悪だ」って思い込んでる人、多いですもんね。経営者はひどい人で、働いてる人は弱くてイジメられてるみたいな。最初からバイアスがかかってる。

三澤

そうです。だから大人の対応というか、勝ち方の対応を考えていかないと。もう「ネット=一般大衆」なんですよ。

安田

勝つためにはどうしたらいいんですか?

三澤

ちゃんと味方を増やしていくこと。

安田

味方ですか。

三澤

たとえば今回のカネカさんは、会社の味方につこうって人がいなかったんですよ。

安田

確かに。いなかったですね。

三澤

そこの立て付けがすごい下手。敵しかつくらなかったというか。「会社には会社側の言い分があるんだよ」っていうことを、主張しただけ。

安田

なるほど。ZOZOの前澤さんなんかは、そういうところが上手なんですか。

三澤

はい。アンチができればできるほど、それ以上に応援する人が増えて行く。彼はそのコツを心得てますね。

・・・次回へ続く・・・

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