第14回 アクセサリー修理に込めた想い

この対談について

母から受け継いだ指輪をネックレスに、片方なくしたピアスをペンダントに、思い出の詰まった2つのリングを溶かして1つに――。魔法のようにジュエリーを生まれ変わらせるジュエリー修理・リフォーム専門店「Refine」(リファイン)。代表の望月信吾さんに、お客様に感動を届けるジュエリーリフォームの魅力、そして波乱万丈な人生についてお聞きする対談企画です。

第14回 アクセサリー修理に込めた想い

安田

Refineを創業する前は、街の宝石屋さんに宝石を卸していたとお聞きしましたね。その時も話題に出ていましたが、昔はよくあった時計とか指輪を一緒に売っていたお店、最近はすっかり見かけなくなりましたよね。


望月

そうですね。今でもあるにはあるんでしょうが、だいぶ数は減ったと思います。街の精肉店がなくなったのと同じ現象ですよね。

安田

でも、精肉店がなくなってもスーパーがあるからいいですけど、宝石屋さんがなくなったら困りませんか? お客さんはどこで買うようになったんですか。


望月

いわゆる量販店のようなお店もありますが、ブランド店で買うことが多いと思います。今は全体的にブランド志向になってきていて、いわゆる「ノンブランドもの」を買うという選択肢が減っているんだと思いますね。

安田

ああ、確かにそうかもしれません。ということは、デパートで買う人も減っているんですかね。


望月

比較的年齢層の高い方は、まだデパートで買う文化が残っているかもしれませんね。そういう意味では二極化しているのかもしれない。

安田

カルティエとかティファニーのようなブランド店で買うか、デパートお墨付きのダイヤを買うか、みたいな選択肢なわけですね。


望月

そうそう。昔はそれこそ時計兼業店で、「ダイヤモンド何カラットでいくら」というような売り方が成り立ってたんですけど。今は「宝石を置いておけば売れる」という時代ではなくなりましたね。

安田

確かにそうですね。「どこどこのブランドのジュエリーよ!」ではなく「◯カラットのダイヤモンドよ!」みたいな自慢の仕方でしたもんね。


望月

ええ、それが一般的でしたから、どの店で買うかはあまり重要じゃなかったわけです。私が卸をやっていた30年前はそういう時代でしたね。

安田

なるほどなぁ。30年前というと私が30歳の頃ですが、確かに当時からは随分と感覚が変わりましたね。でも、逆に今考えるとちょっと心配になってきました。ブランド店でもデパートでもない街の宝石店が、絶対に本物を売っていたのかなって。うっかり偽物が混ざってるなんてことはなかったんですか?


望月

ああ、なるほど。それでいうと、当時はまだ「できのいい偽物」がなかったんですよ(笑)。今の時代の偽物の方がよっぽどクオリティが高いです(笑)。それに、当時はネットもなくて、私のような専門の卸が必ず介在していたから、そもそも偽物が出回ることも少なかったろうと思います。

安田

ははぁ、なるほど、勉強になります。ちなみに今は、そういうお店をやってた方ってどうしてるんですかね。お店をたたんで違う仕事をしているのか……


望月

そうだと思いますね。在庫を抱えるリスクや回転率の低さを考えると、この時代に宝石店をやるメリットってほとんどないですから。

安田

確かに、さっきの話のように、今は「街の宝石店」で物を買うことはないですもんね。ブランド物が欲しければブランド店に行きますし、安いものがよければディスカウントショップがある。


望月

仰る通りです。そういう流れもあって、宝飾業界はどんどん縮小していってますね。10年後どうなっているのか予想がつかないくらい。

安田

なるほどなぁ。ちなみに、ちょっと話は変わっちゃうかもしれませんが、ジュエリーショップが減った代わりに、アクセサリー店が増えた気がするんです。


望月

ああ、なんとなくわかります。

安田

ですよね。ただあらためて考えるとよくわからないんですが、ジュエリーとアクセサリーの違いって何なんですか?


望月

一般的にはそこまで明確な違いはないと思いますね。私個人としては、「壊れたら買い直すものがアクセサリー」「壊れても修理して使い続けるのがジュエリー」と定義しています。

安田

なるほど、ジュエリー加工をされている望月さんならではの定義づけですね。つまりRefineさんで修理やリフォームを受けているものは「ジュエリー」ということですね。

望月

そうです。……とバシッと言えればカッコよかったんですが(笑)、実はアクセサリーを修理してほしいというお客様もいらっしゃるんです。これはこれで「アクセサリーの修理は受け付けてない」と他のお店で断られるケースが多いようで。

安田

ふーむ。それで巡り巡ってRefineさんにやってくると。そういうご依頼が来たら受けるんですか?

望月

できる限り対応させていただいています。アクセサリーもジュエリーも、こちらで便宜上分けているだけであって。お客様がお困りでうちの店にいらっしゃっているわけですから、なんとかしたいじゃないですか。

安田

素晴らしいですね。アクセサリーかジュエリーかに関係なく、思い入れがあるから修理を依頼するわけですもんね。

望月

ええ、仰るとおりで。例えばこの間、髪を束ねるバレッタをお持ちいただいた方がいらっしゃったんです。「1,000円くらいのものだしお門違いだと思うんだけど、他に持っていけるところもなくて」と。

安田

ははぁ、そういう依頼もあるんですね。

望月

そうなんです。技術的に問題なさそうだったのでお受けしたんですが、その時は同じような髪留めを買ってきて、そこから部品を取り出してお預かりしたものに移植して直すことができました。

安田

へえ! そんな直し方もできるんですね。それでだいたいいくらくらいなんですか?

望月

その時は3,000円くらいでしたね。

安田

ふーむ、ということは、定価1,000円のものを3,000円かけて直したわけですね。他人から見たら、「新品を買い直した方が安いじゃん」と思ってしまいそうですけど、お客さん自身にとってはプライスレスなものですもんね。

望月

ええ、本当にそうなんです。その人にしかわからない価値というのが確かにあるわけで。そういう意味でも、ジュエリーに限らずできる限り対応させていただきたいなと思ってます。

安田

なるほどなぁ。いっそ「ジュエリー修理」だけじゃなく「アクセサリー修理」という看板も出した方がいいんじゃないですか?(笑)。


対談している二人

望月 信吾(もちづき しんご)
ジュエリー工房リファイン 代表

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25歳で証券会社を退社後、父親の経営する宝石の卸会社に入るが3年後に倒産。その後独立するもすぐに700万円の不渡り手形を受け路頭に迷う。一念発起して2009年に大塚にジュエリー工房リファインをオープンして現在3店舗を運営。<お客様の「大切価値」を尊重し、地元に密着したプロのサービスを提供したい>がモットー。この素晴らしい仕事に共感してくれる人とつながり仕事の輪を広げていきたいと現在パートナー募集中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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