第16回 「Refine」は思い出のリフォーム屋さん

この対談について

母から受け継いだ指輪をネックレスに、片方なくしたピアスをペンダントに、思い出の詰まった2つのリングを溶かして1つに――。魔法のようにジュエリーを生まれ変わらせるジュエリー修理・リフォーム専門店「Refine」(リファイン)。代表の望月信吾さんに、お客様に感動を届けるジュエリーリフォームの魅力、そして波乱万丈な人生についてお聞きする対談企画です。

第16回 「Refine」は思い出のリフォーム屋さん

安田

最近はデパートや宝石店でジュエリーを買うことが減っていて、ティファニーとかカルティエとか、そういうブランド店で買うようになったというお話を聞きました。


望月

ええ。若い人はもうあまりノンブランドのジュエリーを買わないですからね。

安田

でもブランド物って、石や金属などの素材にブランド代が乗っているわけで、割高なんじゃないですか? そのあたり、プロの目からみるとどうなんでしょう。


望月

つまり、価格のわりに素材の価値が低いんじゃないかということですか?

安田

そうですそうです。例えば、すごく高額で購入したのに、それを売ろうとしたらガクッと価値が下がっちゃう、みたいなことにならないのかなと。


望月

ああ、それでいうと、ブランド物にも流行り廃りがありまして、新しいデザインのものはちゃんと高い値段で取引されていますね。とはいえ使っている素材はノンブランドのものと同じなので、原価を考えると……

安田

「これをこの値段で売っているのか」ということもあるわけですか(笑)。


望月

ありますね(笑)。例えばプラチナを何グラム使って、何カラットのダイヤを使って、加工賃がこのくらいで、と計算していくと、目玉が飛び出るくらいの売値が乗っていたりします(笑)。

安田

へぇ。まぁブランド店って、素材そのものより、お店の立地や雰囲気の方にお金をかけてますもんね。


望月

そうなんですよね。そりゃ銀座のど真ん中にあんな大きなお店を出していれば、このくらいの値段で売らないとダメなんだろうな、とは思います。それに、実際そこに価値を感じる方が買うわけで、ビジネスとして何ら悪いものではないですし。

安田

確かに、納得して購入しているわけですし、他人がどうこう言う問題ではないですよね。


望月

そうそう。ただ、ふと「価値って一体何なんだろう?」と考えさせられることはありますよ。

安田

ふーむ、なるほど。例えばエルメスの革のバッグだったら、素材の革というよりはブランドそのものに価値があるわけですよね。だから「エルメスの中古のバッグ」としてそのまま流通していく。


望月

もちろん前提としていい素材は使っているんでしょうけど、それだけで価値が決まるわけではないですからね。

安田

そうそう。でもジュエリーの場合は、もう少し現実的な価値がある気がするんです。つまり「カルティエの指輪」という価値の前に「宝石や金属自体の価値」があるというか。


望月

うーん、仰りたいことはすごくよくわかるんですが、中古市場で流通する場合は、バッグと同じですね。原材料の価値というより、「カルティエの指輪」として値段がつきます。

安田

ははぁ、なるほど。ということは、仮にカルティエで買った指輪をリフォームしてしまった場合は、「カルティエとしての価値」はなくなってしまうと。そうなった場合に初めて、素材そのものの価値で見ていくことになるということですか。


望月

それで言うと、ブランド物のジュエリーをリフォームする方はほとんどいらっしゃらないんです。安田さんが仰るように、そうしてしまうと「ブランドの価値」がなくなってしまうので。

安田

ああ、そうなんですね。でも修理やリフォームをしたい人はいるんじゃないかなぁ。「サイズが合わなくなっちゃったけど使い続けたい」とか「土台が歪んでしまったから直したい」とか。

望月

ふーむ、そうですね。実際、ブランド物のジュエリー修理をご依頼いただくことは稀にあるんです。ただ、うちで手を入れることで正規品ではなくなってしまうので、それをしっかりご説明した上でお受けすることになるんですけど。

安田

そうか、修理だけでも正規品じゃなくなっちゃうんですね。

望月

そうなんです。もっとも、「自分で使うだけだから大丈夫だよ」と仰る方がほとんどですけれど。

安田

ふーむ、なるほど。自分が使うだけなら別に市場価値なんて関係ないですもんね。

望月

仰るとおりで。それに、価格に関わらず、ジュエリーを修理しながら大切に使い続けるのは素晴らしいことだと思います。

安田

ちなみに、望月さんとしてはそういうブランド物か、そうじゃないノンブランド物だったら、どちらの方がおすすめなんですか? なかなか答えづらい質問かもしれませんが(笑)。

望月

そうですねぇ。ブランド物には「そのブランドであること」に価値があると思いますし、一方ノンブランドのジュエリーは、「旅行先で買った」とか「おばあちゃんにもらった」とか、思い出自体に価値があったりしますよね。

安田

ああ、確かに。それぞれの良さがあるよ、ということですね。

望月

そういうことです。ともあれうちに持ち込まれるものの多くは、後者のような思い出の価値、つまり「センチメンタルバリュー」があるものがほとんどですね。

安田

なるほどなぁ。聞けば聞くほど、ジュエリーリフォーム屋さんというよりは、「思い出のリフォーム屋さん」という感じがしますね。


対談している二人

望月 信吾(もちづき しんご)
ジュエリー工房リファイン 代表

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25歳で証券会社を退社後、父親の経営する宝石の卸会社に入るが3年後に倒産。その後独立するもすぐに700万円の不渡り手形を受け路頭に迷う。一念発起して2009年に大塚にジュエリー工房リファインをオープンして現在3店舗を運営。<お客様の「大切価値」を尊重し、地元に密着したプロのサービスを提供したい>がモットー。この素晴らしい仕事に共感してくれる人とつながり仕事の輪を広げていきたいと現在パートナー募集中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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