庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第20回 理想のお庭ができるまで
まずは「お客さんがお庭をどう使いたいか」をじっくりお聞きするところから始めます。家族構成や車の台数、リビングの掃き出し窓から外に出て何をするか、といった細かいところまで話を聞いて。
へぇ。かなり具体的に要望を聞くんですね。
なるほど。ということは、建物(家)ができあがってから庭のデザインを始めるわけですね。確かに、向かいのお家がどれくらい視界に入るのかなどは、実際に建物の中から見ないとわかりませんもんね。
仰るとおりです。それで確認を行い、たとえば景色の中に入れたくないものがある場合は、そこに背の高い常緑の木を配置したり。
そうですね。あるいは「お庭のどこでどう過ごしたら面白いかな」とか、「家の中から見てどういうお庭になってるのがいいかな」などと考えながら、使う石や植える木を選んでいきます。
へぇ。そういえば、縁側の下に綺麗な丸い石が置かれてる庭を作ってましたよね。あんなに綺麗な形の石がうまいことあるもんだなと印象に残っています。
へえ、そういうものがあるんですね。それにしても、「お庭でどうやって過ごしてもらおうか」「どうやって楽しんでもらおうか」と考えていると、いくらでもアイデアが出てきそうですね。
まさにその通りなんです。僕自身も自宅の庭に足湯を作ろうとして、予算オーバーで断念したことがあります(笑)。
あまりに予算をかけられない場合だと、「駐車場の脇にグラウンドの土を敷いておしまい」というケースもありますね。ただそうだとしても、なるべくメンテナンスのコストがかからないように、最初にしっかりと設計するようにしています。
いろいろありますが、一番わかり易いのは「家に勝ってしまうような庭」はよくない、ということです。
確かに、家が貧相なのに、庭だけ妙に立派でもおかしいですもんね。
なかなかお答えするのが難しい部分ですが、予算がないことが理由で諦めてもらったり、妥協いただく部分は増えてしまうでしょうね。本当は大きな石で表情を出したいのに、植物と砂利だけで対応することになったり。
確かに大きな石もあった方がリズムが出そうですね。
素材の費用と少しの手間で、すごく良いお庭になるということですね。いつもながら奥が深いです。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。