この対談について
庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
安田
前回、「6軒分のお庭を街並みごと作る計画」が完成したとお聞きしました。事例も見せていただきましたが、すごくいいですね!
中島
ありがとうございます。いがみ建築工房さんという、岐阜県各務原市を拠点に家作りをされている会社さんからお声がけいただきまして。
安田
元々そういう事業を得意とされている建築屋さんなんですか?
中島
いえ、今回が初の試みです。最初は1棟のみで考えていたそうですが、どんなに素敵な家を作っても、周りの景色とのバランスで見え方が変わってしまう。それならば街並み全体をデザインしてしまえばいいじゃないか、と思い至ったと聞いています。
安田
なるほど。「いい家」を追及する中で、「6棟まとめて建ててみよう!」となったんですね。
中島
そうなんです。私自身も「1軒のお庭でできることには限界があるな」と感じていたところだったので、すごく共感して。ぜひご一緒させてくださいとお願いしたんです。
安田
中島さんとしても良いタイミングだったんですね。とはいえ、普段は普通に1棟ずつ建てている会社さんがいきなり6棟建てるなんて、かなり大きな挑戦だと思うんですけど(笑)。
中島
そう思います(笑)。年間20~30棟くらいの会社が、一気に6棟作るわけですから。とはいえ、頑張って取り組んだおかげで、先日無事に完成しました。オーナーさんにもすごく喜んでいただきまして。
安田
それは何よりですね。ちなみに中島さんは、建物が完成した後から参加したんですか?
中島
いえ、建物と庭を同時に進めてました。スケジュールの問題もありますから。
安田
そうか。6軒もあるから、どんどん作っていかないと終わらないわけですね。ちなみに作りとしては、マンションのように6棟それぞれの土地があって、それとは別に共有部分があるイメージでしょうか。
中島
そうですね。それぞれの敷地が旗竿のような形になっているんですが、間の道路の部分が共有スペースです。下水や水道管がその下を通っていて、一番奥には「雨が降るとできる池」があります。
安田
ほう! 雨が降った時だけ池が出現するんですか。おもしろいですねぇ。でもなんでそんなものを作ったんですか?
中島
元々の土地が、奥に向かって坂道を下るような感じだったんですね。突き当りに畑があるんですが、そこに水が流れるのを防ぎたいというご要望があって。
安田
ははぁ、なるほど。それをどう処理するかを考える必要があったわけですね。
中島
ええ。一応暗渠排水という自然に水が浸透していく処理をしているので、多少の雨なら大丈夫なんです。ただ、大雨になってしまうとどうしても水が溢れてしまう。
安田
なるほど。6棟分の水が全部流れていくわけですもんね。そこで畑の手前に、溢れた雨がたまるスペース、つまり池を作ったわけだ。
中島
まさにそういうことです。ちなみに僕がこのプロジェクトに参加させていただいたのが、ちょうど「排水をどうしようか」という課題が持ち上がっていたタイミングで。「池を作るのはどうでしょう」と提案させていただきました。
安田
へぇ、それはすごい。でも面白いですね。排水のためだけなら、単に穴を掘っておけばいいようにも思いますが、それでは味気ないから池にして景観をデザインしたわけでしょう?
中島
ええ、そうなんです。せっかくなら素敵な景色になった方がいいなと思いまして。家々の真ん中を通る通路から小川のように水が流れて、それが一番奥の池に溜まるようになっています。
安田
確かに写真を見ると、石がきれいに積んであって、日本庭園にあるちょっとした水路と池のようなイメージですね。
中島
そうですね。池の周りに椅子としても使えるような平らな石も置いてあるので、そこに座ってゆっくりお話でもして欲しいなと思っています。
安田
いいですね〜。雨が降ったら池を楽しめて、晴れているときはベンチ代わりの石に腰かけておしゃべりすると。季節だけじゃなく天気によっても景色の違いを楽しめるわけですね。
対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
Facebook
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
