第40回 桜の枝は切るべきか切らざるべきか

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第40回 桜の枝は切るべきか切らざるべきか

安田

桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿】っていうことわざがあるじゃないですか。要は、桜は剪定が難しいから切ってはいけない。逆に梅はしっかり剪定しないといい実がつかない、というような意味だと思うんですが、実際桜の剪定って難しいんですか?


中島

ええ、桜の剪定はなかなか難しいですよ。というのも、切り口が治りにくく、その部分に菌が入って腐ってしまって、結果木全体が弱ってしまうこともあるんです。絶対に切ってはいけないわけではないんですが、切り方などに注意が必要です。

安田

なるほど。でも、そうならばそもそも剪定しなければいい気もするんですけど。そうではないんですか?


中島

ある程度は剪定した方がいいと思います。例えば枯れている枝が残っていると、景観もよくないですし、風で倒れたり折れたりして危ないので。

安田

なるほど。もし切るとなったら、どういうところに気を付けるといいんでしょうか?


中島

ちょっとマニアックな話になりますが、枝に対して切り口が90度になるように切るのがコツです。幹から斜めになるようにするというか。

安田
ふーむ。でもそうすると、枝の根本が残ってしまう気がするんですが。

中島
仰る通りです。なので多少切り口は目立ってしまうんですが、桜は幹ぎりぎりで切ってしまうとそこから枯れてしまうので。また斜めに切るのは、切り口に水がたまるのを防ぐ意味合いもあります。
安田
なるほど。【桜切る馬鹿】と言う通り、何も考えずに切り落としたらダメなわけですね(笑)。一方【梅切らぬ馬鹿】の方の梅はどうなんでしょうか。

中島

梅は伸びるのも早いですし、安田さんが冒頭仰ったように、無駄な枝を切らないとよい花や実がつかなくなってしまいます。そういう意味ではことわざ通り、しっかり切ってあげた方がいいと思いますね。もっとも、やたらめったら切るわけじゃなく、樹形が崩れないよう、景観も見ながら切ってあげてほしいですけど。

安田

なるほどなるほど。桜も切らなきゃいいというものではないし、梅も切ればいいというものでもない。木の特性を見ながら適切に切っていくのがいいということですね。そして切った後の景観も重要だと。


中島
ええ、まさにその通りです。木に負担をかけない剪定をしつつ、きれいな樹形を保っていく必要があります。もっとも、樹形という意味では、実は一切剪定せず自然な形のままの方がキレイなんですけどね。
安田

えっ、じゃあ形を整えるために切るわけじゃないということですか?


中島

そうなんです。風通しが悪くなると虫がつきやすくなったり、日当たりが悪くなって枝が弱ってしまったりするので、それを防ぐ目的で剪定することが多いですね。

安田

へえ〜、そうなんですね。ちなみに、街路樹のような桜もそうやって剪定されてるんですか? 東京だと有名な桜並木とかありますけど。


中島
うーん、あれはおそらく枯れた枝とか邪魔になったものだけ切っているんじゃないかな。
安田
ということは、整えているわけじゃないのにあんなにきれいな形なわけですか。ちなみに枯れているかどうかって見た目でわかるんですか?

中島

見てもわかりますし、幹を爪で少し削ってみて、中が青っぽいか茶色かで判断したりもします。桜に限らずどの木もだいたいそうやって確認してますね。

安田

なるほどなぁ。切るべきか切らざるべきか、切るにしてもどうやって切るか、知識や経験が必要というわけですね。

 

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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