第10回 サプリメントと薬の違いとは。

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第10回 サプリメントと薬の違いとは。

安田
久保さんは以前、ファンケルにお勤めされていましたが、ファンケルといえばサプリメントですよね。

久保
笑。そう思っていただけると嬉しいです。
安田
今日はその「サプリメント」についてお聞きしたいと思います。まずサプリメントって体のために摂取するものですが、薬とはどういう違いがあるんでしょうか?

久保
そうですね。実はサプリメントという概念はアメリカから来たもので、日本人にとってはかなり新しい考え方なんですね。
安田
ほう、なるほど。

久保
そしてアメリカから「サプリメント」という言葉を日本に持ち込んで広めたのが、私が働いていたファンケルという会社なんです。海外にはこんないいものがあるんですよ、と。
安田
そういう歴史があったんですね。

久保
ええ。サプリメントが入ってくる前の日本では、ローヤルゼリーとかクロレラなど、いわゆる健康食品のようなものが主流でしたよね。
安田
にんにく卵黄というのもありましたね。

久保
ええ。そういった日本の健康食品市場に、ファンケルが「サプリメント」というカテゴリを持ち込んだわけです。ただ日本には、サプリメントを明確に定義する法律はないんですけどね。
安田
え、そうなんですか!?

久保
皆さん驚かれるんですが、現在に至るまで一切できてないんですよ。なのでサプリメントは法律上「食品」と全く同じ扱いになります。
安田
ああ、確かに「栄養補助食品」と書かれたりしますもんね。もともとサプリメントが発達していたアメリカも同じなんですか?

久保
いえ、アメリカのサプリメントは、栄養補助食品健康教育法で定義づけられています。製造時に適用される法律のガイドラインだけで800ページ以上ありますから(笑)。一方日本では5ページ程度のちょっとした注意書きだけ。検査の種類も桁違いに少ないです。
安田
そうなんですか。そうすると日本製のサプリメントは、あんまり信用できないってことですか? 明確な基準がないだけに、中には良くないものもありそうですけど。

久保
残念ながら仰る通りです。法律で罰せられるわけではないので、明らかな粗悪品を作っているメーカーもあります。もちろん大手の有名メーカーさんはGMP認定を受けたり、独自の厳しい検査基準を設けてしっかりやられていますけど。
安田
なるほど。ともあれ、「国産だから全部安心」というわけでもないと。なんだか怖いなあ。

久保
まあ、粗悪品と言っても食品として保健所の認可は下りているわけで、毒が入っているわけではないですから(笑)。ただアメリカなどに比べて基準が緩いのは事実です。
安田
そもそもなぜアメリカはサプリメントに対する関心が高かったんですかね。

久保
それはすごくわかりやすい理由があるんです。安田さんもご存知だと思いますが、アメリカは医療費が高いじゃないですか。
安田
ああ、救急車呼ぶのに10万円、1晩入院したら100万円、なんていう話も聞きますもんね。日本では考えられませんけど。

久保
ええ。だからこそアメリカ人は「病気にならないためにはどうするか?」ということをシビアに考える。日本人とは意識が違うわけです。
安田
なるほど、なるべく医者にかからないようにしているわけですか。

久保
そういうことです。結果、体によいものを摂取するための選択肢として、サプリメントというものが発達した。
安田
なるほどわかりやすい。つまりアメリカのサプリメントは「医者にかからないために飲むもの」だったと。それで言うと、サプリメントは「予防」という面が強いんですかね。そこが「治すために飲む」薬との大きな違いだと。

久保
それも一つだと思います。ただ先ほども申し上げた通り、日本におけるサプリメントは定義のない「食品」なので、法律的にも概念的にもそもそも別物なんですよね。
安田
そう言われたらそうですね(笑)。そういえば私、先日血液検査をしたら亜鉛が足りないと言われたんですよ。それでお医者さんから亜鉛のサプリメントをもらって飲み始めまして。

久保
ああ、そうなんですね。
安田
でも正直なところ、検査結果の数値で「足りない」と出たから飲んでいるだけで。今後も自らサプリメントを飲むことはしないと思います。

久保
確かに日本では、サプリメントを日常的に飲んでいる人は少ないかもしれませんね。それこそ、青汁とかにんにく卵黄とか、昔からある健康食品の方が親しみやすいのかもしれません。
安田
ところで東洋医学的には「未病」という考え方がありますよね。

久保
未病というのは、はっきり病名がつくわけではないけどなんとなく不調を感じるという状態ですよね。
安田
ええ。そういう意味ではサプリ=未病を改善するもの、なのかもしれませんね。

久保
そうですね。日本ではそういう捉え方が多いのかもしれません。劇的な効果を感じるわけじゃないけど、以前よりなんとなく調子がいい、で充分というか。まあ、アメリカだとサプリメントにも明確な効果を求めますけどね。「効かないサプリはいらない」という感じなので。
安田
合理的なアメリカらしい考え方ですね(笑)。でも 「効くサプリメント」って、それはもう薬みたいなものですよね。

久保
まあ、そうとも言えますね。日本なら処方箋がないと買えないようなサプリメントもあります。それはもう薬レベルと言っても良いかもしれません。
安田
でしょう? 特定の症状に効く・治るということがわかれば、それはいずれ薬として認定されるわけで。

久保
そうなんですが、現実的にはなかなか難しいんですよね。先ほど日本のサプリメントは法整備が進んでいないという話をしましたが、薬は別です。認定されるには非常に厳しいテストをクリアしなければならない。
安田
なるほど。サプリメントの定義は曖昧だけど、薬は明確なんですね。

久保
ええ。薬として認定されるには、「一定数以上の人が一定以上の確率で症状が改善された」という臨床データが必要です。要は、ある程度の再現性を持って「効く」ということと安全性がある程度証明されないといけない。だから逆に、サプリメントのPRに「効く」という表現は使えないんですよ。
安田
ああ、そうか。「効く」と言えるのは薬事法で管理された薬だけだと。確かにサプリメントのCMでは常に「個人の意見です」という注釈がついていますもんね(笑)。

久保
そうなんですよ。だからサプリメントを販売するメーカーとしては、いかに曖昧な表現で効果を説明するかに必死なわけです(笑)。
安田
なるほど、そういう涙ぐましい努力を重ねながら、日本のサプリメントは販売されているわけですね(笑)。

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

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仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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