第77回 庭のリフォームにも高齢化の波?

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第77回 庭のリフォームにも高齢化の波?

安田

最近は「和」と「洋」が融合したお家が増えていて、それに合わせたお庭を作ることが多いそうですね。もう完全な日本庭園を作ることはないんですか?


中島

かなり少なくはなっていますね。ただ、京都の造園会社からの紹介で、ある有名企業の社長さん宅のお庭リフォームをさせていただくんですが、そこが昔ながらの日本庭園です。久々なので私も楽しみで。

安田

へぇ、そうなんですね。有名企業の社長さんってことは結構な広さなんじゃないですか?


中島

そうなんです。敷地が400坪くらいあって、とにかく大きいですね。公民館と見間違えられるほどの存在感で、「ここは何の施設ですか?」と通行人に尋ねられることもあるらしくて(笑)。

安田

そんなに。それは掃除が大変そうだなぁ(笑)。お庭が日本庭園ということは、家も和風建築なんでしょうね。


中島

完全な和風建築ではないですが、木の温かみを感じる雰囲気で、日本庭園とも違和感なくマッチするデザインなんですよ。

安田

へぇ〜そうなんですね。それが公民館ほどの大きさなわけでしょう? それは地元で有名になるはずだ。ちなみに400坪のうちお庭はどのくらいなんですか?


中島

お庭だけで200坪くらいはありますね。さらに言えば、ご自宅の隣にも200坪くらいの敷地があって、ゲストハウスのようなギャラリーがあって、絵が展示されているんです。そっちにも池が作られていたりするので……

安田

ははぁ、まさに大地主という感じですね。ちなみにリフォーム前の今の庭は中島さんではない別の方が作られたんですか?


中島

私もお手伝いさせていただきながら、複数の業者で作った感じですね。裏の山を活かした借景の作りで、まるで山と庭が一体化しているようなデザインでした。赤松を使った松林もあって。

安田

へぇ〜、聞くだけで素晴らしさが伝わってきますよ。


中島

ええ、本当に。塀も大きな特注の石を使った石塀で、その周りに配置された植栽の脇から水が流れるような造りになっています。それを作ったのが7年ほど前でしょうか。

安田

ふ〜む、風情がありますねぇ。ちなみに今回リフォームはどのような依頼だったんですか?


中島

お庭や池の周りに自然石の飛び石が敷かれているんですが、ご高齢になってきて少し歩きにくくなったそうで。歩きやすいアプローチをご希望とのことで、ご依頼いただきました。

安田

ほう、なるほど。飛び石は雰囲気があっていいけれど、高齢になってくると歩くのが大変だと。


中島

ええ。さらに言えば、メインのアプローチは御影石の切り石で舗装されているんですが、主にご家族が使われるサブの玄関の方も飛び石になっているんですよね。普段使いするところだからこそ、負担も大きいと。

安田

確かに毎日となると大変かもしれませんね。池の周りも結構広いんですか?


中島

池の方は、周囲15メートルほどの距離に60センチくらいの大きさの石が20個近く置かれていたと思います。

安田

なるほどなるほど。中島さんの中ではどんな風にリフォームするイメージなんでしょう。

中島

詳細は決まっていませんが、まずはもう少し機能性を高める方向で考えています。とはいえ、機能性だけ考えて作ると風情がなくなってしまうので、飛び石は活かす方向で。それぞれの石をもう少し大きくすれば、かなり歩きやすくなるんじゃないかなと思うんですよね。

安田

ああ、確かに。機能性のためだからと人工芝や砂利にするのもね。となると石の選び方が重要になってきますか。

中島

そうですね。古くなった御影石などの古材が最適な気がします。御影石は白や落ち着いた茶色のものもあるので、デザインの一部としても使いやすいですし。

安田

なるほど。大谷石も雰囲気が合いそうですけど、いかがですか?

中島

ああ、それもいいと思います。風化しやすいので、何十年かに1回取り替えたり、定期的なメンテナンスは必要になりますが。

安田

ふむふむ。それにしても、庭の世界にも高齢化の波が影響してきているんですね。今後はこういったリフォームのニーズがますます増えていくんでしょう。

中島

そう思います。ともあれ、お住まいの方が快適かつ気分良く過ごせるお庭を作る、という意味では同じですので。これからも時代に合わせて進化する庭づくりを提案していきたいと思います。

 

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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