この対談について
庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第8回 庭作りから始まる小さな街作り
第8回 庭作りから始まる小さな街作り
中島さんのお話を聞いていると、その家のお庭というだけじゃなく、「街の景色」としての庭作りをしているように感じるんですけど。そういうことも意識されているんですか?
ああ、お庭を含めた街並みを作りたいという想いはありますね。僕が作った庭が道路の反対側にも繋がっていて、お互いのプライベート空間はありつつも繋がりを感じられるような。
お庭の外も含めて一つの景色と捉えると。あるエリアの庭を何軒かまとめて作ったら、全体で1つの庭のように見えるかもしれませんね。
いいですねぇ(笑)。ともあれ、逆のことも言えるんですよね。すごく素敵な庭を作っても、両隣やお向かいさんとのバランスによって、ちょっと残念な風景に見えてしまうことがある。
ああ、隣の家がサビだらけのプレハブだったりすると台無しですもんね(笑)。そう考えると、本当は中島さんは庭作りをしながら「街作り」をしているわけですね。
そう思っていただけるとすごく嬉しいです。庭と庭とが調和している街は、散歩をするだけでも気持ちがいいだろうなと思います。
でも現実的に、10軒から20軒くらいを建築屋さんと一緒に作ることはできそうですよね。そういうお仕事はやらないんですか。
ああ、一応今そういうお話もいただいていて。6棟の家が1箇所に固まっていて、それぞれのお宅のお庭から道路まで全体を作るような。
それは素敵ですね! 中島さんが作ったらすごいことになりそうです。
そう思って私も楽しみにしているんです。でも、いくらでも予算が使えるというわけではないので、いろいろ工夫が必要だなと。
ははぁ。確かに1軒でもそれなりにお金がかかるものが、6棟もあるわけですもんね。ちなみに6軒全部が満足いくようなお庭にするには、どのぐらい予算をかけたらいいんですか。
1軒500万円くらいかけられれば、いい庭ができるんじゃないでしょうか。
ということは全部で3000万円ぐらいあれば、6棟全てが素敵な庭になるってことですか。
間の道路がアスファルトでよければ、そのくらいでいけると思います。
ああ、そうか。今回は庭だけでなく、道路などの共用部分なんかも手掛けるわけですもんね。そっちはそっちで予算が必要だと。
そうなんです。ともあれ、私自身も初めての取組みなので、ワクワクしてるんですよ。もちろん予算の問題もあるんですが、せっかくの機会ですから、勉強させていただくつもりで取り組もうと。
なるほど。ちなみにどんなデザインになるかはある程度決まっているんですか?
ええ、建物も少し変わったデザインにして、道路は山道を作るようなイメージのようです。樹木をたくさん植えて、自然の雰囲気を出す感じで。
へぇ、良さそうですね。でも、それぞれのお宅のお庭を作って、さらに道路にも凝ったあしらいをするとなると、やっぱりそれなりにお金がかかりそうだなぁ。すみません、どうしてもそこが気になってしまって(笑)。
笑。もちろん予算もすごく大事ですからね。聞いたところによると、道路もかなり凝っていて。剪定で出た木を細かくチップ状にしたものと砂利を混ぜてたものを敷き詰めるらしいです。
へぇ、それはすごく良さそうですね。街路に植える木とか置く石とかにもこだわって欲しいなあ。……なんて、夢は膨らみますが、予算もどんどん増えていく(笑)。逆にいくらくらい予算あればそういうことが実現できそうですか?
道路は60mぐらいあるので、本当に綺麗に作ろうとすると、そこだけで1000万円ぐらいかかってしまうかもしれないですね。
なるほど。まあでも、そりゃそうですよね。逆に言えば、そんなに素敵に作るんだから、販売価格をドーンと上げちゃえばいい気もするんですけど。
そのあたりはまた、建築屋さんたちと相談したいと思います。実際、「家・庭・道路ぜんぶ含めて価値なんだよ」とわかってもらえれば、ある程度高い金額でも興味を持ってもらえると思うんです。
そうですよね。せっかく匠の技を集結するんですから、できるだけ高く売って欲しいなぁ。
そうできるよう頑張ります(笑)。「集落全体をデザインする」という取組みはすごくおもしろいので、発信にも力を入れたいですし。
そうですよね。大手の建築会社ができない、小さな会社だからこそできるような「小さな街作り」をぜひやってほしいですね。そういう取組みをしたい建築屋さんがいたら、ぜひ中島さんに声をかけてください!
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。