第217回 パートの時給を上げよ

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第217回「パートの時給を上げよ」


安田

今日は貧困主婦問題について。

久野

重いテーマですね。

安田

税金や社会保険料がどんどん上がって、旦那の収入だけでは厳しいという人が増えてます。

久野

はい。共働きするしかないところまで来てます。

安田

専業主婦って豊かなイメージですけど、実際には切り詰めて貧乏生活しないと成り立たないみたいで。

久野

いずれ奥さんもフルタイムで働くようになると思います。

安田

サザエさんやちびまる子ちゃんみたいな、「旦那が稼いで奥さんが家で子どもの面倒を見る」というモデルはもう終焉でしょうか。

久野

もうその時代は終わってます。

安田

まあ共働きが悪いことでもないし。

久野

世界的に見れば普通ですよ。日本もすでに7割が共働きと言われてます。

安田

奥さんが旦那より稼げる夫婦もあるでしょうし。旦那が多めに家事をやる家庭があってもいいわけで。

久野

これからどんどん増えていくと思います。

安田

久野さんが住んでいるのは、けっこう保守的な地域ですよね。「結婚したら女は家庭に入れ」みたいな常識はないんですか。

久野

田舎でもそんな常識はもうないです(笑)

安田

そんなこと言ってられないと。

久野

言ってられない。田舎の方が賃金も安いので。とくに子どもがいると、よほどの大手で働いてない限り専業主婦はありえない。

安田

税金も社会保険料も高くなってるし。

久野

結婚したから仕事を辞める、家庭に入ります、ってもう聞かないです。

安田

会社側としてはどうですか。「結婚したら辞めてね」という暗黙の了解が昔はあったじゃないですか。人材不足で続けてほしい会社の方が多いんでしょうか。

久野

ほとんどの会社は働き続けることが前提ですね。中には結婚したら辞めてほしいと思ってる経営者もいますけど。

安田

本人のスキルにもよるんでしょうね。

久野

平成22年に育児介護休業法が大々的に変わりまして。それから10年近く経っているので、もう常識が変わりました。

安田

どんなふうに?

久野

「せっかく教えて、戻ってきてくれるならいいよね」という感じ。

安田

それが今の常識なんですね。でも子育てで4〜5年離れちゃうと、なかなか元の仕事に戻るのは難しいです。

久野

それだけ離れると難しいですね。

安田

ですよね。だけどパートでは生活費が足りないから貧困家庭になっちゃうわけで。もう男女とも働き続ける前提で考えた方がいいですね。

久野

まずパートの賃金をもっと上げないとまずいです。

安田

パートの賃金ですか。

久野

2021年に同一労働同一賃金ができたんです。中小企業でも仕事内容が同じだったら、8時間働こうが2時間働こうが同じ報酬を払わなくちゃいけない。

安田

パートって安いですもんね。

久野

日本はパートになった瞬間にめちゃくちゃ給与を減らされるんです。子育て世代はどうしてもフルタイムは厳しいのでパートになる。その瞬間に安くなるんです。

安田

それは仕事内容が同じでも?

久野

正社員の頃と同じ仕事をしてるのに、なぜかパートになっただけで1時間当たりの報酬を減らされる。しかもこれが経営のバッファになってるんですよ。

安田

なんと!

久野

これで産業が成り立っちゃっているので、けっこう根深い。共働きしても片方がパートだと大して稼げないんです。×1.5にもならなくて。

安田

本人が「扶養の壁」で収入を抑えているのではなく。

久野

日本の伝統的な考え方ですね。「パートは安く使ってもいい」「パートだったら賞与が少なくてもいい」っていう。

安田

今どきそんな経営者がいるんですか。

久野

育休で復帰した人がパートになると「前より安く使えてよかった」みたいな。そう思ってる経営者がまだまだいます。

安田

初任給も上がり始めてますし、東京ではパートで優秀な人って取り合いですよ。中野区なんてパートの激戦区と言われてまして。

久野

いいことですよ。

安田

いずれパートでも20万稼ぐ人が出てきますよ。優秀なパートはみんな繋ぎ止めたいので。

久野

とにかく優秀な人には、能力に応じてちゃんと時給を払っていかないとダメ。そういう感覚を日本全体が持たないと。

安田

短時間で稼ぎたい優秀な人も当然いるわけで。1日3時間この人が来てくれたら「めちゃくちゃ仕事がはかどる」みたいな人もいますし。

久野

ウチはそういうスタイルでやってます。短い時間でも優秀な人には高い報酬を払う。

安田

皆さんそうするべきですよ。できない人をフルに雇うより、よほど生産性が高いですもん。

久野

そうなんですよ。2人雇うより優秀な人を1人雇った方が早い。でも優秀なパートでもまだまだ時給が低いです。

安田

能力の高いパートさんを「高い時給」で紹介する会社とか。出て来そう。

久野

そうなってかないといけないでしょうね。

安田

逆に狙い目ですよ、ここは。

久野

私もそこを狙いたくてパートにちゃんと賞与を払ったりしてます。だけど一般的にはあまり根付いてないですね。

安田

びっくりするぐらい能力の高い人が、安いパート代で働いてますよね。

久野

本当にびっくりするぐらい安いです。

安田

働く側も「私はパートですから」みたいに受け入れちゃって。

久野

それが日本社会の良くないところです。

安田

業務委託で仕事を受ければいいだけなのに。自分で時給を設定して。

久野

そんな人滅多にいないです。

安田

なぜ日本にはパートなんていう、わけの分からない制度があるんですか。

久野

名前も悪いですよね。

安田

悪いですよ。「パートのおばちゃん」って感じですもん。

久野

パートに代わる言葉を作ったほうがいいですね。

安田

改名しましょう。短時間でものすごく仕事ができる人のイメージで。

久野

どんなのがいいですか?

安田

「ショート・エグゼクティブ」とか(笑)

久野

よく分かりませんね(笑)

安田

ネーミングのセンスは無いんです。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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