第83回 引き算の美学が生み出す「日本らしい庭」

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第83回 引き算の美学が生み出す「日本らしい庭」

安田

中島さんは、和風や洋風にこだわるのではなく、その家の雰囲気に合わせたお庭を作られるとお聞きしました。そんな中、例えば「和のテイストにしたいけど、コテコテの日本庭園にはしたくない」なんて要望があったら、どんなふうに作りますか?


中島

石灯籠などの「日本庭園を象徴するもの」を使わずに作るということであれば、砂利や苔を使うのがいいと思います。ただ苔はどうしてもメンテナンスが必要になりますけれど。

安田

自然に生えた苔であればメンテナンスもいらなそうな気もしますけど、やっぱり手間はかかるんですか?


中島

自然の苔でも、周りに草が生えてきて、その根っこが絡みついてしまうことがあるんです。その状態で草むしりをすると苔ごと剝がれてしまう。ですので草が生え始めた段階での手入れが必要になるんです。

安田

ははぁ、なるほど。…あれ、でも屋久島の山の中に流れる川の周りとか、もののけ姫の舞台になったような場所で、すごく苔が綺麗ですよね。自然に苔が生えていて、水も多いし、日陰もあって、手入れされていないのにきれいに苔が育っている。


中島

山の中は腐葉土が多いので雑草が少ないんですよね。山の生態系が整っていると、雑草が生えにくい環境になるらしくて。ただ、それを一般住宅の庭で再現するのはなかなか難しいんです。

安田

なるほどなるほど。ということは苔の庭を作るとしたら、手入れは不可欠だと。


中島

そうですね。あと苔は乾燥に弱いので、日当たりには注意が必要です。今ぐらいの時期でも、少し日当たりのいい場所に植えた苔は乾いてカリカリになってしまったりする。苔の庭を作るなら、しっかり日陰を作らないといけないでしょうね。

安田

なるほどなぁ。ともあれ、全体的に日の差さない暗い庭もあまりよくないですよね。苔以外で現代風でおしゃれな、日本らしさを感じられる庭を作ることはできるんでしょうか?


中島

自然石やその土地に合った雑木を使うことで、日本の庭の雰囲気を出すことはできます。ただ温暖な地域の木を使うと、純和風と言うより、やはり多少の「南国感」が出てきますね。

安田

ははぁ、なるほど。ということは、日本国内では日本らしい庭は作れるけど、それを海外に持っていこうとすると難しいわけですか。


中島

中国だと松の木もたくさんあるので、「日本らしさ」は出しやすいんですけどね。ベトナムやインドあたりだとちょっと難しいかもしれません。

安田

ふ〜む、そう考えると、「日本らしさ」というのは四季のある国ならではの特徴なのかもしれませんね。


中島

そうですね。それもありますし、日本庭園はやっぱり「引き算の美学」の庭なんですよね。余計なものを足さず、むしろどれだけ引けるかを考える。デザイン自体も大事ですが、そういう根底の考え方こそが肝だと思います。

安田

ははぁ、面白い。逆に言えば、日本庭園の考え方をきちんと理解した上でなら、海外であっても、「日本庭園風」な庭が作れるのかもしれませんね。地元の素材を使いながら、その国ならではの「引き算の庭」を作るというか。


中島

ああ、確かにそうかもしれませんね。その地域のものを使って庭を作ると、自然と馴染みやすくもなりますし、すごく良いと思います。季節ごとの変化を感じられる作りになっていれば尚良しですね。

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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