第97回 庭師の給与はどれくらい?

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第97回 庭師の給与はどれくらい?

安田

最近、現場の職人さんが儲かる時代になってきたと思うんです。建設業界を筆頭に、多くの業界で人手不足が深刻化し、職人さんの価値が相対的に高まってきている。


中島

確かに、社会全体としてそういう流れはありますね。

安田

そうですよね。これまではどうしても発注側が強く、現場の単価は安く抑えられがちだった。でももうその状況も限界で、現場に適正な対価を支払わないとそもそも仕事を受けてもらえなくなってきたわけです。


中島

そういう話をよく聞くようになってきましたよね。ただ私自身はまだ実感はなくて。庭師という特殊な業界にいるからかもしれませんけど。

安田

そうなんですか? てっきり庭師さんの収入も、その流れに乗って上がっているのかと思っていました。


中島

私たちのお客様は個人の方が多いので、そもそも予算が決まっているのが当たり前で。仮に業界的に庭の値段が上がっていたとしても、「じゃあそれに合わせて予算は2倍にします」とはなかなかならないんです。

安田

ふーむ、なるほど。とはいえ、この流れは社会全体のものなので、遅かれ早かれ庭師の世界にも影響は出てくると思いますよ。ちなみに個人的にはすごくいいことだと思ってます。腕のいい職人さんに適正な費用が払われるようになるわけですから。


中島

そうなるとと嬉しいですね。報酬が多くなれば、こちらもよりよい庭造りができますし。

安田

そうそう。ご自身は「実感がない」と仰いましたけど、現に中島さんのもとには海外の仕事が入ってきたり遠方の他県から呼ばれたりすることも多いわけじゃないですか。それはやっぱり近場に腕のいい職人さんがいないからだと思うんですよ。


中島

ああ、確かに。「自分の技術が求められている」と感じる機会は確かに増えてきた気がします。

安田

でしょう? 特に中島さんのようにオンリーワンの庭造りをしている職人さんは、今後ますます貴重になっていくはずです。そもそも人口減に伴い庭師になる人の絶対数も減るわけで、単純に「庭師が足りない」っていう状況になってくるんじゃないかと。


中島

確かにそうですね。そもそもあまり一般的な職業でもないですから。

安田

ちなみに、例えば京都の腕のいい庭師さんって、どのくらい稼いでいるものなんです? 年収1000万円くらいはあるだろうと思っているんですが。


中島

うーん、どうでしょう。僕が知る限り、この業界で派手に儲かっているという話はあまり聞かないですね。年収1000万円超えも、正直なかなか難しいんじゃないかと。

安田

は〜、そうなんですか。それは意外です。建設業界の一人親方とか、給湯器の交換やエアコンの取付をやる職人さんとかは、普通に年収1000万円以上稼いでいたりするのに。庭師もそういう高収入職種になっていくべきですよ。


中島

そうですねぇ、そうなったら嬉しいです(笑)。

安田

いや真面目にそう思いますよ。特に庭師の仕事は過酷な面もあるわけですから。外仕事だから夏は暑く冬は寒いし、体力も使う。そして技術の習得も簡単ではないわけで。

中島

まぁ確かにそうですね。自然相手の仕事だから安定しないし、修行期間も長い。一年二年でしっかり稼げる職種ではないので、そういう意味でもなり手が少なくなっているのかもしれません。

安田

でも見方を変えれば、それだけ希少性が高いとも言えますよね。この人手不足の時代には尚更です。実際、長年かけて習得した技術があるからこそ、中島さんはこうして依頼が殺到しているわけですし。


中島

ありがとうございます。そう言ってもらえると頑張ってきた甲斐があります。もっとも、例えば定期的な剪定作業なんかだと、なかなか高い料金をいただきづらいんですよね。物価の高騰に合わせて値上げも必要なんですけど、なかなか難しい面もあります。

安田

確かにそうなんでしょうね。ともあれ、例えば旅行業界なんかでは、インバウンド需要もあって宿泊費をとんでもなく値上げしています。それでも満室続きだったりするわけで、やりようによってはうまくいく気がしますけどね。

中島

ああ、確かに。僕らも見習うべき点が多そうです。これからは「この金額だからこそ、これだけの価値を提供できます」という提案を、もっと積極的にしていくべきなんでしょうね。

安田

ええ、まさに。仕事の価値を丁寧にお伝えして、ご納得いただけた方と長いお付き合いをしていく。その仕組み作りが急務ですよ。

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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