「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。
第29回 1日の食費が100円でも、優しい娘が育つ理由。
今回は、中辻さんと娘さんとの関係性についてお聞きしようかなと。私は子どもが4人いて、今も3歳児を育てているんですが、中辻さんの娘さんはおいくつでしたっけ?
もうすぐ18歳になります。
なるほど。実は、私自身は子どもの頃いじめられっ子で、友達もほとんどいなかったんです。でも、それを気にすることはあまりなかったんですね。とはいえ、自分の子どものこととなると話は全然別でして。
あぁ、わかります。子どものことになると、過剰に反応してしまいますよね(笑)。友達はいっぱいいてほしいし、みんなと仲良くやってほしい、というような。
そうなんですよ。だからどんな思いで娘さんを育てられてきたのかな、というのをお聞きしたくて。中辻さんご自身も、わりと波乱万丈な人生を送られてきているじゃないですか(笑)。
そうですねぇ(笑)。娘はいま高校3年生で、卒業後の進路を考えている時期なんです。大学に行くのか、専門学校に行くのか、それとも別の道なのか。
まだ進む方向が固まっていないと。
ええ、100%固まっているわけではなさそうです。プログラミングやゲーム開発にも興味があるし、音楽の道にも挑戦したい…という風に(笑)。
そうなんですねぇ。お母さんとしては、ちょっとやきもきしそうですけど(笑)。
笑。とはいえ私にできることは、娘がやりたいことをやらせてあげる。ただそれだけですから。
中辻さんはこれまで、選択肢が少ない中で苦労して生きてこられたと思うんです。自分がやりたい仕事を選べなかったり、働く時間に制限があったり。
確かに娘が最優先だったので、選択肢は狭かったと思います。
だからこそ娘さんにはいろいろな体験をさせてあげよう、と意識していたりしました? たくさん習い事をさせてあげるとか。
う〜ん、できればそうしてあげたかったですが、離婚直後は金銭的余裕もなかったので、育てるだけで精一杯でしたね。
日々の生活でいっぱいいっぱいで、習い事にまわすお金なんかなかった、と。
ええ。母子家庭だからといって、苦労させたりみすぼらしく感じさせたりしないようには考えていました。でも、いろんな道を作ってあげたいとか、英才教育をしてあげようとか、そんなところまでは考えられなかったです。
娘さん自身、自分の置かれた状況を理解して、無理を言っちゃいけないと思っていたのかもしれませんね。
そうかもしれません。だって私、娘に困らされた経験が、本当に1回もないんですよ!
へぇ、そうなんですか! それはすごいですね。
今でこそ多少は「いいお母さん」になれたとは思うんですが(笑)、昔は全然そんなことなくて…。
だって、ご出産されたのって、中辻さんが16歳の頃ですよね。遊びたい盛りじゃないですか(笑)
仰る通りです(笑)。もちろん娘は可愛くて大切に思っていたんですけど、やっぱり「周りの友達が遊んでいるから自分も遊びたい」という想いがあって。周りからは「子どもが子どもを産んで…」「どうしようもない親だ…」と散々言われましたね。
そうだったんですね。
でも娘は、赤ちゃんの頃からとっても育てやすい子だったんです。夜泣きもしなかったし、お店の中を走り回ることもなかったし、飲食店に連れて行ってもお行儀よく静かにしていたし。
へ〜すごいですね。じゃあ、お店の床に大の字に寝転がって「買って買って〜!!」なんて泣きわめくこともなかったんですか?(笑)
ありません(笑)。なので親戚からは「親がどうしようもないアホやから、子どもが賢くて、気を使いながら育っているんやろうなあ」って、よく言われていました。
娘さんも、子どもながらに親の状況がわかっていたんでしょうね。
そうだと思います。小さい頃から、すごく周りをよく見ることができる子で。「ママは大変なんやろうな〜」って思いながら育ってきたのかなと、今になってすごく感じますね。
今はどうですか? 2つの会社の取締役になって、メルセデスに乗っているお母さんを見て、そろそろ贅沢をしてもいいかな、ちょっとわがままを言ってみてもいいかな、と思い始めているんじゃないですか?
正直言って……あります(笑)。「週末はうなぎが食べたい〜」とか「ジルスチュアートの化粧品、買ってや〜」とか。そういうのはめっちゃ言われます(笑)。
あ、やっぱりあるんですね(笑)。
でもすごく優しい子に育ったんです。全然スれていなくて、まっさらな感じ。ある意味子どもっぽいというか、とっても純粋なんですよね。自分の想いをストレートに言ってくれるんです。
へぇ、それはいいですね。
そうでしょ? すごく優しい子なんですよ。親バカなんですけど(笑)。
ありがとうございます。まあ、昔は1パック100円の餃子だけで1日を過ごしたこともありましたから(笑)。
8個くらい入ったのが100円で売ってたんですよ。で、それを娘と2人で、昼と晩ではんぶんこずつしてました。
はい(笑)。ですから最近の「うなぎ食べたい」とか「お寿司が食べたい」っていうのも、できるだけ受け入れて連れて行ってあげています。
仰る通りです。私もようやく娘が食べたいものを自由に食べさせてあげられるようになったんだな、と。そういう意味では、わりと甘やかしている部分もあるかもしれません(笑)。
応援はしますけど、しんどいで〜とは言うでしょうね(笑)。経営者って、わりと神経が図太くないと難しいじゃないですか。
そうなんです。私とは違って、繊細な子なので(笑)。
対談している二人
中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役
1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。