第49回 「好き」を原動力にすることの強さ

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第49回 「好き」を原動力にすることの強さ

安田

今回から数回にわたり、私から見た「中辻麗」という人物像を掘り下げていこうかなと。というのも、最近私のX(旧Twitter)のフォロワーさんの中に、中辻さんに興味を持ってくれる人がすごく増えてきたからです。


中辻

あ、そうなんですか? それはありがとうございます(笑)。

安田

あらためて出会いからお話すると……私が中辻さんに初めてお会いしたのは、ペイント王の面接のときでしたね。


中辻

ええ、私が23歳くらいのときでした。

安田

実はあの時の私は「その人を本当に採用しても大丈夫なのか」を見極める担当だったんです。というのも、ペイント王社長の久保さんが採用される方って、実際に会ってみると「…え?」となることが多発してまして(笑)。


中辻

あはは! そうだったんですね(笑)。

安田

久保さんは「良い人が採用できた!」と喜んでいたんですけど、正直あまり見る目がないというか(笑)。なので「勝手に採用を決める前に、必ず僕にも会わせてください」と。


中辻

私の入社前にそんなことが起きていたとは…。知らなかったです(笑)。

安田

笑。そんなわけで、中辻さんのことも事前に「良さそうな人ですよ」と聞いていたものの、正直なところあまり期待していなかったんです(笑)。それが面接が始まって10分ほどでもう「あ、この人は絶対採用しなくちゃいけない!」と。


中辻

わ〜嬉しいです。ありがとうございます! でもどうしてそんな風に思ってくれたんですか?

安田

面接ってたいていの人は、自分の良いところだけをアピールしたり、悪く見られないように気をつけるものなんです。面接官によく思われるよう「作った姿」を見せるんですよ。でも中辻さんからはそれを全く感じなくて。


中辻

あぁ、確かにそうかもしれません。自分を作ろうとか、大きく見せようとかは考えてなかったかな。

安田

ですよね。この対談からも感じますが、中辻さんは自分をさらけ出しているイメージがあります(笑)。


中辻

ええ、それは間違いないです(笑)。

安田

そういうあけすけな姿を見て、これは只者じゃないなと採用を決めた次第で。そういえば以前、妊娠中に美容室とホテルの面接を受けられたと聞きましたが、あれ以降、面接で落とされたことってないんじゃないですか?


中辻

そう言われてみればないですね、ありがたいことに。

安田

ですよね。どうしていつも採用されるのか私なりに考えてみたところ、中辻さんは「自己肯定感が半端ない」という結論に至ったんですよね。


中辻

あぁ、確かに自己肯定感は高いかもしれないですね。

安田

今までの「人生ストーリー」を聞いていると、本当にいろいろ苦労しておられて、「人生どん底だ…」という気持ちになってもおかしくないと思うんです。でもどんな状況もしっかり受け止めて、しかもグイグイと前に進んでいますよね?


中辻

そうですねぇ。あまり他人と比べてどうこうというよりは、自分自身で決めた道を信じて突き進んできたかもしれないです(笑)。

安田

どうやったらそんなに自己肯定感が高くなるんですか? もとから高かったんですか?


中辻

どうなんでしょうねぇ(笑)。まあ、自分を悲観したり、逆に強がったりしても仕方ないよな、という気持ちはすごくありますね。面接の話もそうですが、自分を着飾って優秀そうに見せたとしても、結局、後々苦しくなるだけですし。

安田

なるほど。だから面接の時点から、あえて「素」の状態をさらけ出して挑むわけですか。


中辻

そうですそうです。自分は何ができるのか、何に興味があるのか、どういうことを提供できるのか、逆にどんなスキルが足りていないのか、といったことを積極的に発信して、「私」という人間をそのまま見ていただきたいと思ってました。

安田

いやぁ、素晴らしいですよ。それが一番良い面接の受け方なんですけど、ほとんどの人は一生懸命に「偽りの自分」を作って面接現場に現れる(笑)。


中辻

そうしてしまう気持ちもわからなくもないですけどね(笑)。とはいえ、やっぱりその人自身に興味を持ってもらえないと採用には結びつかないわけで。だからこそ「中辻に何かをやらせてみたら面白そうだ」と思ってもらえるようなアピールは心がけていました。

安田

なるほどなぁ。


中辻

私自身、期待されていろいろと任せてもらうことで、さらにたくさん頑張れるタイプの人間なので(笑)。「こんなこともできます」「こういうことがやりたいです」というのは積極的に伝えるようにしていました。

安田

自分自身の特性もしっかり理解して、それを踏まえたアピールをしていたんですね。ちなみに中辻さんの最初のお仕事はヤクルトレディだったわけですが、そこでも最初から「成果を上げたい」という気持ちが高かったわけですよね?


中辻

そうですね。「ある程度稼げればいいや」という気持ちは全くなく、「採用していただいたからには1番を目指そう!」という気持ちは持っていました。

安田

しかもただ闇雲に動いていたわけではなく、成果をきっちり上げるための行動も工夫されていた。そんなこと、なかなかあの若さでやれる人っていないと思いますよ。


中辻

あぁ…それでいうと、ヤクルトのときは私が「負けず嫌い」な性格だったことが大きいかもしれません。というのも、毎月の売上成績がセンターに貼り出されるんですよ。

安田

「私も売上ランキングの上位に名を連ねたい!」と思うわけですか。


中辻

そうそう(笑)。あとはヤクルトってまず商品を自分で仕入れるんですが、当然ながら、売上トップクラスの方たちってものすごい量を仕入れている。で、そういう人たちってすごく輝いて見えるので(笑)、自分もそちら側に行きたいな、と。

安田

笑。ヤクルト時代には、売上アップのために「セット販売」というのを考え出したって仰っていましたよね?


中辻

そうなんですよ。実はヤクルトは自分の担当エリア内での営業スタイルは、すべて個人の采配に任されていて。だから極端な話、固定のお客さんだけに毎週同じ商品を販売するだけでもいいんですよ。

安田

それはいわゆるルートセールス的な感じですか?


中辻

はい。ただ、ルートセールスだけではなかなか売上アップにはつながらないじゃないですか。なので私は毎日2時間くらいは新規開拓の時間にあてていましたね。

安田

新規開拓っていうことは、いろんなお家にピンポンピンポンしていたわけでしょ? そういう飛び込み営業みたいなことって、結構、傷つくこと言われたりしませんでした?


中辻

そうでもなかったですよ。インターホン越しにお話して、興味をもってもらえた方だけにご紹介するので。で、その時に、初めてヤクルトを飲まれる方ってどんな商品がお口に合うかわからないだろうなと思い、いろんな種類の商品を詰めて「ちょっとお得なセットです」って言って売っていました。

安田

それを思いつくのがすごいですよね。しかも次にまた訪問する理由も作りやすいじゃないですか!


中辻

仰る通りです! 「先日のセットいかがでした?」って聞けますから。そこから商品の説明をしてみたり、体の調子で気になることを聞いてそれに合う商品をご紹介したりしていました。

安田

体の調子に合った商品も勧めてくれるなんて、それはもう、絶対に継続して購入しちゃいます(笑)。というか中辻さんほど営業している人って、ヤクルトの中でもかなり珍しかったんじゃないんですか?


中辻

そうですね、あまりいなかったと思います。でも私としては初めて「お金を稼ぐ」ということを勉強させてもらった会社でもあるので、いろいろ試してみたかったんですよね。しかも自分が大好きなヤクルト商品を多くの人に売り込めることにすごく喜びを感じていましたし(笑)。

安田

そうか。もともとヤクルトが好きだったからこそ、商品の良さや効果を説明する言葉に実感がこもっていたのかもしれないですね(笑)。


中辻
これまでの人生を振り返ってみても、基本的に「自分が自信を持って売れるもの」にしか携わってきていないですね。ヤクルトも、印刷会社も、ポスティングも、全部「好きなもの」だったので。
安田

なるほどなぁ。中辻さんの仕事に対するモチベーションは「儲かるから」ではなく「好きだから」が原動力になっているんですね!

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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