「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。
第56回 幸せの味「ベニエ」の専門店、始めます
以前、中辻さんから飲食業界に進出するつもりだというお話を聞きました。その後、進捗状況はいかがでしょうか?
えっと、店舗工事はもう半分ほど終わっているんですけれど、まだ商品開発中で。お店のロゴや看板デザイン、テイクアウト用のパッケージなどなど、考えなくてはいけないことが目白押しの状態です(笑)。
そうでしたか。マメノキカンパニーの決算もあってお忙しかったですもんね?
そうですね。なのでオープン時期が想定よりもだいぶ後ろ倒しになりそうで。今の所6月頃を目安に準備を進めています。
そうでしたか。ちなみに昨年末時点では「スイーツ関連のお店」としか教えていただけませんでしたが、もうそろそろお店の全容をお聞きしてもよろしいですか?
ええ、もちろん(笑)。私がオープンさせるのは「ベニエ」の専門店です!
ベニエ…? 初めて聞きます。なんですか、それ?
「ベニエのお店をやる」って言うと、だいたいの方はそういう反応です(笑)。ベニエというのはフランス語で「揚げた生地」という意味なんですけど、すごくわかりやすく言うと「揚げドーナツ」のようなものです。
へぇ、フランスの揚げドーナツということですね。どんな形をしているんですか?
日本などで見る丸型とは違って、正方形がほとんどですね。イーストが入った生地を発酵させて、それを薄〜く伸ばして真四角に切って揚げるんです。そうするとプクッと膨らむんですが…そうですね…あ、お座布団みたいな形です!(笑)
なるほど、わかりやすい(笑)。じゃあそのお座布団の中には何か入れるんですか?
いえ、空洞のままです。その代わり外側にいろいろとつけるんです。主流な食べ方は、鬼のように粉砂糖をかけて、さらにメープルシロップにディップする、という感じです。
それはかなり甘そうだなぁ(笑)。
ええ(笑)。メープルシロップの代わりにチョコレートや生クリームをつけてもいいですし、アイスクリームと一緒に食べるのも美味しいですよ。
いろんな食べ方ができるんですね。ちなみにどんな食感なんでしょうか。
表面はサクッとしているんですが、噛むとモチっとしていますね。ドーナツよりは食べ心地がかなり軽いと思います。ぜひ今度、安田さんにも食べてもらいたいです!
ぜひぜひ! というか「ベニエ専門店」なんて、泉大津市はもとより大阪全域でもなかなか聞いたことがないような気がするんですが。なぜまた「ベニエ」に特化したお店をやろうと思われたんですか?
それは、私の辛い子ども時代の中で、ひときわ輝く「幸せな思い出」の中にあるスイーツだったから。この一言に尽きますね。
ほぉ。壮絶な子ども時代を過ごした中辻少女を癒やしてくれたのが、ベニエだったというわけですか。
そうなんです。日々、大変な生活を送っていたんですけど、ごくたまに平和な時間を過ごせるときがあって。それが、母と2人で電車に乗ってお買い物に行って、そのあとカフェに寄る時間だったんです。
それは横浜の青葉台に住んでいた頃ですか?
そうですそうです。小学校低学年の頃ですね。
ということは、まだ不良少女になる前ですね?(笑)
前です(笑)。で、お買い物帰りに寄っていた青葉台駅前のカフェが、ベニエをメインで出しているお店で。
ははぁ、なるほど。
母と向かい合って座って、一緒にベニエを食べて、「美味しいねぇ」って笑い合って…。辛い毎日の中で、そのたった数時間が本当に幸せな時間で、ずっと忘れられない大切な思い出だったんです。
素敵なお話ですねぇ。中辻さんにとって、ベニエはまさに「幸せの味」だったわけですね。
仰る通りです。それで大人になってからふと思い出したんです。「昔、母とよく食べていたベニエ、美味しかったな。また食べたいな」って。それで調べてみたら、ベニエ屋さんがどこにもなくて(笑)。
というか私、これまでの人生の中でその名前を聞いたことすらないですよ。あまりメジャーな食べ物じゃないんじゃないですか?(笑)
笑。実は一時期、『カフェ・デュ・モンド』というお店が流行ったんですよ。青葉台にあったカフェもそれだったんですけど。そこがベニエを出していたんです。
へぇ、そうでしたか。それは海外のカフェなんですか?
はい。アメリカ発祥のカフェですね。日本には90年代に入ってきたみたいなんですが、6年前に撤退してしまって。
なるほど。だから「ベニエ屋さんがないなら、私がベニエ屋さんをやる!」と思い立ったわけですか!
そうです(笑)。私みたいに「またベニエを食べたいなぁ」と思っている方にはもちろんのこと、安田さんのように「ベニエって何?」という方にも、その美味しさを知ってもらいたいなと。それでベニエ屋さんをやることにしました。
そうだったんですね。それにしてもなかなかニッチなものに手を出しましたね(笑)。
そうですね(笑)。ただ、ニッチな食べ物だからこそ、今後の可能性も無限大かなと思っています。
確かに。とは言え、今回初めて飲食業界に参入するわけじゃないですか。もう少し手堅い食べ物…少し前に流行った「高級食パン」とかで攻めても良さそうだとも思いますが。そこはやっぱり違いますか?
うーん、確かに高級食パンは私も好きですけど、どこでも買えるじゃないですか(笑)。やっぱり「私が売りたい」と思えるのはベニエだけですね。
そう仰ると思いました(笑)。ちなみにベニエ屋専門店ということですが、イートインもやるんですか?
いえ、今の所はテイクアウト専門でやるつもりです。というのも、初めての店舗ビジネスなので、お金をかけるところと節約するところのラインは明確にしておきたいなと。
確かにイートインだと初期費用の方にもコストがかかりますもんね。
そうなんですよ。なのでそこは節約して、メニュー内容にしっかりお金をかけたいと思っています。
なるほど。お店はどの辺りになりますか?
泉大津の国道26号線沿いです。看板もしっかり出しますので、ぜひたくさんの方にいらしていただけると嬉しいです!
ちなみに集客はポスティングでするんでしょうか。
対談している二人
中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役
1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。