第176回「2022年大胆予測」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第175回「親ガチャ・子ガチャ・国ガチャ」

 第176回「2022年大胆予測」 


安田

本日は2022年度の大胆予測ということで。

石塚

僕は来年、結構厳しいと見てますね。

安田

コロナもだんだん落ち着いてきて「これから頑張るぞ!」ってムードですけど。

石塚

助成金や融資がかなり出たじゃないですか。コロナの間に。

安田

出ましたね。そのお金で積極投資する会社が増えるんじゃないですか。

石塚

どうでしょう。

安田

「助成金が止まったら一気にお店がつぶれて解雇が始まる」なんて人もいます。

石塚

まさにその通りだと思います。助成金を打ち切られると「もはやここまで」といって閉める、あるいは削減する。

安田

解雇や雇い止めが増えるってことですか。

石塚

じつは最近「人を結構減らした」という話をよく聞くんです。

安田

一方でGoToトラベルもあり、「戻りそうだから人を採りたい」という話もちょくちょく聞くようになってきました。

石塚

もちろん相変わらず人手不足な業界はあります。ただ労働力として移動できる人はかなり少ないです。

安田

それは「役に立つ人が少ない」ってことですか?

石塚

そうです。欲しい人は動かず、来てもらっても「のしつけて返すわ」って人ばかり浮いてくる。

安田

助成金で止まっていた人はあまりマーケット価値がなく、出ていったときに仕事ないかもしれないってことですか。

石塚

ほぼないですね。ご自身が思ってるようなイメージでは。

安田

へぇ~。採用する企業が増えると思ってました。

石塚

まず一時的に非正規雇用は相当増えますよ、受け皿として。

安田

非正規雇用が悪いとは思わないですけど。

石塚

僕もまったく思わないです。

安田

むしろこれを機にフリーランスになりゃいいと思う。

石塚

はい。おっしゃる通り。そのスキルがある方なら。

安田

フリーランスができるぐらいの人なら就職も決まっていくと。

石塚

そうなんですよ。

安田

何年も前から言ってるんですけど。「できる人ほどフリーになり、できない人ほど会社に止まろうとする」という流れですよね。

石塚

それが加速すると思います。自分でマーケットをつくれる人、もっと言えば自分で行動できる人は食っていける。だけどそうじゃない人は厳しい。

安田

ですよね。

石塚

会社に過度にいろいろ求めすぎる人、「いままでがどうだった」とか過去の蓄積から会社に甘えちゃってる人、これは大変厳しい1年になると思います。

安田

2022年には会社の業績はまだ戻らないってことですか。

石塚

いえ。業績自体は短期的にはいい会社が多いです。

安田

でも採用はしない。

石塚

「コロナで食らってしまったから人を減らす」っていうのは、ある意味わかりやすいじゃないですか。

安田

この機に乗じて減らすってことですか。

石塚

まず飲食業や小売業などの「人が動いてなんぼ」という商売は減らさざるをえない。

安田

それはお客さんが戻ってきても。

石塚

経営者はみんな次の展開が怖いし、ものすごく用心する。だから直接雇用はすぐには増やさない。

安田

様子見ってことですね。

石塚

いま飲食業で生き残ってるところは、「10人でやってたことを4人でできるようにした」って会社ばかり。

安田

コロナで筋肉質になったってことですか。

石塚

飲食業の経営者からは「コロナのおかげで会社が強くなった、店が強くなった」って言葉をよく聞きます。

安田

なるほど。

石塚

つまり少人数の正社員で店が運営できるようになった。きっちきちの体制で、極論すれば店長ひとりキッチンひとりでなんとか店が回せる。

安田

そんなの続かないでしょう。

石塚

それで生産性が飛躍的に上がるわけですよ。雇ってる人が急激に減って、労働賃金として払う率が減るわけですから。

安田

そりゃあそうでしょうけど。

石塚

経営者は大歓迎だと思います。

安田

だけどお客さんが増えたら回らないでしょ。

石塚

果たしてぎゅうぎゅうになるほどお客さんが戻るのか。

安田

戻りませんか。

石塚

飲食業に関しては100パーセント客が戻ると経営者は考えてないです。

安田

ということは余裕のある席組みをして、その分スタッフ数を減らしていくと。顧客が減った分の値上げはしないんでしょうか?

石塚

値上げは勇気がいりますよ。

安田

いりますけれども。お客さんの数を減らして利益を出そうと思ったら、上げざるをえなくないですか。

石塚

もちろん経営の方程式としてはプライシングをいじるしかない。問題はその大義名分です。

安田

大義名分?

石塚

それがないと消費者って一気に離れちゃう。今は食材が高騰してるからタイミングかもしれない。値上げはしやすいかもしれません。

安田

大義名分があれば値上げしても消費者は納得すると。

石塚

お店によると思います。安田さんも自分がファンで行きつけのお店ってあるでしょ?

安田

ありますね。

石塚

そういう店だったら応援したいですよね。

安田

なくなったら困りますから。応援すると思います。

石塚

じゃあ何割の値上げまで通います?

安田

う〜ん。2割ぐらいですかねえ。

石塚

おっしゃる通り。僕も同じ答えなんですよ。2割までだったら「まあそうだろう」って思うじゃないですか。

安田

はい。

石塚

ということは、ある程度お客さんを掴んでいて自信があるのであれば、2割までは値上げしても絶対大丈夫ってことでしょう。

安田

なるほど。

石塚

食材費の高騰だとか、そういう「まあ、たしかにそうだよな」って値上げならファンは納得してくれる。

安田

だけど正規雇用は増えないと。

石塚

増やせないでしょうね。

安田

生活保護は増えますか。

石塚

生活保護までいかなくても失業給付がものすごく増える。見ていていちばん感じるのは観光業とか旅行代理店業の事務職系。40代以上はもう行き場がないです。

安田

とは言え日本はどんどん人口が減っていくわけで。どこかで採用マーケットは戻るでしょう?

石塚

基本的に経営者は「最小限の人数で済ませたい」と考えてる。「必要以上に雇わない」という信念がすごく強くなりました。

安田

コロナで社員の重さを実感したんでしょうね。

石塚

いま経営者が集まると「人を雇うのは大変だ」って話ばっかりです。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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