第62回 高い給料を払うだけでは、社員の定着は見込めない?

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第62回 高い給料を払うだけでは、社員の定着は見込めない?

安田

昨今は「賃上げ」のムードも高まってきてますが、経営者さんは頭を悩ませてると思うんですよ。上げろ上げろと言われても、給料なんてなかなか簡単には上げられないわけで。中辻さんはそのあたり、どうお考えですか?


中辻

そうですねぇ…社員さんのお給料は高ければ高いほど良いと思いますけどね。特に私は、社員の子たちに「自分のプライベートを豊かにするために働いてもらいたい」と思っているので、お給料は渡せるだけ渡したいと思っています。

安田

とは言え会社の業績には「波」がありますよね。好調だからといってバンバン上げてしまうと、不調時に苦しくなるじゃないですか。


中辻

うーん…もし本当に苦しい状況になったら、みんなに謝ってダウンさせてもらうかな。ウチみたいに小さい会社だからできる対応かもしれませんけど。

安田

なるほど。でも私も覚えがあるんですが、給料を下げると、やっぱり目に見えてモチベーションが下がっちゃうんですよね。


中辻

それはそうですよね(笑)。お給料がダウンしたのにやる気が出る人なんていないですよ(笑)。

安田

そりゃそうなんですけどね。ただ、仮に業績好調で給与を上げるとしても、社員1人ひとり「貢献度」が違ったりするじゃないですか。


中辻

ああ、確かに。「売上が大幅にアップしたのはこの社員のおかげだよね」っていう状況はあり得ますね。

安田

そうそう。中辻さんはそういう時ってどうしますか? その社員だけ給料アップさせますか。


中辻

うーん、ウチは基本的には「みんなで稼いで、みんなで分けよう」というスタンスです。ただ「頑張り損」にはしたくないので、頑張った人への評価も何らかの形で反映したいと思っていますね。

安田

なるほどなるほど。ちなみに昇給なんかはどういう基準で行うんですか?


中辻

ウチでは社員の子たちに毎年「翌年の目標」をいくつか掲げてもらうんですよ。で、翌年に1人ずつ面談をして、目標の達成率を振り返りつつ、どのくらい給料をアップさせるかを決めています。

安田

前年と比較することで、「どれだけ頑張ったか」が明確にわかるというわけですね。ちなみにボーナスはどうなっていましたっけ?


中辻

ウチは「決算賞与」という形で支給しています。利益分のいくらかを社員みんなで山分け、という形で。

安田

なるほど、そこは平等にわけるんですね。ということはマメノキカンパニーさんでは、会社が儲かっているならば「毎月の給与」の方をアップさせていく方針だと。…でもそれって普通の会社と逆ですよね(笑)。


中辻

あ、そうなんですか!?(笑)

安田

ええ(笑)。一般的には、儲かった時はボーナスでドンっと支払うことで社員の頑張りに報いるパターンが多いと思います。だって月々の給与額を増やしてしまったら、なかなか下げられないじゃないですか。


中辻

ああ、なるほど。要はボーナスで「一時的」に給料を増やしてあげると。うーん…ただウチは今のところ年に1回しかボーナスを渡すタイミングがないので。それならば毎月の基本給をアップする方が社員にとっても嬉しいだろうし、モチベーションも持続するんじゃないのかなと思っていて。

安田

なるほどなぁ。ちなみに冒頭で「渡せる給料は多いほどいい」と仰っていましたが、中辻さん的に「これくらいは払いたい」という目標額のようなものはあるんでしょうか。


中辻

そうですねぇ…。現状でも同年代の女性の平均年収にプラス100万円くらいは渡しているんです。だからこれを同年代男性と同程度の年収くらい支払ってあげられるようにしたいとは思っていますね。

安田

おぉ、素晴らしい! 女性が、男性の平均年収と同じ額をもらえれば、本当の意味で、女性が社会で自立して生きていけますもんね。ちなみに今って「大卒の初任給が30万円」というのが当たり前の時代で。企業によっては新卒に40万円払うところも出てきているんですよ。


中辻

40万! それはすごい(笑)。新入社員に対する「先行投資」といった意味合いも込められているんでしょうね。

安田

仰るとおりなんですが、それだけの額を出していてもすぐに辞められちゃったりするんですって。つまり金額だけの問題じゃないみたいで。


中辻

ああ、なんとなくわかります。たぶんウチの社員の子たちも、給料が良いからウチで働いている、というわけではないと思っていて。それよりも「働きやすい環境」に魅力を感じてくれているんじゃないかなって。

安田

まさにそれが理想だと思います。実際、給料が高いだけでは社員は定着しないんですよ。


中辻

同感です。なので私は「一緒に働きたいな」と思えるような方には、その人がしっかりと生活できるお給料を渡して、休みや勤務時間の融通をきかせてあげながら、働きやすい環境を整えてあげたいと思っています。

安田

いやぁ、素晴らしいです。単に「給料を高くしておしまい」ではなく、社員の不安を取り除いてあげて、安心して働ける環境を作ってあげる。経営者たるもの、そうあるべきだと思いますね。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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